明日、日本に帰るのか……。 そう思うと、不意に涙がこみ上げてきた。眼下に広がる基隆港の灯りが、見る見る内にボヤけていく。 まさか台湾を離れることが、ここまで寂しくなるとは。自分でも予想していなかった、初めての感情に戸惑ってしまう。2010年10月、私、大久保麻梨子の人生初となる台湾ひとり旅の最終日。 九份という町で、私は台湾に移住することを決意した。 私がなぜ台湾に興味を持ったのか。話は3カ月前の7月