ダサイタマというレッテルを貼られながら、埼玉は日本で5番目に人口の多い県に発展した。その繁栄は東京が南隣にあるからで、神奈川や千葉、山梨も同様の恩恵を受けているといっていい。

九州で一番都会なのは福岡であることに異論はないだろう。しかしその西隣にある佐賀は、恩恵を受けるどころか、エナジーを吸い取られている感がある。

県南部に筑紫平野が広がり水田率は九州一。それ自体はよいことだが、同じ九州人からも「佐賀って田んぼばかりだよね」という印象を持たれている。
吉野ヶ里遺跡を見れば分かるように、弥生時代には強大な権力がこの地に成立していたのだが――。

吉野ヶ里遺跡(Dick Thomas Johnsonさん撮影、Flickrより)

ネタにもされない佐賀の悲哀

この事実を誰よりも深く自覚しているのは、当の佐賀県人かもしれない。

2ちゃんねるのスレッド「佐賀出身のワイがよく言われることで打線組んだw」には、全国的な知名度の低さを嘆く声が投稿されている。ちなみに「打線」は以下の通り。

1. (中)修学旅行九州で行ったことあるよ!けど覚えてない(笑)
2. (遊)佐賀ってどこ?
3. (一)佐賀って何あるの?
4. (投)あ!はなわの!SAGA(笑)
5. (捕)はなわの歌って本当なの?
6. (三)滋賀?
7. (二)佐賀北凄かったよね!
8. (左)佐賀の人初めて会った(笑)
9. (右)行ったことあるけど何もないよね(笑)

これには続々と共感の声が集まった。

「ワイ『出身?佐賀やで!』相手『そう...(無関心)』」
「ワイも佐賀民だけど存在がイマイチ認知されてないのは辛いンゴ...」
「佐賀出て5年になるけど、言うたびに実感するンゴ...」

県内で人口7万人以上の都市は佐賀市、唐津市、鳥栖市の3つ。このうち唐津市は福岡市地下鉄が乗り入れているし、鳥栖市の市外局番は久留米市と同じ「0942」。いわば福岡勢に最前線を次々と攻略されている。

もっとも唐津市周辺は佐賀藩とは別の「唐津藩」だったし、県最東端の基山町と鳥栖市の東半分は対馬藩の領地だった。


佐賀県の地図(編集部作成)

鳥栖市は九州自動車道・長崎自動車道・大分自動車道が接続する交通の要衝。人口30万の久留米市は南隣だ。市内にある鳥栖プレミアム・アウトレットには福岡県からも大勢の来場客がやってくる。スポーツファンにとってはJ1サガン鳥栖の本拠地として馴染み深いだろう。
佐賀市よりもメディアの露出は間違いなく多い。

「サガン鳥栖に鳥栖プレミアムアウトレットやな」という書き込みに対し、「それ言うの福岡の人間だけやで」という反応があるのも、独自の歴史を歩んだ&東に偏りすぎているという事情があるからだろう。

「唐津周辺が完全に『僕たち福岡県民みたいなもんです。佐賀市?知らん』な感じ」
「鳥栖は福岡意識高くても仕方ない気がする。通勤通学も余裕だし」
「悲しいけど佐賀市より鳥栖市のほうが目立ってる」

守勢に立たされている佐賀県人。その性格を一言で表すなら「まじめ」に尽きる。
2009年夏の甲子園に伊万里農林が出場した際、主将の吉永圭太さんは選手宣誓を行ったが、暗記ではなく読み上げだった。

「佐賀と言えばあれやな、伊万里農林のカンペ宣誓」

伊万里をはじめとする佐賀の本流からすれば、唐津や鳥栖が福岡ぶっていることに、もの申さずにいられないようだ。

「唐津・鳥栖『ほぼ福岡だからw一緒にするなww』」
「ワイ伊万里市民『いやお前らも同じ佐賀だろ粋がんな』」
「自分で福岡と名乗るなんてワイには考えられへんな」
「福岡意識高くてどうすんだよ。所詮佐賀だぞ」