モチベーションは、どこからともなく心の中にやってきて、見えないところで私たちを動かし、いつのまにかいなくなってしまうもの。

人間にとって重要な心理のひとつなので、どう向き合うべきなのかを考えなければなりません。

行動心理学の研究者である池田貴将さん著『図解 モチベーション大百科』(サンクチュアリ出版)では、これまで研究者によって発表されてきたモチベーションのメカニズムや、やる気の向上方法を、一冊にまとめています。

人生をより楽しくするためにも大切な、モチベーションのコントロール。ここでは「自己管理」をテーマにしたいと思います。

自分を
「忙しく」させない

人間は「忙しい」ことを自覚していると、思いやりが欠如していく傾向にあります。自分が「自己中心的になっている」ということも、当然のように思えてくるのです。例えば仕事で「周囲の役に立とう」と予定を詰めこんだはずなのに、それを忘れて「なぜ自分ばかり…」という被害者意識が滲み出て同僚と衝突したり、すれ違いが起きたりすることがあります。

時間の使い方は、人生そのもの。同じ1時間でも、たくさんのことをする人と、少しのことしかできない人がいます。一度に多くのことをする人は「仕事が早い」「仕事ができる」などと賞賛されることが多いかもしれません。しかし中には、予定の数が多いほど、ひとつの予定に対し「何のためにそれをするのか」が不鮮明になっている人もいます。

充実した1日を送るためには「その予定」のことだけに集中できるように、予定と予定の間に「空白の時間」を持たせる必要があります。これは意識の問題が鍵を握ります。先のことばかりを考えていると、時間の質が下がっていくからです。

この質を高めるには「今」に意識を向けることがとても大切です。例えば、人の話に没頭すること。文字の世界に入り込むこと。呼吸を感じること。パソコンをタイプする指の感触を確かめること。窓の外の景色を無心に眺めること…。

こんな風に、私たちは与えられた時間の質を「いつでも」高めることができます。時間の余裕を持って「今」に集中する訓練をしてみてください。

「緊張」を「興奮」に
変換する

重要な場面に直面したときに「まったく緊張しない」という人はいないでしょう。これから起きる物事に対して、人の体と心は張り詰めるようにできています。

ただ「緊張」という状態が生じたとき、その状態をどのように捉えるかは個人差があります。リラックスしなければと深呼吸をしてみたり、気をそらそうとしたり、肩や首を回したり、ストレッチをするのもひとつの手です。ただ、それらはベストな選択だとは言えません。

なぜなら「落ち着こう」という意思は「力を発揮しよう」という意思と、反対方向に引っ張り合ってしまうからです。そうすると、結果的にミスが誘発されたり、パフォーマンスが中途半端なものになる場合があります。緊張という状態を無理になくそうとせず、ポジティブな方向にどんどん盛り上げたほうが恐怖を消しやすくなります。人に対して、または自分の脳内においても「何かすごいことが起こりそう!」「ワクワクしてきた!」などといった言葉を使うだけで、「緊張」が「興奮」に変換されるのです。

その瞬間、意思のフォーカスが「失敗する不安」から「今やるべきこと」に向き、周囲があっと驚くような結果をもたらします。

緊張したら「私は興奮している!」と脳内で叫んでみましょう。

我慢して頑張るのではなく
自分をうまく「乗せる」

人は「やらなきゃ」「こうしよう」と決意するたびに、自制心を消耗します。

自制心は「起床時」が最も充実していると言われています。仕事中会議で発言をしたり、お断りのメールを書いたり、コンビニで買う物を選んだり、人前でいい格好をしたり…。決意や決断の行動をすることで消耗し、夕方から夜にかけて枯渇していきます。

これは睡眠によって回復しますが、日中に使いすぎていると、睡眠だけでは元に戻らなくなります。すると思考能力が弱まり、判断を間違えやすくなります。ですから、頑張り過ぎは自分にも周囲にも迷惑をかける恐れがあるので、注意しなければなりません。

「頑張らないわけにはいかない」というときもあるでしょう。しかし、そもそも「頑張ろう」と思った時点で、もうそのことをやるべきではないと私は考えます。なぜなら「頑張ろう」と思えば思うほど「やりたくない」という感情が強まるからです。自分をうまく乗せる「状況」さえ作れば、自制心を無駄使いせずに済みます。

私の場合、ある計画を練る際には、まずデスクに向かいます。デスクだけでは気が散るので、近所のカフェに行きます。カフェで隣の声が気になると、歩きながら考えることにします。そして最終的にはお風呂場に行き着きます、というのがいつものパターンです。椅子を湯船に沈めて座り、風呂フタをデスク代わりにして計画をまとめます。はたから見ればおかしな光景かもしれませんが、私にとってはベストな環境なのです。「風呂で計画を立てる」という行動と「ワクワクする」という感情がくっついているから、自制心が減りません。

とにかく、集中できるまで状況を変えていきましょう。そうすれば自制心を減らさず仕事ができるはずです。

『図解 モチベーション大百科』著:池田貴将(サンクチュアリ出版)

人間の中に生まれる「モチベーション」にスポットを当てた本書。研究者たちが実験して解き明かした心理・行動パターンの要点のみを図解にし、著者なりの解釈を加え分かりやすくまとめています。さまざまな法則がありますので、自分なりに組み合わせて普段の生活でトライできる一冊です。