「ざまぁみろクソ番組」とボビー・オロゴンは目を剥いた。『クイズ☆スター名鑑』終了を聞いた第一声である。

昨年10月、『クイズ☆タレント名鑑』の後継として4年半ぶりに復活した『クイズ☆スター名鑑』。一部のコアなファンの期待を背負い、日曜19時という激戦区で放送がスタート。しかし2月末、1月22日の放送をもって終了したことが知らされた。最終回と銘打った放送は無く、途中で打ち切られてしまった形だ。

『スター名鑑』は、「ギリギリ有名人が逃走中」「このオファー受けた?受けない?クイズ」など『タレント名鑑』時代の名物クイズを復活させつつ、新形式のクイズも作っていた。放送された全7回で過去のリバイバルがだいたい一巡し、さぁこれから新しい名物企画を……というところで終了してしまった。

あのまま放送が続いていたらどんな新企画が見られたのだろう。その萌芽を確かめるため、スター名鑑で作られた新クイズたちを振り返っておきたい。


コウメの数珠、トランプマンの右手、大助花子の唇


悪意ギリギリのタレントいじりが猛威を振るっていた『クイズ☆タレント名鑑』では、松島トモ子や内田裕也、ベン・ジョンソンなど、たびたび番組に起用されるお馴染みの面々がいる。コウメ太夫もその一人だ。

新クイズ「あいつ今ネタ何してる?」(2016年11月13日)は、一発屋芸人が現在やっている新ネタを披露し、その中に紛れた番組考案の偽ネタを見破るクイズ。長州小力やスギちゃんが偽ネタでスベるなか、トリに登場したのがコウメ太夫。終始落ち着き無く目を泳がせ、ネタ中も数珠を手放さず(理由は「オバケを除けるため」)、最新のチキショーは「氷だと思ってかじってみたら水でした」と場を混乱に陥れた。

また、トランプマンも忘れてはならない。「ベテラン芸能人できる?できない?クイズ」(2016年12月4日)では、板東英二や宍戸錠など8人のベテラン芸能人がコーラの早飲みやリフティングなどに挑戦し、スタジオでは記録が良い芸能人を当てた。トランプマンもベテランの一人として参加。徳川15代将軍を30秒で何人言えるか?という競技では、しゃべれないため筆記で解答し大幅にタイムロス。瓦割りでは何もためらいもなく商売道具の右手を瓦に打ち付けるも0枚。存在感を大いにアピールする。

また、新たなイジり対象に仲間入りしたのが宮川大助・花子。「芸能人夫婦!キスする?しない?クイズ」(2016年10月16日放送)で8組の芸能人夫婦のうちの1組として登場した。このクイズは、芸能人夫婦に偽インタビューをしている最中に突然キスをするようお願いし、スタジオではキスをするか否かを予想するというもの。林家ペー&パー子が恥じらいながら口づけを交わし、キスをする気満々の蝶野正洋が妻に拒まれたりした。

そんな中、宮川大助・花子の二人は頑なな態度でスタッフの要望を拒否。「何でここですんの?おかしいやろ?」「これはもうカットで」「番組降ろしてもいいよ」とギスギスとした空気になるも、番組はそのままオンエア。しかも懲りないスタッフはもう一度アタック。「このオファー受けた?受けない?クイズ」(2017年1月22日)で「宮川大助のお祭り男」をオファーした際に再度キスを要請し「常識ないねん、ホントな」「全然面白ないで」と説教を食らう。スタジオでは「よく2回目行けるよね!」とスタッフの勇気を讃えたのだった。

過去のデータからクイズも


「本人似顔絵クイズ!描いたの誰でしょう?」(2016年10月30日)は、その名の通り本人が書いた似顔絵を見て描いた人物を当てるクイズ。蛭子能収が自身の漫画の画風で描かなかったため終盤まで残り、「桑田佳祐?」と間違えられるハプニングも。

タレントをいじるだけでなく、「タレント出演番組数 ジャスト21」のように、膨大なデータを元にしたクイズもある。「TBS初登場クイズ」(2017年1月22日)は、スタジオゲストがTBSに初出演した際の番組名を答えさせるクイズ。オアシズやFUJIWARAは若手時代に出たネタ番組、有吉弘行は猿岩石のブレークで出演した『東京フレンドパーク』がTBS初出演だった。

さらに、ケンドーコバヤシは当時ユウキロックと組んでいたコンビ・松口vs小林での出演でカウントされ、千原ジュニアに至っては130Rの番組への電話出演がTBS初出演とされた。1コーナーのクイズ、しかも同じメンバーでは2度と出来ない形式ながら、リサーチの手が全く抜かれていないことに驚く。

過去のデータからの出題といえば、「たとえツッコミ!逆算クイズ」(2016年10月16日放送)も。フットボールアワー後藤が過去に繰り出した「たとえツッコミ」から、そのツッコミがどんな状況で出されたものか当てるクイズ。後藤本人を前にして、「ロキソニン6錠いるわ」「心の通天閣が尖りすぎや!」「1DKに15人住んでるよ!」などの名ツッコミを振り返る。番組中にロキソニンSのCMが流れるミラクルがあったことも記録しておきたい。

珠玉のチャンスクイズ


全クイズ終了後、優勝者へ賞品獲得のために出題される「チャンスクイズ」も新しいクイズが揃っていた。「神無月チャンス」(2016年12月4日)は、神無月が過去に披露したモノマネをフリなしで見て、誰のモノマネをしてるか当てるシンプルなもの。しかし、吹石一恵や桐谷美玲といったあまりにハイブロウすぎるモノマネに苦戦する。

「亀田チャンス」(2016年10月16日)は、4つの亀田式トレーニングのうち、亀田兄弟が本当に行っていた1つを見抜くクイズ。4つから本物の1つを見抜くという意味では「ミネラル麦茶チャンス」(松島トモ子出演のミネラル麦茶のCM4本からダミーの1本を当てる)と同じ形式。亀田兄弟の芝居が思いのほか自然でこちらも難問に。この頃から亀田兄弟のバラエティ出演が増えたようにも思う。

タレントいじりでもデータ駆使でもない、純粋なクイズとして出題されたのが「デスメタルチャンス」(2016年11月13日)。デスメタルバンドがカバーしたJ-POPの曲名を当てるクイズ。デスボイスで歌われる曲は原形を留めていないように思われるのだが、正解を知ってからもう一度聞くと確かにそう聞こえるという、新たなアハ体験を生んだクイズだった。

この世に未練がある限り


ゴールデンでは最終回を放送すること無く終わったが、3月4日深夜には事実上の最終回である『クイズ☆スター名鑑 特別編』が放送されている。

特別編では、スタッフが各レギュラー陣の楽屋を訪ね、ボビー・オロゴンにドッキリを仕掛けて「米俵マラソン」に出場させたVTRを見てもらう。順位を予想してもらうなどするが、最終的にはボビーがふがいない成績となったことを受け「番組に福が訪れなかった」と、レギュラー陣に番組終了を告げた。「早くない!?」「最終回やらないの?」「またレギュラーゼロ本や(FUJIWARA)」と驚きを隠せないレギュラーたち。

この「福が訪れなかった」の下りの元ネタは、『タレント名鑑』終了が発表された4年半前にまでさかのぼる。ベン・ジョンソンを西宮神社の福男選びに出走させるも、福男になれなかったことを受けて「番組に福が訪れなかった」と終了を発表していたのだ。

『クイズ☆スター名鑑』開始時も、番組冒頭にベン・ジョンソンが福男にリベンジして始まっていた。ボビーで代用することになったとはいえ、わざわざ深夜に30分の枠を取り、再び「福が訪れなかった」と一本筋を通して、ようやく『クイズ☆スター名鑑』は本当に終わることができたのだ。

番組終了を告げられたボビー・オロゴンは「ざまぁみろクソ番組」と目を剥いた。エンディングには特別編のために作られたエンディングアニメが流れ、サザエさんのエンディングのようにレギュラー陣が「R.I.P 2009-2012 2016-2017」と刻まれた墓の中に飛び込んで消えていった。

しかし、この世に未練がある霊は、人の前に姿を現すという。『クイズ☆スター名鑑』にだって、スケジュールの都合で先延ばしになった「細川たかしのトレンディエンジェルたかし」が放送されていないという未練がある。こうなったら墓場からしつこいほど蘇ってほしい。今はひとまず、R.I.P。

(井上マサキ)