それはもちろん、今回のカンボジアにも言えること。引き分けは彼らにとって、文句の付けようがないほど、上々の結果だ。ただし、すでにカンボジアが2連敗でスタートしたことを考えると、シンガポールよりも「あわよくば勝点3」のギャンブルに出る色気は強いかもしれない。
 
 ワールドカップやアジアカップも含めて、サッカーのリーグ戦の文化には、「勝点3が目標とは限らない試合」がたくさんある。引き分けでもOK、あるいは得失点差の計算から、2点差以内の負けでもOK、といった試合も少なくない。そして、それは戦術の選択に大きな影響を与える。
 
 そのような状況に応じた目標を、試合が始まる前に、”両チームの視点から”考えてみることが大切だ。
 
 前回の試合を振り返れば、日本は勝点3がノルマであり、シンガポールは引き分けが目標だった。それを想定していれば、シンガポールが攻撃を捨てて守りを”徹底”し、後半になって日本が焦り始める試合展開は、ごく当たり前に想像できるケースだった。
 
 カンボジア戦でも、同じシミュレーションが必要になる。
 
 両チームが目指す結果。それは試合を観るうえでの大前提だ。観戦の前に、ぜひ想定しておきたい。
 
【PROFILE】
しみず・ひでと/1979年生まれ、岐阜県出身。プレーヤー目線で試合を切り取る気鋭のライター。観戦力にフォーカスした著書が好評で、近著に『サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点』(東邦出版)。