福田正博フォーメーション進化論

 日本代表は東アジアカップを最下位で終えた。先制点を奪いながらも北朝鮮に1−2で逆転負け。勝たないと優勝の芽がなくなる韓国戦は1−1の同点のまま試合終了。中国戦も1−1で引き分けた。

 この結果には正直失望させられたし、収穫は少なかったと言わざるを得ない。高温多湿の中国・武漢で、厳しいスケジュールの大会だったにせよ、代表は活動できる時間が限られているのだから、もったいない時間の使い方をしてしまったと言うべきだろう。

 大会前、ハリルホジッチ監督は「タイトルを狙いながら、新しい選手の発掘もする」と表明していたが、そのどちらもが中途半端なまま終わった印象は拭えない。

 メンバー編成について、当初は若い選手にチャンスを与えるとしていたが、蓋を開けてみればメンバー入りした若手は20歳の浅野拓磨と22歳の遠藤航だけ。

 若手にシフトすることなく、代表経験が豊富とは言えない25、26歳の中堅選手を多く連れて行ったのは、優勝を狙うという考えが強かったからではないだろうか。

 それにもかかわらず、試合で勝利を追求する姿勢が十分に見られたかといえば、それも足りなかった。また、連れて行った選手全員を起用してテストしたわけでもない。

 結果論になるが、事前に気候条件やスケジュールが厳しいことはわかっていたのだから、20歳前後の若手を連れて行って経験を積ませた方が有意義な時間になったのではないかと考えてしまう。

 そして、なにより残念だったのが、日本代表としての気概を、選手たちからほとんど感じられなかったことだ。

 初めて代表入りした選手であれば、どうしても自分のことに集中してしまうので「国を代表している」という自覚を持つことが難しいだろう。そこは仕方がない面はあるが、それ以外の代表経験者たちの「日本代表」としての意識が希薄に見えた。

「貪欲に勝利にこだわる」、「日本のすべてのサッカー選手を代表して戦う」というメンタリティの部分で、海外組に依存してきたことが浮き彫りになったと思うし、ハリルホジッチ監督の狙いや戦術が、選手たちに浸透していない印象もあった。

 それが顕著だったのは、2戦目の韓国戦だった。

 ハリルホジッチ監督としては、過密日程や暑さ、メンバーのコンディションを考えて堅実な戦い方で負けるリスクを減らし、少ないチャンスでいかに勝つかを探った面もあっただろう。そして、残り20分を切ったところから、勝ち越し点を奪うために浅野や宇佐美貴史、川又堅碁といった前線の選手を投入していった。

 しかし、韓国戦で勝利しなければ優勝の可能性が消えるにもかかわらず、ピッチでプレーする選手たちからは、リスクを冒してゴールを奪うという気迫は感じられなかった。

 そして、試合後の選手たちからは、「守備は改善された」といったコメントが出ていた。つまり、代表のユニフォームを着て公式戦に臨みながら、試合後はまるで親善試合を終えたかのように、「自分たちのできたこと」を口にしていた。

 これがワールドカップの本大会だったらどうか? 勝たなければ敗退が決まるグループリーグの3戦目を引き分けで終えた選手たちが、「守備はやられなかった」と言うだろうか。

 優勝できなくて悔しがって泣けとは言わないが、もっと勝利することに対して貪欲になり、死に物狂いでやってほしかった。そういう必死さが伝わってこなかった。

 日本代表というのは、どんな大会であれ常に結果を求められる。日本代表のユニフォームを着たら、選手にはその意識をもっと強く持ってほしいというのが、今回の東アジアカップで感じたことだった。

 東アジアカップのみを見れば、ハリルホジッチ監督への評価は厳しいものにならざるをえないだろう。もしも日本人監督が指揮していたら、今回は誰も擁護してくれず、辞任するぐらいの結果なのではないかと私は思う。

 もちろん、すぐに監督交代すべきと言うつもりはない。私は常に「ひとりの監督に長く任せた方が、チームは成熟していき、結果につながる」と考えているからだ。たとえば、ドイツ代表のレーヴ監督は、ヘッドコーチ時代も含めると約10年間、チームを指揮している。

 ただ、「時間が欲しい」と言うハリルホジッチ監督に任せるにしても、結果を残すのがプロの監督というもの。成果を見せてくれないと信頼は揺らいでくる。

 今大会の数少ない収穫は、初めての代表招集で次へとつながる存在感を発揮できた武藤雄樹と遠藤航だ。海外組が招集されても即レギュラーというほどの強烈なアピールではなかったが、守備的MFやセンターバックもできる遠藤は、サイドバックを務めたことでポリバレントな選手としての評価を高め、武藤は浦和で見せているアタッカーとしてのプレーを代表でも発揮できた。

 ともに、海外組が加わった代表ではベンチからのスタートになるだろうが、彼らのような新戦力が出てこなければ競争は生まれない。そして、チーム内の競争が日本代表全体の底上げにつながる。

 海外組を加えた"真の日本代表"が、9月から再開されるW杯アジア2次予選でどうレベルアップし、どんなサッカーを見せてくれるのか楽しみにしたい。

福田正博●解説 analysis by Fukuda Masahiro