風速に関する情報で「特急電車並みの速さ」という表現が使われました。各地の鉄道路線を走る特急列車は実際のところ、どのくらいのスピードで走っているのでしょうか。

よく使われる表現は「自転車並み」だが

 天気予報では台風の進行速度や風速などを、数字以外の言葉で表現することがあります。代表的な表現といえるのが「自転車並みの速度」。台風の進行速度が15〜20km/hくらいのときに、よく使われます。


台風12号の襲来で予想された風の強さは「特急電車並みの速さ」と表現された。写真はJR在来線の特急「スーパーあずさ」(2017年11月、恵 知仁撮影)。

 しかし、日本気象協会が2018年7月28日(土)の11時31分に発表した情報では、日本に迫っていた台風12号の風の強さについて「台風(12号)が近づくにつれ、太平洋側では急激に風が強まり、『特急電車並みの速さ』の猛烈な風が吹く所があるでしょう」と表現していました。このとき、各地の最大瞬間風速は具体的には次のように予想されています。

・伊豆諸島、東海地方、近畿地方 50m/s(時速に直すと180km/h)
・関東地方 45m/s(同162km/h)
・中国地方、四国地方 35m/s(同126km/h)
・北陸地方、九州北部地方 30m/s(同108km/h)

 それでは、日本国内の特急列車は実際にどのくらいの速度で走っているのでしょう。今回予想された最大瞬間風速と特急列車の最高速度を比べてみました。

関東の風速予想は関東の私鉄特急と一致

 JRの場合、在来線特急の最高速度は130km/hです。かつては120km/hでしたが、いまは10km/h引き上げられています。今回の予想に当てはめてみると、中国地方と四国地方で予想された風速は「JR在来線特急並み」ということになるわけです。


関東地方で予想されていた最大瞬間風速は京成スカイライナーの最高速度とほぼ一致する(2010年11月、恵 知仁撮影)。

 大手私鉄の特急の場合、京成の成田空港アクセス特急「スカイライナー」が最も速くて160km/h。これに近鉄の130km/h、東武と京急(快特)、名鉄の120km/h、阪急の115km/hが続きます。今回は偶然にも、関東地方の最大瞬間風速が、関東地方を走る「京成スカイライナー並みの速さ」と予想されたことになります。

 それ以外では、京王、小田急、東急、京阪(快速特急)、西鉄が110km/hで、阪神が106km/h、西武は105km/hです。北陸地方と九州北部地方で予想された最大瞬間風速が、この速度域と予想されました。

 こうしてみると、「特急電車並みの速さ」とは、時速に直して100km/h台の速度を表現した言葉といえます。200km/h以上で走る新幹線よりは遅いものの、十分な警戒が必要な速度であることは間違いありません。

※一部誤字を修正しました(8月9日8時59分)。

【写真】日本最速 320km/hの東北新幹線「はやぶさ」


100km/h台の在来線特急に対し新幹線の最高速度は200km/h以上。東北新幹線を走る「はやぶさ」は営業列車では日本最速の320km/hだ(2011年11月、草町義和撮影)。