木村拓哉の“何をやってもキムタク”問題に『ギフト』脚本家が示した独自見解
「何やってもキムタクって言われる。しょうがないよね。人がそう言うんだから」
1月2日に放送された『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』(TBS系)で思わず自身が抱える悩みを吐露した木村拓哉。この番組には、1月18日に公開されて興行収入30億円を狙えるほどの大ヒットスタートをした映画『マスカレード・ホテル』のPRをするためのゲスト出演だった。
「木村さんは映画公開までに雑誌35本、テレビ14本と出づっぱり状態でした。フジテレビ系の『HERO』シリーズをはじめ、長年コンビを組んできた鈴木雅之監督の作品なので、木村さんの並々ならぬ意気込みを感じますね」(テレビ誌ライター)
『ギフト』で描いた“恋愛モノじゃない”木村拓哉
だが、公開前から木村の頭にはすでにこの悩みがチラついていた。なぜなら、映画『マスカレード・ホテル』の原作者である東野圭吾氏は、実は木村をイメージしながら主人公を書いたというのだ。木村は雑誌のインタビューで、
《もっと早く言ってほしかった! 実は撮影中、東野さんが現場にいらっしゃったときにお話させていただいたのですが、そのときは一切そういう話は出てなかったんですよ。撮影の打ち上げの際に初めてお聞きしました》
本作の演技についても、
《鈴木監督とは今まで多くの作品をご一緒してきたせいもあってか、今回は“この役はこうだから、もっとこうして”みたいなことがあるのかなと思っていたら、ああ、またしてもなかったって(笑)》
木村をイメージして書かれた原作の主人公を“木村任せ”で演じるということは─。つまり“何をやってもキムタク”になる可能性は非常に高いと言える。
そんな中、映画公開から約2週間前の1月9日、今や伝説となっていた木村主演のドラマのブルーレイ・DVDボックスが発売された。
「'97年に放送されたフジテレビ系のドラマ『ギフト』は、いわくつきの作品でした。当時、中高生が加害者となった死傷事件が続発していて、劇中で使用されたバタフライナイフが犯罪を助長しているのではないかと問題視されたのです」(テレビ誌ライター)
ドラマ放送後、ビデオ化やDVD化が見送られていたが、20年という時を経てようやく“封印”が解かれたのだ。
「自分の勝手な“木村拓哉”像で脚本を書きました。初めて会ったのは、本読みのときだったかな」
そう話すのは、『ギフト』の脚本を執筆した飯田譲治氏。フジテレビから“木村を主演にしたドラマの脚本を”というオファーを受けた飯田氏は、当時を振り返って、
「'96年に拓哉主演のフジテレビ系のドラマ『ロングバケーション』が大ヒットしたでしょ。あれは恋愛モノの極めつきみたいな作品だったから、今回は恋愛モノじゃない木村拓哉のドラマを作りたいというのがコンセプトにあった。それで、彼に何をやらせたらいちばん楽しいかということを第1に考えたね」
飯田氏は“俳優・木村拓哉は演技もいいし、勘もいい”と思っていたという。
「これは僕個人の勝手な思いなんだけど、原田芳雄さんや萩原健一さんや松田優作さんのような、僕自身が若いときに憧れていた俳優さんがいて、『ギフト』では、そんな男性像を作りたいと思っていた。拓哉なら、それができちゃうんじゃないかという期待感もあったしね」
この作品には、“人間は失敗をしても、生まれ変わってやり直すことができる”という裏のテーマがあった。
「主人公が過去にとんでもない失敗をしていて、それから逃れたいがために記憶喪失になっているという設定でした。物語が進んでいくと、どんどん過去の自分と向き合わなければならない状況になり、過去の傷を思い出しながら、それをひとつひとつ清算していく。そして蘇生して、新しい人生を生きていくというストーリーでした」
もっと大人の役をしないと!
世間が持つ“アイドル・木村拓哉”というイメージから脱皮することを暗示するシーンもあった。
「ドラマの冒頭で、クローゼットから全裸の拓哉がゴロンと転がり出てくるのは、恋愛しない拓哉が“生まれ出てくる”というイメージだったね」
現場ではセリフの言い方から動きまでひとつひとつすべてを考え抜いていたという木村。本番になれば室井滋、小林聡美、倍賞美津子のようなベテラン女優陣とアドリブ合戦。階段から落ちるシーンで肩を脱臼してしまうが、その後も撮影を続けたという。
「“こうしたらどうだろう”“ああしたらどうだろう”と自分の想像力で演技を提案してくる拓哉を見ていて、これはいいかげんに書けないなって思ったよ」
木村が悩む“何をやってもキムタク”問題については、飯田氏独自の見解を語った。
「20年たっても、拓哉はまだ若い男の役ばかり。それは世間が望んでいることで、少年っぽい俳優がずっと人気を集めているからしかたがないんだけど。松田優作さんや萩原健一さんには女を口説く役ができるけど、拓哉はそういうのが似合わない。女性のほうから寄ってくるというスタンスになっているからね」
だが、木村の中に“松田優作”像を見た飯田氏は続ける。
「グッチのスーツで都会を駆け抜ける『ギフト』の木村拓哉は本当にキラキラしていた。もっとも美しい瞬間をとらえたと思っている。彼は今や日本を代表する俳優になっているし、これからも日本の映画やドラマを引っ張っていかなきゃいけない存在でしょ。40歳を過ぎたし、もっと渋くてカッコよくて、みんながついていくような大人の役をしないと! 松田優作さんのあとを担うのは、やっぱり拓哉しかいない気がする」
みんなが見てみたい“キムタクらしくない木村拓哉”を築けるのも、やはり木村しかいないのだ。