テレビ朝日「鳥羽慎一モーニングショー」コメンテーターの玉川徹氏/(C)日刊ゲンダイ

写真拡大 (全2枚)

【注目の人 直撃インタビュー】

テレ朝が異例抜擢 元乃木坂46斎藤ちはるアナの評判と実力

 玉川徹さん(テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」コメンテーター)

 朝のワイドショー戦争で、テレビ朝日系の「羽鳥慎一モーニングショー」は3年連続視聴率1位。そんな人気番組で際立つのがこの人、玉川徹さんの歯に衣着せぬ発言だ。時にSNSで炎上も招くが、本人は気にする様子ナシ。視聴者もまさかテレ朝の社員だとは思っていないのでは。空気を読まない直言の原動力はどこにあるのか。

  ◇  ◇  ◇

  ――新元号が「令和」に決まった翌日、番組で「名は体を表す」とおっしゃっていました。まず、これについてお聞きしたい。

 やっぱり「令」の漢字が気になったんです。「命令」の「令」だから。そうしたら金田一秀穂氏(日本語学者)によると「令には『神のお告げ』という意味がある」ということだった。それで、「あー」と思ったんです。

  ――「神のお告げ」が安倍政権を表していると?

 神はお告げしないわけですよ。実際は人間が「神はこう言っています」と神を騙るだけ。日本の歴史を振り返ると権力と権威は別で、権力のある武家は権威がないから、それを朝廷や仏教に求めた。明治以降は政府が天皇を権威にして神様にした。安倍政権にはそういうものへのノスタルジーを常に感じるので、「名は体を表している」と思ったということです。

  ――元号の出典で国書にこだわったことには?

 保守政治家などは「日本の歴史と伝統を守る」と必ず言います。保守の人が最も守るべきは皇室・皇族の歴史と伝統で、まさに元号はそのもの。その元号はずっと中国の古典から出典を得てきて、「大化」から変わらないわけですよ。ところが今回、それを変えた。まあ、推察すれば中国の古典から取りたくないってことなんでしょうけど、そんな理由のために保守の人が大事にしてきた皇統の伝統をやめていいんですか。保守ではなくどちらかといえば進歩主義の僕ですら疑問です。

■ネトウヨは大事なお客さま

  ――はっきりモノを言うのでSNSなどで炎上したりしています。

 SNSは見ないようにしています。でも周囲に教えてくれる人が何人かいて。ただ、うちの番組を一番熱心に見ているのはネトウヨだと思うんです。番組を見ながらSNSに書き込んでいるわけで、一生懸命見てくれている。大事なお客さまですよ。

  ――番組での自分の立ち位置を意識していますか?

 新番組がスタートするにあたって羽鳥さんに「僕が悪役をやるので、羽鳥さんは善玉に徹して下さい」と言い、羽鳥さんも「それで行きましょう」と。僕はコメンテーターだけど、本質はディレクターなんです。今は僕らの番組が視聴率1位ですけど、以前は「とくダネ!」(フジテレビ系)が絶対的王者で、MCの小倉智昭さんはひとりで悪役と善玉をやっていた。「情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)の宮根誠司さんも似たようなキャラクター。だったら、悪役と善玉を分けたらどうなのかなと以前から思っていたんです。

  ――じゃあ悪玉は演出なんですか?

 違う違う。自分の中にないものは無理ですから。自分の中の要素を強調して膨らませている感じです。最近は結構、素でやっています。ちょっと暴走気味で、時々反省しています。

  ――テレビ局の社員という立場なのに、暴走できるのは驚きです。

 会社はいいとは思ってはいないと思いますよ。でも視聴者の立場に立てば、社員だからって遠慮して当たり障りのないコメントで面白いですか? 僕ら出演者の間で「おためごかし」と言っているんですが、それじゃあつまらない。元号だって、他の番組では皆「素晴らしい」って言っていたけど、「本気か?」と思うわけですよ。どこか忖度して、褒めざるを得ないような雰囲気だからでしょう。

  ――テレビ番組も含め社会に同調圧力が蔓延している気がしますがどう思いますか?

 同調圧力は日本の特色でしょう。僕は子供の頃から「協調性がない」と通信簿に書かれてね。会社に入ってからも、同じように通信簿みたいなものに「協調性がない」と書かれてガッカリした覚えがあるんですよ。協調性がないのは日本ではダメな資質で、空気を読まなかったり、同調圧力に染まらなかったら不利益になる。でも協調性がないから自由にいろいろできたりする。僕みたいな人間がテレビに出てしゃべったりして会社側が嫌々ながらも良しとしているのだから、同調圧力はだんだん弱まってきているんじゃないですか。

  ――弱まってますか。

 これからAIなどがどんどん出てくる時代になる。産業革命くらいのインパクトがあるから、今までの生活や常識が通用しなくなると思う。同調圧力とか言っている場合じゃない。想像もつかないような社会になると思うんですよ。

■今は政治は視聴者にウケない

  ――最近、ワイドショーが政治をあまり扱わないのが気になります。「統計不正」もほとんどやらなかった。

 視聴者に響かないからですよ。「不正に年金が少なくなっていました」なら生活に直結するので怒りも湧いてくるけれど、「統計がいじられました」では「だから何?」って感じだと思うんです。政治の現場でも盛り上がらなかったし、盛り上がっていなければこっちでもできないですよ。

  ――ワイドショーが扱うからこそ世論が盛り上がるという側面もある。ワイドショーの役割は大きいと思いますが。

 もちろん。でも視聴者に関心を持ってもらえるかと考えると、今はウケない。今の政治状況がつまらないというか、世論も諦めちゃっている感があるでしょう。安倍政権がいいとは思っていないけど、マシだと思っている人がほとんどです。いくら野党が「統計不正だ」と言っても、「何も変わらないだろうな」と皆が思っているのが正直なところ。僕らは自分がどう考えるかも大事だけれど、世間がどう感じているのかを感じ取らなきゃいけない。忖度して政治を扱わないわけじゃありません。忖度していたら、元号であんな話できませんからね。

  ――政治はウケないからやらない。

 それがいいとは思っていないですよ。本当は工夫してでもやった方がいいという思いはある。だから沖縄の県民投票については、普通にやっても視聴者の関心を呼べないと思って、ウーマンラッシュアワーの村本大輔さんというフィルターを通して見てもらう企画を作りました。

  ――最近のニュースで気になったことは?

 人工透析の話にはかなり引っかかりました。人工透析は続けていれば普通と変わらない生活ができる。でも患者には、不自由さとか、機械に生かされている感覚とか、そうまでして生きなければならないのかとか、将来の不安とか、いろんな負の感情があると思うんです。そんな時に医者に「あなたは死ぬこともできますよ」と言われたらどんな影響を与えるのか。患者の身になれば分かるはずですよね。誰だって死ぬ選択肢はある。でもやっぱり医者は「生きろ」と言うべきなんだと僕は思うんです。「透析をやめれば死ぬけれど、それを選ぶ権利もあります」なんて、医者が言っちゃおしまいです。

■「想像力の欠如」と「不寛容」に暗澹たる思い

  ――確かに、あのニュースはいろいろ考えさせられました。

 でも、最も驚いたのは、多くの人が福生病院の対応はあれでいいと言っていることです。それって想像力の問題だと思います。機械に頼らないと生きていけない状況ではないから、想像力が働かないのでしょう。暗澹たる思いを抱きました。(シリアで拘束・解放されたジャーナリストの安田純平氏などに対する)自己責任論もそうです。渡航禁止の国に勝手に行って、紛争に巻き込まれて、税金を使ったという批判がありますが、あれだけ拷問に近いことをされたのに、どうして「帰国できてうれしいだろうな」と思えないのか。それも想像力のなさでしょう。国連の幸福度ランキングで日本が58位に下がって、足を引っ張ったのは92位という「寛容さ」のなさでした。これにも想像力の欠如が関係していると思います。嫌な気持ちになりますね。

(聞き手=小塚かおる/日刊ゲンダイ)

▽たまかわ・とおる 1963年宮城県生まれ。89年京大大学院農学研究科修士課程修了後、テレビ朝日入社。「内田忠男モーニングショー」「サンデープロジェクト」「スーパーモーニング」などのディレクターを経て、現在「羽鳥慎一モーニングショー」の月〜金曜レギュラーコメンテーター。