前半に幸先よく2ゴールを奪ったのは、ハイチの守備がまったく整備されていなかったからだ。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全3枚)

[キリンチャレンジカップ2017]日本 3-3 ハイチ/10月10日/日産スタジアム

 お粗末な試合になりました。「打ち合い」というより、両チームともに戦い方が整備されていないことで「打たせ合い」のゲームとなってしまいました。

 前半の立ち上がり。日本は再三にわたってチャンスを作り、ゴールもふたつ奪いました。これは「日本が良かった」というより、ハイチの守備が驚くほど整備されていないことから起こっていました。
 
「守備が整備されていない」とは、ハイチ代表が「サッカーにおいて最もケアすべきエリアをまったくケアしていなかった」ということです。
 
 守備をする際は、どこにもポッカリとスペースが開かないことが理想ですが、この日のハイチ代表や日本代表のように、「スペース」より「相手」を意識してポジショニングをすると、当然ながらどこかにスペースが開いてしまいます。しかし、サッカーの守備において極力開けてはいけない、最もケアすべきスペースというのがあります。それはセンターバックの前のスペース=「バイタルエリア」と呼ばれるところです。
 
 にもかかわらず、前半のハイチ代表はふたりのボランチの選手が驚くほど離れてポジションを取り、かつバイタルエリアを使われた際に戻る意識も薄かったので、日本は好き放題攻めることができていました。
 
 後半になるとハイチ代表はシステムを変え、そのふたりのボランチの間にアンカーのような選手を配置して、そのスペースを人で埋めてきたので、日本も後半は攻めあぐねましたが、なぜ前半にあれほど自由にバイタルエリアを与えてくれたのか疑問です。
 
 一方、日本代表は無意識レベルだと思いますが、前半にあまりにも好き放題攻められたので「負けるはずがない」というムードがどこかにあり、ハイチ代表が配置を変えてきただけで一時は逆転までされる、という大味な試合をしてしまいました。
 
 今の日本代表の問題点はやはり、”対策をとってきた相手”への対処が、柔軟に行なわれないことだと思います。つまり、「ハマれば素晴らしい」けど「ハマらなければ流れを引き戻せない」のです。
 昨日の例でいくと、後半にハイチ代表が1ボランチにシステムを変更した場合の対処です。日本代表は昨日、一貫して4-3-3、中盤はひとりのボランチとふたりのインサイドハーフで組まれていました。それに対し、相手が2ボランチを敷いた場合は、ふたりのインサイドハーフが相手のボランチにマンマーク気味でつくことは容易く、ハリルホジッチ監督の強調するデュエルで主導権を握りやすくなります。
 
 しかし、後半のハイチ代表のように、相手が日本代表の中盤と噛み合わないように、1ボランチにシステムを変更してくると日本代表は応用問題に直面します。「相手の1ボランチに誰が行くのか」「相手のインサイドハーフに誰がつくのか」。それらが場面場面で変わってくるので、今度は状況によって臨機応変な対応が求められるのです。

 この日も、ハイチ代表のシステム変更に戸惑う選手たちの姿が見られました。結果、後半はマークにズレが生まれ、全体のラインが下がり、それを修正できないまま失点を重ねてしまいました。
 
 今の日本代表のように「相手」への意識を強く持って守備をするなら、相手のシステム変更に対し、日本代表も形を変えながらマークを明確にしていくのもひとつの手だと思いますが、ハリルホジッチ監督も選手も昨日はその手を使いませんでした。
 
 これから本大会まで、対戦相手が決まれば、スカウティングが各国で緻密に行なわれ、ハイチ代表のようなシステム変更は、今の日本代表に対峙するチームは当然考えるはずです。それに対する日本代表の対処もこれから擦り合わせていくと思いますが、その辺りもこれからのハリルジャパンの見どころです。