■第10試合 WEC世界バンタム級選手権試合/5分5R
[王者]ミゲール・トーレス(米国)
Def.5R終了/判定
[挑戦者]水垣偉弥(日本)

飛び込んで右を放つ水垣だが、やや距離が遠く、ここまではあくまでも深追いをしない水垣――、5Rという長丁場を考えた戦術か。

水垣は王者の左ミドルをしっかりとブロックし、右をヒット。と、ムキになったように前に出てきたトーレスに、水垣はケージに押し込まれながらも縦ヒジを見せる。

ヒザを打ち合う両者、トーレスのヒザがボディに突き刺さり、残り30秒というところでトーレスのパンチがワンツーで水垣を捉える。さらに首相撲からアクションの大きなヒザを放つトーレスのポイントを考慮に入れた攻撃は、残り5秒で繰り出された連打の中にも見え隠れする。

3R、水垣にとって、やや王者優勢という流れを断ち切るには、非常に大切なラウンドが始まる。前に出てくる水垣にトーレスの左が待っている。距離を詰めることができない水垣だが、手数を緩めることはない。

水垣はケージにトーレスを詰めてヒザ蹴りの連打。ならばと王者もヒザを返してくる。右目を気にする王者に、水垣の左フックがヒット。トーレスも打ち返してくるが、水垣はしっかりとブロックする。ここでレフェリーからストップがかかり、トーレスの右目の上のカットをチェックした。

流血の王者、古傷のカットか?

再開後、勝負を急ぐと思われたトーレスだが、前に出るのは水垣。激しいパンチの交錯で、水垣の右オーバーストレートがヒット。直後に距離を詰めてヒザ蹴りを見せたトーレスが、さらに右のエルボーを放っていく。水垣はダッキングのトーレスの首を捉えて、ヒザを突き上げ、トーレスが前に出てくるところを迎え打った水垣。3R終了時点で危ないシーンはないまま未知の4Rを迎えることになった。

開始早々、水垣が左フックを連続でヒットすると、王者は初めてテイクダウンを仕掛けてきた。このラウンドは徹底して組みついてきたトーレスは、引き込んでグラウンド戦を仕掛けるが、ハーフでトップをキープした水垣は自らスタンドへ。

またも組み付いてきた王者に、水垣は右エルボーを二発放ったが、やや疲れたか。左ボディフックを放ちながら前進する水垣は、直後にトーレスの右を受けてケージ際まで後退。パンチを放っては、水垣をケージに押し込む泥臭い攻撃に出た王者。勝負への執念を感じさせる動きに、水垣はバックを奪って応える。

ヒザ十字狙いでグラウンドへと移行をするが、水垣はここも付き合わない。危険なシーンは、ほとんどない。ただし、攻勢に出ることもできない水垣。ほぼ互角に戦ってきたが、少しずつ遅れを取っているのも確かで、試合は逆転が必要な5Rへ。

王者を見て、小さくうなずいた挑戦者は、最後の5分間に勝負を掛ける。

ジャンピングガードの要領で一瞬、体を浮かし、すぐに足をつけて距離をとったトーレスは、ここからパンチの回転数が上がり、距離を詰めた打ち合いのなかで、王者の荒々しさが目立つ。水垣は首相撲を狙い、トーレスがバランスを崩したが、ここでもグラウンドへは移行しない。

ケージに押し込まれるシーンが増えた最終ラウンドも残り1分、水垣の突進をバックステップでかわす王者に、トーレス・コールが送られる。ノーガードの打ち合いから、王者が組みつき細かいパンチを見せると、ここでタイムアップ。判定はミゲール・トーレスを支持した。

「タケヤは素晴らしいチャンレジャーだった。尊敬する」と、トレースがコメントをする横で、号泣の水垣。惜敗ともいえる世界戦だったが、スタンディンブオベーションを誇りに、水垣は次の戦いへと向かってほしい。

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