フィギュアスケートのジュニアグランプリ(GP)シリーズ第3戦、日本大会は、9月9日から11日まで新横浜スケートセンターで行なわれた。日本とロシアの2強対決に関心が集まったが、終わってみれば日本女子3人が表彰台を独占した。

 ジュニアGP大会初優勝を飾ったのは、ショートプログラム(SP)首位だった坂本花織。SP(65.66点)、フリー(122.15点)、合計(187.81点)のいずれも自己ベストを更新する会心の出来だった。昨季の世界ジュニア選手権を制した本田真凜は、SP5位と出遅れたが、フリーではジュニア女子としては世界最高得点となる128.64点をマークして巻き返しに成功。合計184.11点の総合2位に食い込んだ。SP2位だった山下真瑚はフリー4位で総合3位に。ジュニアデビュー戦で表彰台に立つ快挙だった。

 今大会の一番の注目は、昨季のジュニア世界女王の本田だった。ジュニアデビューシーズンだった昨季は、怖いもの知らずのチャレンジ精神で結果を残した。初出場のジュニアGPファイナルで堂々の銅メダルを獲得すると、世界ジュニア選手権ではその勢いのまま、一気に初優勝まで成し遂げた。

 今季初戦となる日本大会でどんな演技を見せてくれるのか。周囲もそして本人も、期待が高まっていたことは間違いない。

 だがSPでは、やる気とは裏腹に、気持ちが空回りしたようだ。予定していたフリップ+トーループの連続3回転ジャンプで、2つ目のジャンプを跳ぶことができずに大きく減点され、最後の3回転ループでも着地で詰まって得点が伸びなかった。SPはジャンプのミスで55.47、首位と10.19点差の5位と出遅れた。

 SP後に涙を流した本田は、「すごくたくさん練習してきたつもりなのに、悔しい。たくさんのお客さんの前でいい演技をしたい気持ちが強くて、試合で落ち着けなかった。緊張もプレッシャーもなく、一番いい演技を見せられたらいいなと思いすぎて、自分に期待しすぎてしまった」と、気持ちの持っていき方がうまくできなかった反省を口にした。

 中1日空いたことで気持ちを切り替え、濱田美栄コーチからは「スケートが好きという気持ちだけを思いなさい」というアドバイスをもらったという。「気負わずにありのままの自分の演技を出すように心がけた」というフリーでは一転、ほぼノーミスでまとめることができた。

 フリーは好きな曲という『ロミオとジュリエット』。濃淡のピンクで配色された可憐なコスチュームで舞った。冒頭の3回転ルッツからフリップ+トーループの連続3回転ジャンプをはじめ、後半に予定していたダブルアクセル(2回転半ジャンプ)が1回転半ジャンプになった以外は、流れのあるキレのいいジャンプを見せた。まだ表現面は滑り込みが足りないようだが、ジャンプの出来栄えは見事だった。

 結果は、技術点67.86点、演技構成点60.78点をマーク。合計128.64点という高得点を叩き出して自己ベストを1.77点更新した。

「昨季の世界ジュニアではノーミスの演技で自己ベストの126点台を出して、今日は1つのミスはあったんですけど、128点台が出せたので、すごく自信になりました。130点という目標も、しっかりジャンプを跳べていたら達成できていたと思います。ショート(SP)の70点という目標もできると思っているので、次の試合では200点を目標にして、今回悔しかったことをすべて(修正して)、出せるようにしたいです」

 本田の次戦は21日から行なわれるジュニアGP第5戦のスロベニア大会。この試合には、昨季のジュニアGPファイナル女王のポリーナ・ソツコワ(ロシア)と、ジュニアデビュー戦で総合2位となり、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)にチャレンジ中の紀平梨花が出場する。確実に表彰台に立てるかどうか分からない厳しい戦いも予想される。

「次の試合はメンバーがすごい。なので、今季初戦だったこの試合(日本大会)で優勝して楽にいこうと思っていたんですけど、もう次の試合で頑張るしかないなという気持ちです。とにかく思い切ってできたらいいなと思います」

 昨季は挑戦者として、目の前の試合に無我夢中で向かっていけばよかった。だが今季初戦では、世界ジュニア女王になったプライドと期待が、冷静な演技の邪魔になったに違いない。でもそれはトップスケーターになるためには誰もが通る道のりだ。そんな失敗を繰り返しながら、成功をつかんでいくことが必要になってくる。

「自分がジュニア1年目だった昨季、ジュニア2年目の(樋口)新葉がどんな気持ちだったのか、すごく分かりました。今季1戦目にしてこんなことを言っていてはいけないですが、もっと自分に自信を持って、狙いすぎないように戦っていきたいなと思いました。(フリーについては)まだまだ伸びしろもたくさんあって、いま自分ができる一番のジャンプ構成ではないので、この構成で目標の130点を達成できたら、次のステップについて考えていきたいと思っています。

(総合2位という結果は)すごく悔しいんですけど、いろいろ経験できて、すごく自分自身が成長した大会になったかなと思います。国際大会でショート5位からのスタートは初めてだったので、もうどうしようという気持ちで一杯だったんですけど、何とかファイナルに行けるような順位につなげることができたのでよかったです。やっとアスリートとしてスタート位置に立てたのかなと思います」

 2年目のジンクスに惑わされることなく、「失敗を成功につなぐ」経験をしっかり生かせるかどうか。本田のさらなる成長に期待したい。

辛仁夏●文 text by Synn Yinha