トンネルの天井に見られる巨大な扇風機「ジェットファン」、換気のための設備ですが、必ずしもすべてのトンネルに設置されているわけではありません。そもそもトンネル内の換気は、どのようになされているのでしょうか。

対面通行のトンネルでは朝夕で風向きが違うことも

 トンネルの天井に、一定間隔で巨大な筒が吊り下げられていることがあります。


中央道の恵那山トンネル下り(全長8490m)。天井から筒状のジェットファンが吊り下げられている(2013年6月、中島洋平撮影)。

 産業機械メーカーの三井三池製作所(東京都中央区)によると、あれは「ジェットファン」と呼ばれる巨大な扇風機とのこと。「トンネル内を換気し、火災時には煙を外に排出する役割があります。もしもジェットファンが作動しなければ、排気ガスがトンネル内に充満して視界が悪くなり、仮に歩行者がそこを通れば、気分が悪くなるかもしれません」といいます。同社の製品では、平均で風速35m/sという台風並みの風を出すモデルもあるそうです。

 しかし、ジェットファンは必ずしもすべてのトンネルにあるわけではなく、設置間隔もところによって異なります。そもそもトンネル内の換気はどのようになされているのでしょうか。三井三池製作所に聞きました。

――ジェットファンがないトンネルもありますが、そもそもトンネルの換気方式にはどのようなものがあるのでしょうか。

 大きくわけて、(トンネル内を吹き抜ける自然の風に任せる)自然換気方式、ジェットファンによる方式、トンネルの途中に地上へ突き出る立坑(たてこう)や換気塔を設け、それを通じて換気する方式の3つがあります。

――ジェットファンがメリットを発揮するトンネル、あるいは適さないトンネルはありますでしょうか?

 メリットとしては、立坑や換気塔を設けるよりも工事費が安くなることです。このため、比較的短いトンネルでは基本的にジェットファンが使われ、3〜5km以上の長さになると、立坑などを設ける方式が増えてくる印象です。一方通行のトンネルですと、車の流れによって生まれる風である程度換気してくれるのですが、対面通行の場合はジェットファンでも厳しいことがあり、比較的短いトンネルでも立坑などを設けてトンネル途中で換気する方式が採られるケースもあります。

――ジェットファンはどのように動かしてるのでしょうか?

 トンネル内部における視界の透過率や一酸化炭素の濃度を測定し、風の強さを自動で調整しながら運転していることが多いです。お話した通り、一方通行のトンネルではクルマの流れに沿って、入口から出口へと風を流していますが、対面通行の場合は状況に応じて風の流れる方向が変わり、朝と夕でジェットファンの回転方向が違うこともあります。

「天井板」からジェットファンへの置き換えも なぜ可能に?

――設置間隔や個数はどう決められるのでしょうか?

 設置間隔は、ファンの大きさによって一応の基準があります。筒の口径が600mm、1000mm、1250mm、1500mmの4種類があるのですが、たとえば600mmならば80mごと、1000mmなら100mごととされています。ただ、総個数は勾配や通過交通のスピード、交通量の多さなどから決まり、上り坂などアクセルの踏み込みが多くなるトンネルではたくさん設置する傾向です。

――ジェットファン方式は増えてるのでしょうか?

 いえ、全体的には減っています。2012(平成24)年に中央道の笹子トンネルで起こった天井板落下事故以降、天井板が撤去されジェットファンに置き換えられたトンネルもありますが、そもそもハイブリッド車などの普及もあって、昔と比べ排気ガスが抑制されてきています。このため、既存のトンネルでジェットファンの設置個数を減らすケースも多いのです。

――天井板からジェットファンへの置き換えは、なぜ可能になったのでしょうか?

 これも、クルマの排気ガスが抑制されてきたためです。そもそも天井板はトンネル上部を仕切り、排気路と(外の新鮮な空気を供給する)送気路を設けて換気する安定した方式でしたが、排気ガスが少なくなっていることから、ジェットファンによる方式でも十分と判断されて置き換えられたケースもあります(編集部注:ジェットファンによる方式は通過するクルマなどの影響を受けることもあり、天井板で送排気路をつくる方式よりも換気能力が劣るとされている)。

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 ちなみに三井三池製作所によると、笹子トンネル事故以降、ジェットファンを天井から吊り下げている金具を増やしたり、落下防止用のロープが施されたりと、安全対策が強化されているそうです。

【図】ジェットファンの構造


電動機は逆回転も可能で、どちらの方向にも風を出せるようになっている(画像:三井三池製作所)