種をまき、水と肥料を与え続けた3年間。ペトロビッチ体制になってからいまだタイトルがない浦和が、花を咲かせられるかどうかの重要な1年になる今季。ミスターレッズ福田正博氏が勝負のシーズンを迎えた浦和を分析する。

■今季こそタイトル奪還を

 就任から4年目となるペトロビッチ監督のサッカーで結果を残すこと。浦和にとって、今年はそれが絶対に必要なシーズンだ。Jリーグで、そしてACLで優勝すれば、それは非常に大きな成果となる。

 ペトロビッチ監督就任後の3年間で、浦和は安定した成績を残して常に上位にいる。その体制を継続してきている今年、大きな花を咲かせることができるかどうか。まず何よりも、国内でタイトルを取ってほしい。

 2007年に浦和がACLを制覇したときに在籍していたFWワシントン(元ブラジル代表)のような強烈な選手は、今のチームにいない。ペトロビッチサッカーは、誰かひとりに頼るスタイルではないからだ。そうしたスタイルのサッカーは、ひとつのやり方としてあっていい。

 ペトロビッチ監督が就任した当初、私自身はそのスタイルが浦和に適しているのか、少し疑問に思うところがあった。だが次第に、パターンをしっかりと決めてそれを緻密に実行するスタイルは日本人に合っていると考えるようになった。それを継続してやっていくことに、私は賛成だ。それに、指揮官をコロコロ変えるのはあまりよくない。それはクラブだけではなく、日本代表も同じで、同じ監督が8年ぐらいやってもいいのではないかと思っている。

 なぜなら、日本人は積み上げていく作業が得意で、継続していく忍耐力があると思うからだ。今までの浦和は、我慢が足りなかった。それが、我慢して継続できるようになって、結果を残しつつあるといえる。今の浦和には、ペトロビッチ体制で着実に積み上げてきたものがある。

 そこは腰を据えてやっていくというクラブの「覚悟」が見てとれる。ただし、ペトロビッチ監督に「丸投げ」になってはいけない。監督をバックアップするというのは、監督にすべてを任せることではない。ましてや監督の思うような選手を全部取ってくることでもない。それに、浦和だからこそという特色や伝統を持っていてほしい。強化部、GM、クラブスタッフ全員が、クラブとしての魅力や、大切にしているものを加味してほしい。

 今季、ACLに出場することで浦和の試合数は昨年よりも増える。だが、必ずしも多いとはいえない。コンディションを整えることに注意していけば、十分戦っていけるはずだ。それに、現時点で日本代表選手がGK西川周作だけということを考えれば、問題はないだろう。

 たとえば、プレミアリーグでチャンピオンズリーグに出ている上位クラブは、先発は全員と言っていいほど代表選手だ。そのため、選手は代表とクラブの両方で試合に出て過密日程になり、コンディションの維持が難しくなっていく。それに比べれば浦和がこなす試合数は少なく、代表に招集される選手も少ないのだから、試合数が多いことを言い訳にしてほしくない。

■補強できていないポジションがある

 今シーズン、浦和は11人補強したが、私は、ボランチだけが補強できていないと思っている。たとえば、欧州のトップクラブでも、ブスケッツ(バルセロナ)やヤヤ・トゥーレ(マンチェスター・シティ)がいないと、チーム全体のパフォーマンスが落ちることが多い。それぐらい、このポジションの選手の出来が試合の展開を左右する。ペトロビッチサッカーにとっても、ボランチはとくに重要になる。

 もっともプレッシャーがかかる中盤で堂々とボールを受けられて、パスをさばけるボランチがいなければ、ペトロビッチ監督のサッカーは成立しない。その意味でここを補強していないことは大きな問題だ。

 先日のACL・水原三星戦では、浦和のボランチの青木拓矢が最終ラインまで引いてきてしまい、相手に押し込まれていた。ボランチが中盤の高い位置でボール受けることができず、最終ラインに下がってきてしまっては攻撃が機能しない。あるいは、高い位置でボールを受けても、後ろにしかパスが出せないのでは、相手に怖さを与えることはできなくなる。

 ボランチにプレッシャーがかかって、パスを受けられなくなった結果、DFラインまで引いてしまうことは「逃げ」でしかない。「縦パスを狙っているぞ」という姿勢を常に見せて、逆に相手にプレッシャーをかけられるかどうか。そこが勝負であり、それが実行できる技術と体力、判断力がボランチには求められる。

 今季、前線にズラタンと石原直樹を獲得したので、柏木陽介をボランチに下げることもあると思うが、私としては、もっと守備をタフに、ハードにできる選手が必要だと思っている。それは、青山敏弘(広島)やレオ・シルバ(新潟)のような選手だ。

 とくに青山は適任だ。ショートパスも、縦にロングボールを蹴ることもできるし、守備もしっかりできる。ペトロビッチ監督のサッカーを理解しているし、チームの「重石」になることができる。もちろん、青山が浦和に移籍をするかどうかは分からないし、広島に対しての礼儀もある。だが、欧州ではバルセロナから宿敵のレアル・マドリードに移籍したフィーゴという選手も過去にいた。これは極端な例かもしれないが、そういうことがあるのがプロの世界なのだから、補強について妥協すべきではない。

 また、ペトロビッチ監督は会見でレオ・シルバの名前を出して、「(移籍金が)高くて獲得できなかった」という主旨の発言をしていたので、希望は持っていたのかもしれない。そこはお金をかけてもいいところだったと私は思っている。

■恵まれた環境にある浦和の「使命」

 浦和は環境として非常に恵まれているクラブだ。人口の多い大都市部を拠点にしており、熱心なサポーターがいて、6万人収容のスタジアムがある。過去には、スタジアムが常に満員という時代もあった。そのポテンシャルを最大限引き出そうという努力をしないで、「今のままで利益は出ています。これ以上何を望むんですか?」と言うのだったら、ほかのクラブにこの恵まれた環境を譲ったほうがいい。

 ビジネスエリアとして大都市を拠点にしているクラブだからこそ、できることがある。もちろん、浦和以外にも、環境として恵まれているクラブはある。ガンバ大阪、名古屋グランパス、横浜F・マリノス、FC東京など、にも同じことがいえる。

 なかでも浦和が恵まれていると思うのは、6万人収容の「サッカー専用」スタジアムがあることだ。Jリーグ全体のことを考えた時に、「4万人入れば十分」では困る。「現状維持でOK」ではなく、常に努力をしていく使命が、浦和というクラブにはある。

 浦和には、過去の実績もある。だからこそ、やるべきことがまだまだある。環境として非常に恵まれたクラブであるという自覚のもとに、リーグ全体を牽引していく使命感を持ってほしい。リーグ王者になって、ACLでも優勝。そして、クラブワールドカップの決勝進出を目指す。浦和が、それぐらいの高い目標設定をして、今シーズンを戦っていくことに期待したい。

福田正博●解説 analysis by Fukuda Masahiro