リアワイパーは必要? クルマの形で分かれる装着の有無 「全車標準」のメーカーも
リアワイパーは車種によって装着の有無が分かれます。軽自動車でも多く装着されている一方で、たとえばメルセデス・ベンツSクラスのような高級車でついていないというケースも。どのような違いがあるのでしょうか。
セダンに装着が少ないワケ
リアワイパーがついているクルマと、ついていないクルマがあります。たとえば、東京都内を走る法人タクシーなどを見ても、ほとんどついていません。
リアワイパーのイメージ(画像:Pathompong Nathomtong/123RF)。
リアワイパーは装着が義務化されているものではありません。「道路運送車両の保安基準」では、「前面ガラスの直前の視野を確保できる自動式の窓ふき器」を備えなけばならないとされていますが、リアガラスについては規定がないのです。では、どのようなクルマに備えられているのでしょうか。
各社のラインアップを比べてみると、リアワイパーの装着にはある傾向がみられます。それはセダンに設定が少ないということです。たとえばメルセデス・ベンツでも、セダン型車種はSクラスであっても基本的についていません。先述した法人タクシーの場合も、その多くを占めるセダン型のトヨタ「コンフォート」などはついていませんが、最近増えつつあるハッチバック型の「JPNタクシー」にはついています。
これは、ひとつにはクルマの形が関係しているといわれます。実際には車種ごとに形状や特性は異なりますが、一般的にセダンの場合はリアガラスが傾斜していて、走行中にはその付近に空気が流れるうえ、荷室も後ろに出っ張っているので、跳ね上げた水や泥もある程度防げます。一方、ハッチバックやワゴンのようなリア全体が直立に近い形状の車種では、リアガラス付近に空気が流れにくく、跳ね上げた水や泥も付着しやすいというわけです。
日本で初めてリアワイパーを装備したクルマもハッチバック車でした。1972(昭和47)年発売のホンダ「シビック」で、当時の資料では「後方視界を確保するユニークなリアワイパーを装備」と紹介されています。このころはハッチバックという形状も日本では珍しく、リアワイパーもユニークな装備として捉えられたのでしょう。
もちろんリアワイパーは安全のための装備でもあり、クルマの形状だけで装着の有無が決まるわけではありません。車種やメーカーによっても、考え方は異なってくるようです。
セダンも含めて標準装備のメーカーも
スバルではセダンも含め、一部車種を除き全車にリアワイパーを装備しているといいます。同社に話を聞きました。
――リアワイパーをなぜセダンにも標準装備しているのでしょうか?
雨、泥、雪など、あらゆる走行環境において考えられる視界を遮るものを着実に払拭できるためです。視界を確保することは、当社における安全思想の大前提「0次安全」という考え方のひとつです。
――付けていない車種はあるのでしょうか?
パフォーマンス向上のための軽量化を目的とした(2018年7月発表の)「WRX STI TYPE RA-R」といった車種です。また、北米向けなどでは、セダンでリアワイパーを装着する慣習がないことなどから省略しているケースもあります。
――リアワイパー以外で後方視界を確保する装備としてはどのようなものがあるのでしょうか?
ひとつにはリアデフォッガー(リアガラスに埋め込まれた電熱線でガラスを温めて曇りを取る装置)があります。また、安全のため後方視界を確保するアイテムとして、「レヴォーグ」など一部車種でリアビューモニターも採用しています。
スバル「インプレッサ G4」。セダンでもリアワイパーを備えている(画像:スバル)。
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リアワイパーが特に効果を発揮する天候のひとつに、雪が挙げられるでしょう。たとえばトヨタの「カローラ アクシオ」など、標準ではリアワイパーの装備がないセダンでも、寒冷地仕様では装備されていることもあります。その点スバルは、「当社の場合はAWD(全輪駆動)車が基本だったこともあり、リアワイパーやヒーテッドドアミラー、容量の大きなバッテリーなど、寒冷地も意識して当たり前のように装備してきました」とのこと。リアワイパーを多くの車種に装備していることは、そのような企業文化のひとつであると話します。
【写真】日本初のリアワイパー搭載車種
1972年発売のホンダ「シビック」初代。車室ごしにリアガラスのワイパーが見える(画像:ホンダ)。