4月17日の火曜日に東京ドームで開催された埼玉西武ライオンズ対北海道日本ハムファイターズ戦。球場内がライオンズファンで埋まった(筆者撮影)

2018年シーズンの開幕8連勝と好発進したパ・リーグの埼玉西武ライオンズ。4月30日には本拠地12連勝となり、5月4日時点で21勝7敗の首位となっている。その西武が4月17日に初めて東京ドームで主催試合を行った。

東京ドームには長蛇の列

当日はあいにくの雨模様だったが、前売り指定券は試合開始前に完売。入場までに長蛇の列ができた。筆者は試合開始20分前に球場入り口に到着したが、中に入れたのは試合開始5分前だった。チケットを提示した入場者全員に「ライオンズ・クラシック2018」ユニフォームとライオンズブルーの「ルミカライト」が配布された。

この日の試合は2014年以来、4年ぶりに復活した「ライオンズ・クラシック2018」として開催され、選手たちは2004年〜2008年シーズンに着用した当時の復刻ユニフォームを身にまとってグラウンドに現れた。

試合は3回表に日ハムが近藤の適時打で先制するも、その裏に上沢が危険球で退場し、日本ハムに一瞬暗雲が漂いかけた。しかし4回表には日ハムのアルシアが少し沈んだ雰囲気を払拭するソロ本塁打を放ったのを見届けて、筆者は食事のため座席を離れてコンコースへ出た。

売店・スナックはどこも混雑していたが、西武初の東京ドーム主催試合のために提供された「ライオンズオフィシャルメニュー」のうち、ライオンズブルーが鮮やかな「ライオンズサワー」(税込600円)を提供するコーナーには長蛇の列ができていた。食事や飲み物は、球場に足を運ぶ楽しみの1つであり、西武もファンの心をつかむオリジナルメニューの開発に腐心していることがうかがえる。

試合は、西武は12安打を放ちながらも、2得点にとどまり、日ハムに2-7で敗戦、日ハムは今シーズンの西武戦初勝利を収めた。


試合終了後にも現れた松崎しげるさんは2曲熱唱した(筆者撮影)

初の東京ドーム主催試合を白星で飾れず失意の西武ファンであったが、西武ファン、日ハムファンとも、大多数が最後まで観戦し、歌手で「40周年PRアンバサダー」を務める松崎しげるさんによるスペシャルイベントが行われた。

松崎さんは、スタンドのファンに「10周年、20周年、30周年、節目の年には必ず優勝していました。40周年の今年、優勝目指してどんどん球場に足を運んでください。これからも西武ライオンズ、がんがん突っ走ります。やっぱりこの歌うたわないとダメかな?」と語りかけ、球団応援歌「地平を駈ける獅子を見た(40thバージョン)」を熱唱するなど大いに盛り上がった。

東京ドーム主催試合が1試合での最多動員を更新

7回表終了後、公式入場数は44978人で、2005年の実数発表以降最多動員となったことがオーロラビジョンで発表された。昨シーズンの西武の観客動員数は167万3219人、1試合平均23239人であったことから、この日は昨シーズンの1試合平均の約2倍の観客を動員したことになる。昨シーズン、西武の観客動員数は球団史上過去最多ではあったが、セ・パ両リーグ中10番手(パ・リーグの中で4番手)の水準にとどまり、パ・リーグの1試合平均観客動員数25910人には届いていなかった。

開幕から1カ月以上が経過したが、今シーズンは、この「東京ドーム効果」もあってか、4月30日時点での主催試合(13試合)の1試合平均の入場者数は26383人と昨年よりも増加している。


東京ドーム内はほぼ満席で立ち見での観戦客もいた(筆者撮影)

西武にとって今シーズンの観客動員数底上げのためには、現状では少ない平日の観客動員数を増やすことが課題といえるだろう。

平日の火曜日にもかかわらず初の東京ドーム主催試合が好調だった要因の1つは、東京都心に立地するアクセスの良さにある。現状、埼玉県所沢の本拠地メットライフドームは池袋駅から西武線で約40分を要し、都心の勤め人が仕事帰りに観戦するには距離が離れていることは否めない。

初の東京ドーム主催試合の狙いを西武ライオンズの井上純一事業部長は「大きく3点ある。まず40周年事業としてファンの記憶に残るイベントを実施して球団史に刻みたかったということ。次に平日にメットライフドームに来場できない層や、何らかの事情で離反ファンとなってしまった方々に対してアプローチする機会を創出させること。

そして、ライオンズが培ってきた事業活動が東京ドームというポテンシャルの高い立地でどこまで実力を出せるのか、チャレンジングな目標を設定することで社内の士気を高めるとともに、その実績を評価して今後のマーケティングに生かすこと」と説明する。

都内でパ・リーグ球団を観戦できる数少ない機会

楽天やロッテ、ソフトバンクなどの西武以外のパ・リーグ他球団も東京ドーム主催試合を行っており、いずれの試合もチケットはほぼ完売してきたという(『東京ドームのパ・リーグ試合が超人気のワケ』2016年7月24日配信の記事を参照)。

日ハムが2004年シーズンから本拠地を東京ドームから札幌ドームへと移して以来、東京に本拠地を置くパ・リーグ球団がなくなったため、東京ドーム主催試合は都内でひいきチームのホームゲームを観戦できる数少ない機会を提供している。


試合終了後の東京ドーム。平日の雨の中にもかかわらず多くの西武ファンが足を運んだ(筆者撮影)

また、東京ドーム主催試合は埼玉県における西武沿線以外の地域でのファン層拡大につながるメリットもありそうだ。

たとえば、埼玉高速鉄道沿線からは東京ドームの最寄り駅である後楽園駅まで直通で来ることが可能。東武伊勢崎線・日光線沿線からは、東京ドームまで徒歩圏内の神保町駅まで直通運転している。

いずれの沿線もメットライフドームよりも短い時間で東京ドームへアクセスできる。西武沿線外地域でのファン層拡大のために、今後も東京ドームを含むさまざまな球場での試合開催を検討する余地は大きいと考えられる。

西武ライオンズは、40周年記念事業によるメットライフドームのボールパーク化と併せて、ファン層拡大と観客動員数増加につなげるため今シーズンもさまざまなイベントを実施していく予定だ。同球団の井上純一事業部長は「この夏の大型イベント『ライオンズフェスティバルズ2018』において沿線地域だけでなく、埼玉県の各自治体やスポンサー企業などさまざまなステークホルダーと一緒にライオンズを盛り上げていきたい」と意気込みを語る。

今後も、西武は観客動員数増加を実現するために多彩なアイデアを企画し、実行に移す必要がある。そして、ファンと本音で議論する機会を設け、ファンのアイデアを取り入れることがより球場に足を運んでもらうために大切かもしれない。