町中を歩いていると、いやーな気持ちになる瞬間がある。人混みの中を、たばこを吹かしながら歩く通行人を見かけたとき。そして、路上にペッとツバやタンを吐く通行人を見かけたときだ。

時代はいま平成だ。それも21年も経っている。昭和じゃないんだから、いい加減にしましょうよと言いたくなる。昭和の面影を残す「江戸っ子オヤジ」ならまだ絵になるが(?)、若い人に多く見かけるのはどういうワケか。本日も表参道で、サンダル履きの1メートル横に、汚らしい液体が飛んできた。ゲー。ふざけんなこの野郎!  僕は年甲斐もなく、頭に血が上った。

北京五輪やその事前取材で、現地を訪れたとき、路上にツバやタンを吐く通行人が異常に多いことに、僕はびっくりしたハズだった。原稿にも、そのことをしっかり記しているが、ただ、五輪が近づくにつれ、整列しない人の数同様、その数はしだいに減った。それが世界的には好ましくないマナーだと理解したのだろう。そんな彼らの進歩についても、僕は原稿に記している。

だが、いまの東京にも、ツバやタンを吐く人は厳然と存在する。その瞬間、原稿に用いた「上から目線」を、省みたくなる。自分たちのことを棚に上げ、相手のマナーの悪さを指摘したわけだ。ツバやタンを吐く人に遭遇すると、そうした意味でも、良い気分になれない。表参道付近には、中国からやってきた観光客もたくさんいる。「なんだ、日本人だって‥‥」と、蔑んだ目で見られたとしても不思議はない。格好悪すぎだ。

というわけで、僕は気がつけば、風紀委員になったつもりで町を歩いている。そんな自分に、居心地の悪さも感じてしまうのだが、テレビでサッカー中継を見ているときも、気がつけば僕は、風紀委員になっている。

一発レッドを翳したい不快な気持ちに襲われる瞬間がある。日本の試合に限った話ではない。むしろ海外の試合の方に多く見かける。

なぜサッカー選手は、口からペッペとツバを吐くのか。食事の最中に、そのシーンが目に飛び込んでくると一瞬、ゲロッとする。水分補給をした選手が、口からそれをベッと吐くシーンも、できれば見たくないのだが、昔はそうではなかった気がする。選手のツバ吐きシーンが当たり前の光景になったのは、わりと最近だと思う。

いったいどうして?

草サッカーレベルでは、まず見かけない。高校サッカーもしかり。それがJリーグの試合になると、どうして? 海外の試合になると、1試合の中で5、6回は目に飛び込む。Jリーガーは、海外を真似しているのか。だとすれば、なぜ外国人は、ツバを吐かずにはいられないのか。ピッチに羽虫がたくさん舞っているからなのか。

現地でテレビ観戦している人は、サッカー選手のこの行為をいったいどう見ているのか。欧州の街角では、一般人はツバを吐いていない。日本人より圧倒的に少ない。下品な行為として位置づけられているからだ。

ラグビー選手にも、見かけたこともない。テレビカメラがそれを捉えるシーンはない。マラソンでも、フィールドホッケーでも、ビーチバレーでも、野球でもないはずだ。

サッカーに対する、これが僕の唯一の不満かもしれない。

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