12月17日、アルジェリアで開かれた臨時総会で、石油輸出国機構(OPEC)は、10月に次いで日量220万バレルもの大幅減産に踏み切った。

 2008年7月に1バレル140ドルを超える史上最高値を記録した原油価格。しかし、世界金融危機で状況は一変し、今では40ドル台で推移している。

 産油国にとっては手痛い打撃だ。驚いたことに、現状の原油価格を前提にすれば、財政赤字に転落してしまう国すらある。

 湾岸6ヵ国を例にとって説明しよう。表を見れば一目瞭然だが、オマーンとバーレーン、サウジアラビアについては、すでに「損益分岐点」を下回っている。7月までの価格高騰の貯金があるため、今年度は赤字にはならないと見られるが、先行きの予断は許されない状況だ。



 過去数年間、右肩上がりで上昇を続けた原油価格を元手にして、湾岸諸国は驚くべき開発計画を乱発してきた。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイが高さ1キロメートルのビルを建てると言えば、サウジもそれに対抗してきた。

しかし、「09年以降は、こうした開発への投資は減るだろう」という見方が大勢を占める。ドバイでは先頃、トランプタワーと呼ばれる高層ビルの開発が頓挫したばかりだ。

 それだけではない。過去5年間に、湾岸諸国合計でおよそ90兆円を投じて買いあさった海外資産も金融危機によって大暴落しているのだ。世界有数の投資家として知られるサウジのアルワリード王子は、この1年間で総資産の2割、4000億円を失ったと報じられている。

 OPECが大幅減産に踏み切っても、原油価格が再び急上昇するとは考えにくい。空前の資源バブルから一転して、財政危機のピンチ。産油国は、世界史上に例を見ない落差に直面している。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 津本朋子)

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