開会を告げる車イスロケット!同情するでも持ち上げるでもなく、ただ面白い試合を願って見守るリオパラリンピックの巻。
車イスなので、むしろ跳べます!

熱い夏が過ぎ、残暑がやってきた。台風来襲、新型iPhone発表、ウチの愛の入籍を日刊が暴露、いくつものビッグニュースが駆け巡る中、ついにリオパラリンピックが開幕しました。4年後は東京でコレをやるわけですから、実施で学べる機会を逃すのは勿体ない。過去の大会以上に、気持ちを高めて見守っていきたいもの。

それにあたり、自ら意識しておきたいのは、プラスの方向にもマイナスの方向にも傾かず、常にニュートラルでありたいということ。「かわいそう」とか「大変だ」という同情はしないし、「頑張ってる」とか「努力に感動」とか無闇に持ち上げることもしない。オリンピックを見るのと同じ気持ちで、どんな面白い試合が見られるのか、それだけを気にしていきたいと思います。

事前の特集番組などでよく見た切り口としては、「片腕がないのに左右のバランスを取るのがスゴイ」とか「目が見えないのにこんなスピードで走るなんてスゴイ」とか、「ナイのにスゴイ」というものがやはり多かった。僕もそうした感情に囚われることはありますが、そこから解き放たれるような大会にしていきたい。そう思います。

「ナイ」のは誰とて同じこと。鳥が人間を見れば、「飛べへんなんてカワイソウやな」と思うでしょう。魚が人間を見れば、「ヒレがないから半分溺れとるがな」と思うでしょう。チーターが人間を見れば、「2本足で懸命に走ってらっしゃる」と思うでしょう。ナイとかアルとかは比較の問題に過ぎず、そこをことさらに意識するのは大して意味がないはずです。「ナイのにスゴイ」に感動したり、それを意義のように考えるのは失礼でしょう。

ナイのは誰もが同じ。ただ、そこを知恵と勇気で埋めていく。そうした人間の進化というのは、オリンピックもパラリンピックも変わらないもののはずです。それが見えるような大会であってほしいし、それに気付くような観戦でありたい。オリンピックほど積み上げられた知見がないぶん、むしろ「気付き」の余地はパラリンピック競技のほうが多いはず。楽しみが、より残されているはずです。

気に入ったエピソードのひとつに、自転車競技の藤田征樹さんの義足作りの話があります。藤田さんは事故で両足を失っているため、義足をつけて自転車を漕ぐことになります。装具士とともに義足を作り上げる過程で、最初は人間の足のような形をした義足をつけていたそうです。しかし、あるとき「両足ともないんだから、人間の足の形してる必要、ないよね?」と気付いたと言います。それは「両足がナイ」という不自由から、「自転車を漕ぐためだけに洗練された理想の足を持つことができる」という無限の自由へと、世界が切り替わった瞬間だったと思うのです。

↓現在は足の部分を完全になくし、空気抵抗を減らすための細身の形状になっているとのこと!


いわゆる高速義足だな!

そのうちペダルすら取り込んだ、もはや足なのかどうか微妙なモノも生まれそう!

何の世界でもそうですが、気付くまでは誰も考えなかったことが、気付いた瞬間に世界すべてを変えるということがあります。トイレットペーパーを取り付けるパーツだって、昔はバネつきの芯みたいのを使ってましたが、あるときから両サイドに出っ張りがある形に変わったじゃないですか。そっちのほうが断然便利で使いやすいものに。一番最初からそうすることもできたのに、気付かなかった形に。

パラリンピック競技には、そうした「気付き」がまだまだ秘められているはず。「そんな発想があったのか!」という「アル」ものに気付いていけたら、より楽しむことができるのではないか。速さや強さでは必ずしもオリンピックを上回るものではないとしても、誰もが同じ地平で同じ位置から競い合える部分は、きっとある。

僕にとっては、面白いか面白くないか、大事なのはそれだけです。

↓パラリンピック開会式は、車イスでスロープを滑り降り、大ジャンプするパフォーマンスからスタート!


「感動」の遥か斜め上まで飛んでいったwww

日本ならコレ出川がやらされる系のヤツやwww

人間ロケット Spaceways [DVD]

価格:1,231円
(2016/9/8 10:51時点)
感想(1件)



全体的に演出の予算をカットされた感の強い開会式。ペーパークラフトで作った、図画工作のカモメが飛んだり、踊るでもなくひたすらダラダラするビーチの風景を表現したり、現地にいたら「金かe…」という言葉がノドから出そうになる瞬間もあったかもしれません。

しかし、どんな演出も選手たちにはかなわない。先頭で難民選手団が入場してきたとき、演出のことは一回頭から吹き飛びました。オリンピックの人間賛歌が、より強くパラリンピックでは感じられる。入場してくる選手たちの晴れがましい笑顔と、遊び心。スマホで写真を撮り、身体に書いたメッセージを故郷に送り、オリンピック以上にこの場を楽しもうとする気持ちがイイ。いろんなことがあるけれど、イイ日はきっとくるのだ、という希望がイイ。

そうした選手たちの姿を前にすれば、すべては些末なこと。ブラジル人のダンサーが、最初は勢いよく踊っていたのに、時間とともにダレていったことも、さほど気になりません。ついつい「お前も頑張れよ…」と言いたくなりますが、1時間踊るのはラクじゃないのだから、ダレるのも仕方ない。辛いことはみんな辛いし、疲れることはみんな疲れる。それをもニュートラルに受け入れていこうじゃないかという、3周まわって心温まるブラジルからのメッセージなのだ…そんな解釈で見守ります。

↓時間が経つごとにダレていき、踊って迎える気などなくなってくる地元ダンサーたち!

オイ、やる気!やる気!

普段よりむしろ頑張るタイミング!

↓しかし、さっきまで棒立ちだったダンサー連中は、一番最後にブラジル選手団が入ってきた途端に元気になる!

これが外人クオリティだなwww

後半の国のとき、ダレてたブラジル人が急に元気になったwww

↓なお、日本選手団入場では貴賓席でオジサンがめっちゃ元気に踊りました!

これはあとで説教だな!

楽しむのと調子に乗るのは違うぞ!

↓選手団が入場し終わったあとは、義足のパラリンピアンとロボットがダンスするという前衛的演目も!

ロボット業界:「なるほど、了解した!」
ロボット業界:「我々のチカラを借りたいと」
ロボット業界:「もっとめっちゃ動くヤツを」
ロボット業界:「もっとグレイトにパワフルなヤツを」
ロボット業界:「作れということですな!」
ロボット業界:「アトムみたいに火を噴く義足とか」
ロボット業界:「ライダーマンみたいな義手とか」
ロボット業界:「コブラのサイコガンとか」
ロボット業界:「我々の技術とコラボしたいと!」

※たぶん違います。
※その意欲はロボコンで発揮してください。
※動力源・火器の搭載は禁止です。

ROBOCON Magazine (ロボコンマガジン) 2016年 09月号 [雑誌]

価格:1,080円
(2016/9/8 10:52時点)
感想(0件)



五輪の閉会式につづき、またしても雨に見舞われたセレモニー。会場は映像でもわかるほどの土砂降りに。エラい人はずぶぬれになり、選手たちもずぶぬれになる。聖火リレーの段ではますます雨が強くなり、床もびっちゃびちゃ。リレーするランナーたちは、ある人は雨で足を滑らせて転んだり、ある人は雨の中を車イスでスロープをのぼらされたり、いかにも大変そうな状況になります。しかし、雨が降るのは当たり前のこと。転んだら起き上がるだけだし、スロープが滑るならいつもより慎重に進めばいい。「ただ、それだけのことだ」という強さ、自然さ。

暮らしの中の「当たり前」は当たり前として受け止め、本当にスゴイところを驚きで受け止めていきたい。改めてそう思わされる、セレモニーでした。大会として区別されていると、どうしても別物というか、「大変ですねぇ」という気持ちになってしまいがちですが、やがてはパラリンピックもオリンピックもひとつとなっていくべきもの。コチラも無用な気遣いはなく、普通に見ていきたい。

競技があり、ルールがあり、世界一がいる。

ただ、そういうものとして。

↓転んだら、立ち上がる!ただ、それだけのこと!

パラリンピアンも、普通の人も、年を取れば同じ婆様だな!

みんな不便になるし、みんな助けが必要になる!

ちょっとタイミングが違うだけで、根っこは何も変わらない!

リオパラリンピックを楽しむための完全観戦ガイド

価格:1,080円
(2016/9/8 10:53時点)
感想(0件)



感動するなら、死力を尽くした奇跡の勝利でしたい!