早いもので、12月から始まったこの連載も、今回で最終回となりました。

「30代の働く女性達に伝えたいことを」とご依頼いただいてから、思いつくままに書き連ねてまいりましたが、、過去の記事を振り返ると、私が一貫して皆さんに伝えたかったのは、「女たちよ、タフであれ!」ということだと思います。

ナチュラルボーン・タフは存在しない

この原稿を書いている本日の朝、ニュースでは金メダルを獲得したオリンピック女子レスリング3名の映像が何度も何度も流れていました。伊調馨さんの、女性初の金メダル4冠という偉業にも目を見張りましたが、3名とも形勢不利な状況から立て直し、逆転して金メダルを勝ち取ったその瞬間を捉えた映像を見た時、思わず箸を動かす手が止まりました(朝ごはん中でした)。

彼女たちの技術力、体力、戦術もさることながら、何よりもその「メンタルの強さ」に圧倒されたからです。世界中の人が見ている大舞台で、日本を代表して多くの人々の期待を背負い、負けていてもあきらめずに勝ちにいくその精神力。きっと死ぬほどきつい練習と並行して、己のメンタルトレーニングにも励んできた結果でありましょう。

「オリンピックに出るような選手だから、もともとメンタルも強いのではないか?」と、われわれ凡人は思いがちですが、「ナチュラルボーン・タフ」な人間などおりません。コーチやメンタルトレーナーによる指導、もしくは自分自身で意識して続けたトレーニングにより、彼女たちは強靭な精神力を身に着けていったのだと思います。勝負の世界で生きる者にとってそれは必須スキルだからです。

そして、オリンピック選手ではないわれわれも、仕事やプライベートのありとあらゆる場面で、「強い精神力」は必要です。わかりやすいライバルはいなくても、勝ってメダルがもらえるわけじゃないけど、私たちは一番厄介な敵といつも戦わなければいけないからです。

一番厄介な敵とは?

その一番厄介な敵とは、「自分自身」に他なりません。パワハラ上司顔負けにいつも不安や恐怖を与え、ダメ出しをし続け、もう何もしたくなくなるほど追い込み、ありとあらゆるチャレンジや真っ当なコミュニケーションを阻害するのはいつだって「自分の内なる声」です。

「やっぱり私はダメなんだ」「私に○○なんてできるはずがない」という内耳の声に洗脳され、私たちは自身の成功や成長や幸せのチャンスを逃しまくります。そして、それらに唯一抗えるのは、自身の洗脳を一蹴する「タフな精神」であり、「メンタルスキル」なのです。

タフなメンタルをつくる11ヵ条

「メンタルスキル」は「スキル」ですから、トレーニングにより習得が可能です。トレーニングという大げさなものでなくても、いつもの考え方や行動の習慣を変えるだけで効果がありますので、以下ぜひトライしてみてください。

【1】高くて理想的な目標だけを追いかけず、小さな目標を散りばめて遂行する
【2】「自分の内なる声」をポジティブな言葉に変換する
【3】失敗ではなく、成功にフォーカスし、「なぜ成功したのか?」を分析する
【4】「認知の歪み」を修正する。ありのままを見る癖をつける
【5】不安や恐怖が訪れた時のパターンを分析し、原因を突き止める
【6】周囲の人全員から好かれようとしない
【7】やりたいと思っていることを発信する
【8】弱っていると感じた時は休む
【9】イヤなことはイヤだと言う。要らない人間関係は捨てる
【10】「弱いところや不得手があって当たり前」と大らかに考える癖をつける
【11】要るものと要らないものを丁寧に選択する。要らないものには関わらず、忘れる癖をつける

一部ですが以上です。

他にも、メンタルは身体と直結しているので、運動や食べ物の工夫、瞑想などを取り入れるといいと言われていますし、ひとりで難しければトレーナーやカウンセラーをつけたり、パートナーや親しい友人にチェックしてもらったりしてもいいでしょう。

「いつでもタフであれ」と言いたいわけではない

誤解しないでいただきたいのは、「いつでもタフであれ」と言いたいわけではないということです。メンタルが弱っている日もあれば、ニュートラルな日もある。それが人間です。

ただ、「30代からの女人生」は目まぐるしいほどいろいろございます。そして、タスクや選択肢が多い分、女性はいざという時に「強い心」を持てるかいなかで人生が変わってくる。

私自身が30代の頃、「今だ!」という時に「強い心」を持てず、大切な人たちとお別れせざるをえませんでした。後悔はありますがその経験を糧に、さらには加齢にも助太刀され、今では百獣の王クラスのメンタルを保持しております(笑)。

人生で勝負の瞬間に、愛する人を、愛する仲間を、愛する環境を守らなければならないその時にこそ、「強い心」を武器に立ち向かってゆきましょう。

(川崎貴子)