選手に話を聞いてみると「サッカーが好きだから、続けたい」とか、「チャンスがあれば、上のレベルでやりたい」と言っています。九州リーグで楽しくサッカーをやるのではなく、まず一つ上のカテゴリーであるJFLに上がること。そこからJ3、J2、J1と目指していかなければいけません。意識として向上心はあるんだと思うのですが、どん欲さというのかな、そういう意識がまだまだ足りないんじゃないのかなと思っています。

――石崎監督と言うと「育成」も代名詞の一つですが、まずは意識付けから、それが大事だと。

石崎 やっぱり意識付けは大事ですよね。僕自身も向上心はありますし、もっと良い指導者になりたいと思っています。このレベルの選手を鍛えて、もしかしたらこのチームからJ1の選手になる可能性が出てくることもなきにしもあらず、という気持ちを持って選手たちと接しています。

だから選手自身も上を目指して向上心を持って、仕事があるかもしれないですが、体を休めることも食事をすることも、トレーニングの一つ。そういう意識を持ってやってほしいという話はしています。

▼J経験者という頼もしい存在

――今季は森島(康仁)選手や高地(系治)選手といったJ経験者が加入しました。彼らは監督が連れて来られたのでしょうか?

石崎 いえ違います。フロントの方です。

――でもやはり、イシさんがチームにいることも大きかったのでは?

石崎 それはどうか分かりませんが、やっぱりJを経験した選手が入ってきて、J経験者としての経験や技術をうまく伝えながら、いまは彼らがチームを引っ張ってくれていますので大きな存在です。

――試合でも練習でも声を出していますし、守備もきちんとこなしていますから、さすがだぁと思います。

石崎 手を抜かずにやっています。「自分は元Jリーガーだから」と偉そうにやられると、こちらも使えないんですけど(笑)、一生懸命やってくれています。

――Jから来たとなると、既存の選手たちは構える部分があると思います。

石崎 でも、本当にうまく溶け込んでやってくれているんじゃないかと思います。

――今まではJのレベルが実際には見えていない中で、そこイシさんや、森島選手や高地選手のような選手が加入したことで、言葉や行動から得るモノも大きいと思います。

石崎 そうですよね。やっぱり向上心があれば、話も聞けると思います。

【プロフィール】
石崎 信弘(いしざき・のぶひろ)
1958年3月14日生まれ、59歳。広島県広島市出身。1995年、NEC山形(現・モンテディオ山形)監督に就任したのを皮切りに、大分、川崎、柏、札幌、山形、中国・広州緑城U-18などで指揮を執る。Jリーグで指導歴は歴代最多。好きな食べ物と得意料理は、広島焼き。

【著者プロフィール】
obrigado・高浜確也
鹿児島県生まれ、宮崎県育ち(山口県にも10年ちょっと在住)。イベント制作会社などを経て、2002年よりフリーランスライター。サッカー取材は高校選手権の出場校やJFLなど、地元を中心に行っている。普段は代表チームのほか、遠藤保仁や興梠慎三など地元出身の選手を遠く南九州から見守り中。宮崎からJリーグ参入を目指す二つのチームの動向も、気になるところ。ライター業のかたわら東日本大震災の広域避難者支援も。趣味はお城めぐり。