日大二vs早大学院vs城西大城西
早大学院・柴田迅君
日大二はかつて、1959（昭和34）年をはじめとして、過去4度夏に甲子園出場を果たしているが、82年の第64回大会以降は、甲子園に届いていない。また、城西大城西も、まだ城西と言っていた頃で東京大会が東西に分かれた最初の年の74年と、79年の2度甲子園に出場している。しかし、以降は甲子園には届いておらず、35年以上のブランクとなっている。
その間、お互いに低迷期もあったが復活を目指して頑張ってきている。ことに、日大二は田中 吉樹監督が就任して以降08年はベスト4、09年は決勝進出を果たすなど、西東京大会で確実に結果を残して、着実に復活の兆しを示し始めている。
早大学院は早稲田大の直系付属校として、入試レベルも高くなっており、野球部強化ということだけでいえば、必ずしも好環境ではない。しかし、06年に全国制覇を果たしている系列校の早稲田実業に負けてはいられないと、木田 茂監督が就任して6年目、チームも徐々に整備されてきている。10年には西東京大会ベスト4にまで進出し、その翌年もベスト8にまで残っている。また、昨秋も東京都大会では3回戦で甲子園帰りの二松学舎大附と延長15回の大接戦を演じている。敗れはしたものの、確実にチームの自信にはなっている。
基本的に打撃練習は朝練習の中でしか行えないという早大学院。「打てるチームではありませんから、何とか勝とうとするためには、バッテリーを強化していくしかないんですよ」という木田監督の考え方が反映されて、このチームもバッテリーはしっかりしている。
第1試合の日大二戦に先発した柴田 迅君と宮崎君はともに新2年生である。この試合で、木田監督が期待を込めて育てているというバッテリーが、最初の試合で順調な仕上がりぶりを示した。
柴田君は、ストレートに伸びがあり初速と終速に差がないのが特徴。しかも、それが度胸よく打者の胸元をついてきて、球の回転もいい感じだ。スライダーのキレもよく、ここぞというときに三振を奪える。試合を重ねていく中で、もっと球の威力も出てくるのではないだろうか。宮崎捕手のリードもいいが、微妙なコースに対して、巧みに身体を動かして捕球にいっているあたりにソツのないセンスの良さが窺われる。
早大学院・齊藤慶君
早大学院としては、この春になって最初の対外試合となったということもあって、立ち上がりは少し試合勘が鈍っていた感じもあった。やや硬い感じがしていたが、投げていくうちにどんどんと自分の投球を作っていっていた。試合を重ねていけば、もっと投げられるだろうと思わせるものがある。
さらには2イニングを投げた左腕の栗原君は、本来は外野手なのだが、「左投手が一人もいないので、短いイニングならば投げられるようにしたい」ということで、木田監督が投手としても作っていこうとしているが、しっかりとそれに応えている。
昨秋、二松学舎大附の大江 竜聖君と15回を投げ合った嵯峨君は、「スピードはあるのですけれども、投げてみないとわからないというところがあって、制球が乱れたらどうしようもないこともありますよ」と、木田監督が心配していたが、この日は城西大城西戦で6回から登板したが、その不安がものの見事に当たってしまった。1番からの打順だったが、振り逃げに始まって四死球含めて、8連続出塁を許してしまった。満塁から再び1番に戻って笠井君の一掃の三塁打が出て大量8点のビッグイニングとなっていった。
それでも、振り逃げ含めてこの回3三振。7回にも2三振を奪うなど、まさに投げてみないとわからない状況を露呈してしまったが、球のスピードそのものは柴田君よりもあるようだ。素材としての魅力は十分だ。
また、城西大城西戦で先発した齊藤慶君はのらりくらりというのではないが、巧みに相手をかわすテクニックがある不思議な投手だ。打てそうであまり打てないというタイプのようである。
こうして、試合で投げられる投手が頭数も揃っている早大学院。「ＷＡＳＥＤＡ」の本家として、早稲田実業には負けられないという思いも強い。だから木田監督は、成績優秀な少年野球の有望な選手がいると聞けば、自腹ででも全国へ行って早大学院の魅力を伝えたいという姿勢である。
昨秋の東京都大会2回戦で早大学院に3対8で敗れている城西大城西は、この日は同じ8点を1イニングで取って、一応雪辱は果たした。もっとも、高野 勝監督は、「あのイニングだけですから…、アレがなければ0なのですから」と言っていたが、日大二には6安打で完封されてしまった。すっかり、相手投手のペースにハマってしまっていくと、淡々と流れていってしまう傾向があるようだ。
チームとしても、おとなしいという印象なのだが、「かつての栄光があったなんていうことは、今の子はほとんど知らないで入ってきていますからね」と、高野監督は時代の流れを痛感している。そして、選手たちに少しでも意識を高めさせようということもあって、このチームから練習試合用のセカンドユニフォームを新調。上が紺で下が白というツートンカラーだ。そして、胸の「ＪＯＳＡＩ」の文字に注目したい。侍ジャパンの「ＪＡＰＡＮ」と同じロゴを使用している。さらに、帽子のマークも「Ｊ」でこれも侍ジャパンと同じ。イニシャルが「Ｊ」の城西大城西ならではのものだが、「モチベーションを上げていって、その気にさせていくのに何か方法がないかと思っていたのですが、侍ジャパンのものを使わせて戴きました」と、まずはスタイルから入っていこうという発想である。
「何とか、復活させたいという気持ちはあるのですけれどもね…」と、就任3年目の高野監督は強かった時代の城西大城西復活へ向けて地道ながらも意気は高まっている。
日大二・村田君
そんな高野監督と同い年の日大二の田中監督である。現役時代は、全国制覇を果たす桜美林に西東京大会決勝で敗退したという時代だ。「（復活は）難しいですけれどもね、何とかしたいですね」と、気持ちは同じである。伝統の左胸にワンポイントの大きな「Ｎ」に、漢字で日大二高と書かれているユニフォームは、甲子園出場時と基本デザインは変わっていない。
毎年、会場校として迎える秋季大会の一次ブロック予選だが、昨年は同ブロックに春夏に甲子園出場実績もある國學院久我山が入ってきており、代表決定戦で2対3と競り負けている。だから、この春は一次ブロック予選からの参加ということで、早くも今月中に公式戦となる。それだけに、チームの仕上げも早くしていきたいところだが、期待している投手陣が、もう一つ柱になり切れずに歯がゆい思いのようだ。
「ボールが先行するから、リズムが悪くなって、それで無理に（ストライクを）取りに行こうとすると、そこを打たれてしまっているんですよね」と、早大学院戦で期待の投手がいずれも四球絡みで失点していったことを嘆いていた。それでも、村田君は後半になると徐々にリズムもよくなって、自分の投球を取り戻していって7回、8回は3人ずつで抑えている。城西大城西戦で完封した川崎君の好投は大きな収穫であろう。
打線に関しては、早大学院の柴田君が無理にストレートでいったところを出会い頭的に捉えて、初回は2番新村君と4番栗原君の二塁打で先制。4回もセンスはいいし期待しているという林健君が1死一二塁から二者を返す二塁打を放っていた。しかし、総体的には「あれだけ思い切りよく内側を攻めてこられたら、そうは打てませんよ」と言うように、柴田君には脱帽の様子だった。
それぞれの指揮官の思いを胸に、15年のシーズンもスタートした。
(文=手束 仁)
