キヤノンのミドルクラス参戦でフルサイズミラーレス市場に波乱! どうなる2019年のカメラ市場

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SONYの独壇場だった35mm判フルサイズミラーレス市場に、ニコンとキヤノンの大手カメラメーカーが参入し、ボディ形状や交換レンズ群、撮影機能をアピールした。

こうしてミラーレスデジタルカメラが新時代に突入することとなったわけだが、我々消費者としては製品の選択肢が増えることはウェルカムだ。

しかしフタを開けてみれば、
・高価なボディ
・高価な気合いの入った新レンズ
という構成だ。
これでは多くのユーザーが選択肢とするにはほど遠いものである。

35mm判フルサイズミラーレス市場に新規参入したニコンとキヤノンは、一眼レフデジタルカメラ市場での成功体験を持つメーカーだ。
それもあって、ソニーに続けと、一眼レフデジタルカメラとの違いをより明確にする気合があらわれている。

ニコンとキヤノンが、フルサイズのミラーレス市場への参入に際して、ミラーレスのための新設計のマウント(交換レンズの規格)を立ち上げての参入したことからも、それはわかる。

特にニコンは、レンズマウントを変更することなく今に至る。2017年で100周年を迎えたニコンは、このミラーレスのための新マウントを、次の100年を見据えたものとしている。キヤノンも同様に、ミラーレスのための新設計のレンズマウントを立ち上げての参入だ。

そもそもレンズマウントというものは、レンズとボディを固定するためだけではなく、ボディとレンズで各種の情報や制御を行うための要となる機構をもつ重要なものだ。
ミラーレスの構造は、
イメージセンサーとレンズの後玉(一番後ろのレンズ)の距離から柔軟な設計が行える。

ニコンの新マウントは、
レンズマウントの口径を広げて大口径レンズが設計しやすいよう最適化を図る。




こうした改善で、一眼レフシステムではできなかった柔軟なレンズの光学設計が可能とし、次の100年の未来を切り開こうとしている。

このレンズマウントには電子接点があり、それを介して、
・ピント合わせのための動作
・絞り機構を制御する
などの通信が行われている。
この通信も“今”の技術に置き換えることで、より高速で正確な制御が可能となる。
将来的には、静止画だけではなく動画撮影時のレンズ制御など、様々な分野に活かされて行く重要な役割を担っている。


さて、レンズ交換式デジタルカメラには、
「一眼レフ」方式と「ミラーレス」方式の2つがある。

「一眼レフ」方式は、
フィルムカメラ時代から光学式ファインダーと跳ね上げ式のミラーの機構を受け継いだカメラだ。

「ミラーレス」方式は、
ミラーの機構をなくしてイメージセンサーの映像を電子ビューファインダーで撮影する。


ミラーレスカメラのメリットは、
・ミラーの機構が必要ないことからシステムのコンパクト化が可能に
・ミラーの機構そのものが必要ないため、可動部品の故障のリスクが低減
・電子ビューファインダーは、ピントの確認だけではなく露出(明るさ)の確認ができる
・イメージセンサーに特化した顔認識や被写体認識のオーフォーカス処理などが可能

デメリットは、
・長年カメラメーカーが培ってきた位相差AFの仕組みが使えない
・電子ビューファインダーでの表示遅延
・バッテリー持続時間
などがある。


先進的なAF機能やプロ仕様の動画撮影機能、レンズラインナップの拡充で攻めるソニー


ミラーレス一眼の進化の歴史は、特徴を活かした高性能化と、弱点点の克服につきる。
ソニーのα9およびα7シリーズは、
高速連写や瞳AFや4K動画撮影機能など、ミラーレスならではの進化を遂げている。


ニコンらしいデザインとコンパクトボディ、大口径レンズでブランド価値を高める


ニコンは、
一眼レフでは実現できなかった大口径レンズや、記録メディアのダブルスロット、本格的な4K動画撮影が可能なハイエンドモデルだ。


一眼レフ用にはない大口径レンズや新レンズデザインで先進性をアピールするキヤノン


一方、キヤノンは、ニコンやソニーと異なる戦略で、
ミドルクラスのボディを投入。
こちらも新マウントを採用しており、一眼レフカメラのシステムにはない魅力的なレンズロードマップを発表した。

2019年の今年は、
ますキヤノンが動く。
エントリーモデル寄りの「EOS RP」を2019年3月中旬に発売する。ボディの価格は16万円台(税抜)とフルサイズミラーレスカメラの新製品ではもっとも低価格だ。
フルサイズミラーレス市場にこの価格帯のボディを投入するのがキヤノンのマーケティングの上手さだろう。

ほぼ、同時期にパナソニックもフルサイズミラーレスを発売する。
こちらはプロカメラマンをターゲットとした製品。
静止画だけではなく映像製作をするクリエイターのニーズに応えるべく、過酷な環境に対応する堅牢性とフルサイズミラーレス初の4K 60P動画撮影など魅力的な機能を搭載する。

“プロ仕様“ということで、耐久性など性能以外の部分にもコストがかけられている。
4,730万画素の高画素モデル「LUMIX S1R」が46万4千円前後
2,420万画素モデル「LUMIX S1」が31万4千円前後
(全て税抜)
と、他メーカーの同画素数のモデルと比較すると若干割高となっている。

2019年は、このようにプロ仕様のミラーレスカメラを含めた4メーカーのミドルクラス以上のカメラから自分の用途や、今持っている一眼レフカメラ用のレンズ資産など考慮して選べるようになった。


ハイエンド・プロ志向のフルサイズミラーレスは、ボディ単体で20万円以上から、新マウント用のレンズを組み合わせれば30万円を超えることもある。
決して安くはない買物だが、ボディに見合った良いレンズと組み合わせたくなるというニーズがこの市場を形成していると言って良いだろう。

一方で、キヤノンの新製品EOS RPは、ハイエンド・プロ志向のニーズとは異なる市場の掘り起こし方を狙っている。価格を抑えて小型軽量化することで、もっとカジュアルに写真を楽しむことに特化すると言う立ち位置だ。

高機能化、高画質化することで一眼レフデジタルカメラのハイエンド機に迫るミラーレスだが、その構造上、小型・軽量にできるということも魅力であることを忘れてはいけない。

ハイエンド指向のフルサイズミラーレス市場が形成されつつあるが、キヤノンはこのハイエンド指向のフルサイズミラーレス市場に、価格を抑えつつ小型・軽量のEOS RPで一石を投じようとしているのだ。


はたして今後、ソニーやニコンは、キヤノンのマーケティング戦略に追従するのか?
実に気になるところである。

低価格モデルやコンパクトモデルなど、カジュアルなユーザー向けの製品が拡がれば、フルサイズミラーレス市場は一気に活性化していくだろう。

実は、ソニーはフルサイズミラーレス市場での低価格帯のリサーチもさりげなく行っている。旧モデルを現行商品として販売し続けているからだ。
2013年発売の初代「α7(ILCE-7)」は、ソニーの直販サイトで9万9,880円(税抜)で販売されているのだ。

この価格はキヤノンのEOS RPより格安だ。
もちろんカメラの性能や使いやすさは最新のEOS RPに軍配が上がる。
しかし買いやすさや実績、ハウツーなどの情報が出揃っているだけに、α7シリーズの旧モデルは十分に魅力的あろう。

フルサイズミラーレス市場は、立ち上がったばかりだ。
こうしたハイエンドとエントリーモデルの二極化が展開されることで、新しいユーザーニーズを掘り起こして市場を大きくして欲しいと思う。


執筆  mi2_303