編成の前後で“顔”が異なる富士急行の2000系「フジサン特急」(2009年8月、恵 知仁撮影)。

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国鉄165系急行形電車の最後の生き残り、富士急行2000系「フジサン特急」が運行を終了。昭和30年代からの長い歴史を持つ国鉄の急行形直流電車が、終わりを迎えます。

元はJR東日本のジョイフルトレイン

 山梨県の大月駅と河口湖駅を結ぶ富士急行は2015年12月9日(水)、「フジサン特急」として活躍してきた2000系電車の運行を、2016年2月7日(日)で終了すると発表しました。

 この2000系電車は、2002(平成14)年2月に富士急行線で運行を開始。その前は、全車グリーン車のジョイフルトレイン「パノラマエクスプレスアルプス」として走っていた、JR東日本の車両でした。

 その名の通り、運転席を2階へ上げることで確保された前面の展望室、広い窓、また個室やラウンジといった豪華な設備が特徴で、富士急行は「移動中の車内からも富士山の美しさ・雄大さをゆったりと堪能してもらいたい」との思いから、JR東日本よりこの車両を導入したといいます。

 富士急行へやってきた「パノラマエクスプレスアルプス」は、車体に富士山をキャラクター化した「フジサン君」が描かれ、約14年に渡って「フジサン特急」として活躍してきました。しかし同社によると、車両の老朽化やインバウンドを中心とする利用者増加に伴い輸送力を増強するため、運行を終了することにしたそうです。

元々はオレンジと緑の国鉄急行形電車、その最後の生き残り

 この2000系「フジサン特急」はJR東日本「パノラマエクスプレスアルプス」になる前、中央本線の急行「アルプス」などとして走っていた国鉄の急行形電車でした。

 165系という、オレンジと緑のツートンカラーを身にまとい、各地を走っていた“国鉄の急行電車”を象徴する車両のひとつで、1963(昭和38)年に登場。東海道本線の急行「東海」や「比叡」、また現在の快速「ムーンライトながら」の前身である、東京駅と大垣駅(岐阜県)を結んでいた夜行普通列車でも使用されていました。

 この165系急行形電車の最後の生き残りが、この富士急行2000系「フジサン特急」です。大きく改造されていますが、展望室構造ではないほうの先頭車両に、その面影が強く残っています。

 またこの2000系「フジサン特急」は、直流の電気だけを使って走る国鉄の急行形電車、最後の生き残りでもあります。

 よってこの運行終了は、昭和30年代からの長い歴史を持つ「国鉄急行形直流電車」、その終わりでもあります。

 これに伴い、富士急行は2015年12月19日(土)から2016年2月7日(日)の引退まで、「フジサン特急2000系さよならキャンペーン」を実施。記念乗車証の配布や運転台見学イベントなどが行われる予定です。

 なお2000系電車の引退以降、「フジサン特急」は元小田急ロマンスカー「RSE」の8000系電車、元JR東海の371系特急形電車で運行される予定です。