ミランの選手に囲まれパスの出しどころに困る中村<br>【photo by Kiminori Sawada】

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 グループリーグでは3戦全勝と、ホームゲームでは抜群の強さを発揮するセルティック。決勝トーナメント進出に大きく貢献した中村も、この点を自信とし、ミランを「勝つのが難しい強豪中の強豪」と認めながらも、「ワンチャンスをモノにして勝つ」と、勝利への意欲を示していた。

 対してミランは、ヂダ、ネスタ、インザーギらを負傷で欠き、さらに新加入のFWロナウドは登録上の問題でチャンピオンズ・リーグ出場は認められないという、苦しい戦力での戦いを強いられた。

 しかし、試合が始まると、ミランはホームのセルティックに対し、個の力の差を見せつける。とりわけ、カカの優れたキープ力はセルティックDF陣をおおいに戸惑わせ、これにグルキュフ、さらに後方からピルロらが絡んでいく。こうしたミランの中盤の流動的な動きに対し、本来なら攻撃を組み立てなければならない中村ですら守備に忙殺される時間が多くなり、36分にはピルロへの後方からのファウルでイエローカードを受けてしまった。

 アウェーチームとして、ドローも計算の内にあるミランは、さほど厳しいプレッシングを仕掛けはしないものの、じつに効率の良いプレーを見せた。セルティックGKボルツの好守連発がなければ、あるいはFWジラルディーノがもう少しだけ調子が良ければ、勝点3は早い時間帯で確保できていたかもしれない。

 セルティックは、ミランを意識しすぎたか、守備力のある選手を揃えて失点を抑えることには成功したものの、攻撃面ではまったく無策。ヤロシク、グラベセンの途中起用も奏功しなかった。

 こうした消極策の中で、中村も完全に封じ込まれた。期待されたセットプレーでの場面も、40分のFKはGKカラチにコースを読まれ、59分の一発は大きく枠を外れた。

 中村の日本人初の決勝トーナメント出場、さらにマルディーニが同大会通算100試合出場(チャンピオンズ・カップ時代を含む)という金字塔を打ち立てるなど、戦前から注目点の多かった試合は、この日に行なわれた4試合の中で唯一のスコアレスゲームに。

 ホームのセルティックはもちろん、幾度もゴールチャンスを逸したミランにとっても、悔いの残る一戦となったが、グラスゴーの夜の寒さは、より前者にとって辛いものとなったことだろう。