ヤフーが「DATA FOREST」と称する、AI技術を使った顧客企業間ビッグデータ連携の実証実験を本格的に開始。2019年度の事業化を目指します。同社とともに実験に取り組んできた日産自動車もさらなる期待を寄せています。

事業化の目標は2019年

 ヤフーが2018年2月6日(木)から、AI(人工知能)技術などを使った顧客企業間ビッグデータ連携の実証実験を本格的に開始します。顧客企業の持つデータと、ヤフーのビッグデータ関連技術やAI技術を掛け合わせ、顧客企業の活動を支援するというもので、消費者の嗜好や動向、商品の売上予測などが詳細に出せるといいます。


発表には久元喜造神戸市長(左から3人目)、出井宏明Jリーグデジタル専務執行役員(左から4人目)も臨席した(2018年2月6日、乗りものニュース編集部撮影)。

 ヤフーは今回の取り組みを「DATA FOREST(データ・フォレスト)構想」と称し、2018年度内に実証実験とサービス化を実施、2019年度の事業化を目指します。それにともない、社内に500人いるデータサイエンス人材を今後、2000人規模まで増やしていきます。

 実験はヤフーが蓄積してきた検索やメディア、Eコマースなどのビッグデータ関連技術に加え、同社が持つAI技術や計算技術を活用して、顧客企業のデータと掛け合わせて行われます。

 今回の実験本格化に先立ち、ヤフーは約1年前から日産自動車や江崎グリコ、神戸市などと実験を行ってきました。今後は企業や自治体のほか、研究機関まで参画者を拡げる見通しです。

 同日行われた記者会見で、ヤフーの川邉健太郎副社長は、同社の提供する100以上のサービスや、6000万人にも及ぶ月間アクティブユーザー数(1か月に1回以上のサービス利用があったユーザー)などを通して得られたビッグデータを生かして、「ヤフーの外にいる企業をサポートしながら、事業の柱を作っていきます。実験倒れ(失敗)になることもたくさんあると思いますが、実現に向けて努力します」と話しました。川邉副社長はまた、消費者が持つ、ビッグデータ利用にともなうセキュリティ面への懸念について、「(個人情報の漏えいを)遮断できる簡便な仕組みを提供していきたい」と明らかにしました。

日産「もっとやっちゃえヤフーさん」

 ヤフーの佐々木潔チーフデータオフィサーは、同社が保有するスパコン「KUKAI(クウカイ)」や国内最大級の数をそろえるHadoopサーバなどを活用することで、「より効果的に企業活動をサポートできる」と発言。2019年の事業化については「実証実験を深めつつ、多くの企業と組んでいきたい。目指すは1000から1万」と話しつつも、事業規模への明言を避けました。事業モデルとしては、同社が提供するAPI(ウェブサービスの機能を外部から利用するためのインターフェース)などへの課金を検討しているといいます。


会見で登壇した日産自動車の高橋さん(2018年2月6日、乗りものニュース編集部撮影)。

 ヤフーと半年前から実証実験に取り組む日産自動車からは、市場調査や販売予測を担当するコーポレート市場統括本部の高橋直樹エキスパートリーダーが登壇。「ビッグデータは消費者理解につながります。ヤフーさんは消費者に関するさまざまなデータを持っており、横断的な分析もできる。(日産もそれらのデータを活かせば)長期的な販売予測をより詳細に行うことができるようになる。私たちは、消費者にクルマを『モビリティ』として使ってもらいたい。モビリティというのは、いわば『お出かけ』ですから、単なる『移動』ということではありません。そのような面からも、ヤフーさんのデータは重要です。私たちは『やっちゃえNISSAN』ですが、ヤフーさんには『もっとやっちゃえヤフーさん』と言いたい。今後は単にクルマを作って売るという既存の事業領域にとどまらず、消費者のニーズをより把握して、技術力の新たな提案を行っていきたいです」と今後に期待を寄せました。

【写真】日産、半年間の取り組みの具体的な成果


半年前から「DATA FOREST」実証実験に取り組む日産はその成果として、詳細なレベルの販売台数予測の可能性などを挙げた(2018年2月6日、乗りものニュース編集部撮影)。