ジャスティン・トーマス【写真:Getty Images】

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優勝トーマス、カップ縁に止まったボールが12秒後にイン「こんなの見たことない!」

 男子ゴルフの全米プロゴルフ選手権(クウェイルホローC)最終日は13日(日本時間14日)、4位から出たジャスティン・トーマス(米国)が6アンダー、3ボギーの「68」で通算8アンダー。前半を終えて首位に立っていた松山英樹(レクサス)を後半で抜き、逆転でメジャー初Vを飾った。原動力となったのは10番。バーディーパットがカップの縁に止まるも、12秒後にカップイン。奇跡のバーディーを演じ、「これぞ究極の待機だ」「カップ際で粘るボールを忘れない」と動画付きで速報され、全米で話題となっている。

 歓喜は「12秒遅れ」でやってきた。

 10番パー5。トーマスは第3打をピンまで約3メートルの地点につけ、迎えたバーディーチャンス。ラインを読み、慎重にパットを振るとフックしたボールはコロコロとカップ方向に転がり、入るかに見えた。しかし、手前からカップの左の縁を沿うようにして、ピタリと止まってしまった。ボールの右半分近くがカップを覗いている状態だ。

 止まりかけた瞬間、トーマスは「右側に落ちろ」と念を込めたのか、右手を挙げたが、願いは叶わず。惜しすぎるパットに観客も「オーッ」というため息交じりの声が上がった。しかし、ドラマはまだ終わっていなかった。

 中継カメラがいかに惜しいパットかを伝えるように、どんどんズームにしていく。止まってから5秒、10秒と立っていた。そして、次の瞬間、ボールはコロンと落ちてカップイン。パーの落胆が一転、バーディーの歓喜が訪れた。観客は信じられないといった様子で通常のバーディー以上の大歓声を上げ、いったん背中を向けていたトーマスも驚いたようにキャディーとグータッチした。

「12秒遅れのバーディー」に各メディアは騒然となった。

各国メディア「待って、もう少し…!」、ファン「これはなんと素晴らしい」

 大会公式は「待ってみよう。きっと良いことが起きるから」、PGAツアー公式は「諦めてはいけない。ゴルフはインチ単位の試合なんだ」、欧州公式ツアーは「待って、もう少し待って…!」、PGA of Americaは「待って…待って…カップインだ!」と公式ツイッターに動画付きで速報した。

 さらに米「ゴルフ.com」は「これぞ究極の待機だ」と称賛した後で「私たちはカップ際で粘るジャスティン・トーマスのボールを忘れることはないだろう」と紹介。米「ゴルフチャンネル」はビックリ顔の顔文字3連発で興奮ぶりを伝えている。

 動画を見たファンも「これまでゴルフの神様の存在を信じなかった者もいただろう」「こんなことは今までで一度も目撃したことがない! 一度もだ!」「これはなんと素晴らしい…ハイタッチだ!」「キャンドルに火を灯した!」とコメントが相次ぎ、騒然とした様子だった。

 プレー規則では「不当に遅れることなくホールに歩み寄る時間に加え、球が止まっているかどうかを確かめるために更に10秒間待つことができる」とされているが、打ち終わってから確認する時間が10秒を経過していなかったトーマスはバーディーが認められたようだ。

 ミラクルバーディーから松山逆転の道が見えた。9番を終えた時点で単独首位の松山とは1打差の通算6アンダー。このホールはそろってバーディーとしたが、トーマスはさらにスコアを1つスコアを伸ばした。一方、5ボギーを叩くなど2つスコアを落とした松山らを抜き、劇的な大逆転でメジャー初優勝を飾った

 この10番の第1打では曲げたショットが木に当たって跳ね返ってくるなど、抜群の運も持ち合わせていたトーマス。まさにこの日、「ゴルフの神様」に愛されていたとしか言いようがない男が、初のメジャータイトルを手にした。