もう一つの軸は、宗教と政治の関係である。ルソーが説いた政教分離の原則は、世俗の権威と内面の信仰を切り分けてこそ一般意志が成り立つ、という洞察に支えられている。だが、その原則は日本という土壌でどう働くのか。日本は近代を移入するとき、それを「自国に合うよう」つくり変え、大日本帝国を組み立てた。近代化しながらも、独特の「日本的な精神構造」を温存したまま来てしまった。大江健三郎が「あいまいな」と呼んだその構造のもとで、はたしてルソーの一般意志は成り立つのか。マザーの問いはここに向かう。
藤田省三『天皇制国家の支配原理』(第2期マザー・テラサワ講義録2巻)では、日本の天皇制を、「権威」はあっても「権力」はなく、「情」を基軸とする国家運営として捉え直した。その視座は、ルソーの政教分離という補助線を、現代日本の支配原理そのものへとつなぐ。
講義は2020年8月、コロナ禍で人と人とが距離を取らざるをえなかった時期に行われた。「社会契約」という、人が集まって共に生きるための取り決めを、人が集まれない状況下で読むという逆説。講義の終盤、マザー・テラサワは、一般意志という概念をひとつの枠組みとして固定してしまってよいのか、その言葉そのものを問い直すところから考え直す必要があるのではないか、と投げかける。性急な結論ではなく、問いを開いたまま手渡すこの姿勢は、分断のさらに深まった現在においてこそ重みを増している。

【書誌情報】
『第2期マザー・テラサワ講義録5巻-ジャン=ジャック・ルソー「社会契約論」』
著者 : マザー・テラサワ(聞き手:しまだだーよ)
定価 : 税込880円 (本体800円+税)
体裁 : PDF版・160ページ(スマホ表示に最適化)/Kindle版あり
一般発売日 : 2026年7月20日(月)
発行元出版社: TRASHBOOKS
販売場所 : 〈Amazon〉https://amzn.asia/d/03LrpsgK
〈TRASHBOOKS〉 https://trashbooks.base.shop/

【「マザー・テラサワ講義録」とは?】
「哲学芸人」マザー・テラサワが、主に哲学・思想の古典的名著を解説する「定例読書会」の模様を収録した講義録。10年以上の歴史を持つこの読書会は、難解な思想を日常の問題へと接続する試みとして定評を得ている。

【マザー・テラサワ 略歴】
1982年北海道北見市出身。横浜市立大学卒業後、早稲田大学大学院政治学研究科修士課程進学。政治思想、特にハンナ・アーレントの思想研究を通し人間が全体主義に加担するメカニズムについて考察。しかし研究に行き詰まり大学院を除籍。次第に半分は研究からの逃避、もう半分は表現の矛先を変えたいとの思いから芸人を志す。現在「哲学芸人」を標榜し、東京都内のお笑いライブや自主主催の思想書解説セミナーにて活動中。
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【会社概要】
商号 : TRASHBOOKS
代表者 : 代表 杉本 健太郎
所在地 : 〒243-0018 神奈川県厚木市中町2丁目14番9号 昌栄プラザ6-B
設立 : 2021年11月
事業内容: 出版物の企画・編集・制作/コンサートやイベントの企画・制作・運営
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