「スープカレー チキンとあさり」(1,150円)

恵比寿で深く遊んでいる人ならば、必ず行き着く憩いの酒場がある。『吉柳』ときいて、「ああ、あそこね」と返ってくれば本物の遊び人だというほど、深夜族のなじみの店だ。

飲んだあとの〆のカレーを世の中に浸透させた名酒場であり、恵比寿の夜に欠かせない存在のひとつ。そんな『吉柳』の魅力をお伝えしよう。



「ゆでたてタコ吸盤」(600円)。茹でたてで提供される吸盤は、白だし醤油で味付けされ、コリコリとした食感が楽しめる
遊び慣れた人が本当に求める食と場所

恵比寿という街で28年間愛され続ける名酒場『吉柳』。

この店を営むのは吉柳利哉さんだ。恵比寿を30年以上、料理というフィルターを通して見続けた彼は、この街を訪れる人の胃が“本当は何を求めているか”を知っている。

気合いを入れて訪れる店の多い恵比寿は、普段使いできる店が意外と少ない。そんな時に必要とされるのが、毎日通っても飽きずに、ほっと落ち着ける空間である『吉柳』のような酒場なのだ。



「あぐー豚おろしポン酢」(800円)。7年間ほど沖縄へ行き来していた経験を持つ吉柳さんは、沖縄への愛着から沖縄産の食材を使用した料理も多く手がけている
屋台から始まった『吉柳』の歴史

明治通り沿いで『屋台 吉柳』として1989年に開業。80年代バブル期の港区を遊び尽くした大人たちの胃袋を満たしていた。

その後、店舗を構えてからも、時代が求めているものを見極め、人々に愛され続けているのである。

またお客のオーダーを見ながら、味の被る料理があれば機転を利かせて、サッとどちらかの味付けを変更するという配慮も。

この日も、「ゆでタコ吸盤」は通常ポン酢で味付けするが、「あぐー豚おろしポン酢」と被るため、白だし醤油に変更していただいた。

それが、酒飲み心をガッチリ掴んで離さない品書きとアレンジだ。30年近く遊び人たちとともに恵比寿の夜を過ごしてきた目利きだからこそ成せる技なのだ。



「ほうれん草とベーコンエッグサラダ」(700円)。半熟卵を割りながら底の方から豪快に混ぜて召し上がれ
これもこの店で定番の酒が進む味!

ほうれん草とベーコンサラダの上に、半熟卵を豪快にのせた一皿も『吉柳』を語る上では欠かせない。

見た目は普通の「ほうれん草とベーコンエッグサラダ」なのに、一度食べてしまうとクセになり、数日後にはまた食べたくなってしまう逸品なのだ。

その味の決め手となっているのが自家製の無化調ドレッシング。バルサミコと白ワインビネガーを混ぜ、沸騰させないように注意しながら火入れして作られており、全ての具の一体感を生んでくれる。


恵比寿の飲んべいが求めている味が、この沁みるスープカレーなのだ!



「スープカレー チキンとあさり」(1,150円) ゴロゴロ入る野菜やチキンの食感も楽しく、たっぷり飲んだ後の胃にも優しくしみわたっていく
胃にしみわたる名物カレーも変わらぬ味わい

開店当時から提供を続けるカレーは『吉柳』の名物である。元はアルバイトのネパール人スタッフが、夜な夜な振る舞っていたカレーから始まったそう。それが好評になり、定番化したものだという。

現在はスパイスカレーとスープカレーの2種を提供。今回は「スープカレー チキンとあさり」をセレクト。

塩、胡椒、カレーパウダー、バルサミコで作られるサラッと胃に流れ落ちていくあさり出汁の効いたスパイシーなスープがたまらない!

まずはそのまま、その後、具の上にのる青のりを溶かして磯の香りをプラスしたり、添えられたバターをスープに溶かしてコクをプラスしたりと味変も楽しめるのも嬉しい。



実はカレーが一番美味しい時間は18時〜19時30分だ。常連客の中には、この時間を狙って遊ぶまえに訪れる人も

気取らず、シンプルに美味しいものを提供し、常に進化し続ける『吉柳』。

カレーや定番料理であっても、常にさらに美味しくできるよう日々研究を欠かさない。

だからこそ常に時代の流れを意識している遊び慣れた大人に受け入れられ、そんな人たちがちょっとひと息つきたい夜に訪れたくなるのだろう。

恵比寿という場所で遊ぶなら、必ずおさえておくべき酒場であることは間違いない。