昨年はルーキーの大瀬良大地(広島)、石川歩(ロッテ)の両投手が新人王に輝いたが、今年は開幕5連勝を果たした高木勇人(巨人)が新人王最右翼として名乗りを挙げている。はたして、このまま高木が新人王レースをぶっちぎるのか? 解説者7人に2015年の新人王レースを占ってもらった。
(選手の成績はすべて5月5日現在のもの)

■田口壮氏(元オリックス、カージナルスほか)

「巨人のルーキー・高木勇人(投手/6試合、5勝0敗、防御率1.71)は素晴らしい投手ですね。なかでもスライダーは独特の曲がり方をして、打者にとっては相当厄介なボールだと思います。具体的に言うと、彼のスライダーは一度止まってから一気に曲がり始める印象があります。そのためタイミングが取りづらく、おまけにキレもあるのでバットに当てるのも難しいと思います。僕の中ではケリー・ウッド(※)に匹敵するスライダーの持ち主だと思っています。このピッチングを続けていけば2ケタ勝利は確実でしょうし、新人王は間違いないと思います。
※ケリー・ウッド...98年にカブスでメジャーデビューを果たし、同年13勝6敗で新人王を獲得。スライダーを武器に三振の山を築き、1380イニングで1582個の三振を奪った。メジャー通算86勝75敗、63セーブ。

 一方、パ・リーグは......ちょっと名前が出てこないですね。これから活躍する選手は出てくるかもしれないですが、現時点で思いつく選手がいません」

■大塚光二(元西武。昨年まで日本ハム守備・走塁コーチ)

「セ・リーグは巨人の高木勇人の活躍が光ります。スライダーを軸に、横の揺さぶりで勝負できる投手で、恐れずにインコースを突ける度胸も持ち合わせています。特に右打者は踏み込みたくても簡単に踏み込めない。対戦を重ねないと、攻略するのは難しい投手だと思います。

 パ・リーグは楽天の福田将儀(外野手/打率.265、0本塁打、6打点、5盗塁)に期待しています。俊足好打の外野手で、守備力も高い。タイプ的には巨人の長野久義に似ていると思います。一軍の試合に出はじめた頃はバッティングに課題があったのですが、ようやくプロの攻めにも慣れてきた印象があります。このまま順調にいけば、3割もしくは3割近い成績を残すと思います。野手で新人王を獲るのは容易なことではないですが、彼ならやってくれそうな気がします」

■野口寿浩(元ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜)

「現時点でセ・リーグは巨人の高木勇人が断トツだと思います。ボールに力があるし、あれだけクロスステップで投げられると、右打者は相当打ちづらいと思います。何よりマウンド度胸が素晴らしい。どの打者に対しても逃げることをしない。それにホームランを打たれたにも関わらず、マウンドで清々しい表情をしていました。あの顔を見て、肝が据わっていると思いましたね。

 パ・リーグは、現時点で一軍登板はありませんが、日本ハムの有原航平(投手/二軍成績/4試合、0勝1敗、防御率1.13)を推したいです。ファームでは結果を残していますし、能力の高さはピカイチ。07年に阪神の上園啓史が8勝を挙げて新人王を獲得したのですが、彼が一軍で投げたのは5月中旬からなんです。そういう例もあるので、可能性は十分あると思います」

■本間満(元ソフトバンク)

「セ・リーグは巨人の高木勇人しかいないでしょう。新人にも関わらず、インコースにきっちり投げ切れるのがすごいです。変化球のキレもいいですし、ルーキーとは思えない堂々としたピッチングが光っています。

 パ・リーグは飛び抜けた選手はいませんが、ソフトバンクの5年目・牧原大成(内野手/打率.292、0本塁打、2打点、2盗塁)に期待したいです。昨年ファームで最多安打を記録した実力者で、足の速さとミートのうまさが魅力の選手です。併殺が少なく、相手にとっては嫌な打者だと思います。選手層の厚いソフトバンクの中で試合に出るのは簡単なことではありませんが、出場機会が増えれば一気にチャンスは広がると思います」

■藪恵壹(元阪神、アスレチックス、楽天ほか)

「開幕5連勝をマークした巨人の高木勇人が現時点では大本命だと思いますが、DeNAのクローザーとして頑張っているルーキーの山崎康晃(投手/16試合、0勝1敗11セーブ、防御率2.76)にも十分チャンスはあると思います。開幕直後はバタバタしたところがあったのですが、投げるたびに自信を深め、今ではチームに欠かせない存在になりました。チームも好調ですし、セーブ王のタイトルを獲れば一気に大本命になるでしょう。

 パ・リーグは難しいですね。明治大からオリックスにドラフト1位で入団した山崎福也(投手/3試合、0勝1敗、防御率5.25)に期待していたのですが、まだ結果を残していません。ただ、彼は実戦向きの投手だと思いますし、一軍で経験を積めば勝てる投手になりそうな感じがします。この先、一軍で投げるチャンスがあれば、結果を出すような気がします」

■山崎武司(元中日、オリックス、楽天)

「野手が新人王を獲るには、まずレギュラーになって規定打席に到達しなければならない。1年目の野手がレギュラーを獲るのはなかなか難しいんですけど、期待を込めて広島の野間峻祥(外野手/打率.239、1本塁打、5打点、盗塁2))を挙げたいと思います。私はバッターを見る時、どれだけバットを振れるかに注目するのですが、野間はしっかり振れる選手です。体は決して大きい方ではないですが、足が速く、ミート力もある。3割を打てる力は十分にあると思います。

 一方のパ・リーグは、日本ハムの2年目・岡大海(外野手/打率.250、2本塁打、12打点、3盗塁)です。野間同様にバットがしっかり振れる選手です。ただ、まだバッティングの基本がわかっておらず、身体能力の高さだけでプレイしている印象があります。もし考えてバッティングをするようになれば、どんな選手になるのか。未知の可能性を感じます。パンチ力があって、足もあるので、二塁打、三塁打を多く打てる選手になってほしいですよね」

■与田剛(元中日、ロッテなど。第2回と第3回WBC投手コーチ)

「セ・リーグは広島の野間峻祥が面白いですね。守備範囲の広さ、肩の強さ、足の速さとどれをとっても一級品です。打撃面ではまだ脆(もろ)さはありますが、プロの配球、スピードに慣れてくれば結果を出すと思います。能力の高さは、今年のルーキーの中で抜けています。

 パ・リーグはオリックスの西野真弘(内野手/打率.190、1本塁打、8打点、盗塁1)です。身長167センチと小柄な選手ですが、守備もうまく、足も速い。強力なオリックス打線の中で、彼のような選手は重宝されると思うんです。甘い球が来れば一発を打つ力もありますし、野球センスに溢れた選手です」


 セ・リーグは開幕5連勝を達成した高木勇人を予想する解説者が圧倒的に多かったが、野間峻祥や山崎康晃といった一軍で実績がある選手たちの巻き返しに期待したい。一方のパ・リーグは本命不在の状況で、解説者の意見も分かれた。つまり、これからの活躍によって誰にでもチャンスがあることを意味する。シーズンはまだ始まったばかり。新人王の資格を持つ選手たちのこれからの活躍に注目だ。

島村誠也●文 text by Shimamura Seiya