ダイエット中の人はなぜジャンクフードを欲するのか

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著:Heidi Seage(カーディフ・メトロポリタン大学 Lecturer in Psychology)

 控えめに言っても、イギリスのダイエット業界は成功している。イギリスの成人の半数以上が、年間に摂取するカロリーを制限して体重を減らす努力をしている。ただ残念なことに、体重を減らすということは、食事の際にビスケットを控えたりサラダを選べば良い、というほど簡単なことではない。ダイエットの苦労を乗り越えてきた人でさえ、それがいかに難しいかということを知っている。

 それでは、強い意思を持っていてもダイエットが非常に難しい理由はどこにあるのだろうか。なぜ私たちは食欲をコントロールすることができないのだろうか。

◆食べ物が出す「サイン」
 スーパーマーケットで美味しそうなものばかりが並んだ陳列棚の横を歩いたり、何か美味しそうな匂いを嗅いで、棚に並んでいるおやつを見てよだれがでてしまう。しかも、それらに含まれるカロリー量や栄養素など関係なく。これは誰にでも経験があることだろう。

 人間の知覚に訴えかけてくる食べ物のサインは無視することが難しく、またそのサインを出しているのは味や匂いだけではない。広告やブランドのロゴも、私たちを誘惑してくるのだ。

 人は空腹になると、ゲルリンというホルモンが脳を刺激することで食べ物のサインに気づきやすくなる。研究者たちは、空腹時の人間の脳は、比較的糖質や脂を多く含んだ不健康な食べ物が出すサインに対して、より強く惹きつけられるようにできているということを発見した。被験者にカロリーの高い食べ物を見せる実験では、このサインが唾液の分泌や食べたいという欲求などの空腹に対する予知反応を引き起こすことがわかっている。

 これらすべてを合わせて考えると、カロリーの高い食べ物が持つ特性は、体重を減らそうと頑張っている人、そして特にダイエットによって空腹を感じている人にとって、非常に難しいチャレンジとなることが多い。

 前向きに考えれば、この魅力的なサインを無視できるように鍛えることは可能かもしれない。ある研究結果によると、カロリーの高い食べ物のサインを無視できるようにパソコンで訓練を受けた人が、逆にそれに注意を向けるように訓練された人と比べて、スナック菓子の消費が少なかった。

◆「禁じられた食べ物」の強い誘惑
 ダイエットではカロリーの摂取を抑えるため、楽しみにしている食べ物を「諦める」ことを余儀なくされることが多い。だが、研究者によると、大好きな食べ物を控えるように言われると逆にそれが欲しくなり、さらに、それを食べることを禁止されていない時よりも、それを食べたいという欲求は強くなるという。

 別の実験で、チョコレートに目がない人に1週間まったく食べないように頼んだところ、この現象はより顕著に表れた。彼らはチョコレートやその他のカロリーの高い食べ物を見た時に、チョコレートを禁止されていない被験者と比べて、より強くそれを欲したのだ。さらに、それを食べることが許された時には、彼らは概して、より多くのカロリーを摂取するという傾向が見られた。

 つまり、ダイエット中の人が大好きな食べ物を制限しようとした時でも、禁止したことに対する行動的・認知的反応として、意図に反してより強い(食べたいという)衝動を生んでしまうことがあるのだ。

◆「どうにでもなれ」効果
 体重を減らそうとしている時に、何をいつ食べるべきなのかということは、選んだダイエットプランのルールによる制約を受けることが多い。しかし、ダイエットのルールを厳しくしすぎるのは問題だ。なぜなら、空腹という生理信号に基づいた摂食行動を取らない限りは、過食の恐れがあるからだ。

 ダイエットのルールが持つもうひとつの問題は、例えばひと切れのケーキをこっそり食べるというたった一つのルール違反が、そのダイエットの計画全体をダメにしてしまうことがある、ということだ。研究者はこれを「what-the-hell(どうにでもなれ)効果」と呼んでおり、数々の研究実験で実証されている。それらの研究結果に共通していることは、ダイエット中の人がカロリーの高いお菓子を食べてしまったことを認識してしまうと、ルールを破っていないと認識している人と比べて、その後の食事でさらに多くのカロリーを摂ってしまうということだ。

 実質的には多少の余分なカロリーの摂取がダイエット自体に大きな影響を与えることはそう多くないが、こうしたささいな過ちは、より大きな心理的影響を与えることがある。ダイエットの「失敗」は、罪の意識やストレスなどのネガティブな感情を引き起こすことが多く、どちらも過食を引き起こす原因として知られている。

 これらのことから何を学べるだろうか?厳しいルールを強要したり大好きな物を食べることを禁止するというダイエットは、逆に過食のリスクが増えるため問題となり得る。そのかわりに、人はみな、本能的にカロリーの高い食べ物に惹きつけられる性質があり、空腹時にはそうした食べ物のサインがもっとも魅力的だと感じてしまう、という認識を持つことが良いのではないだろうか。

 肥満人口の割合が増えるということは、ダイエットで体重を減らそうとする人が増えることを意味している。健康上の目標を達成する上で完璧なダイエットなど存在しない一方で、脳の働きを理解したり、ダイエットによる心理効果を認識することは、食べ物の誘惑に直面した時に気持ちをコントロールする助けとなるだろう。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Conyac