アギーレジャパンは、年内のテストを経て、当面はベテラン勢中心のメンバーに落ち着きつつあるようだ。とはいえ、指揮官の目に止まりさえすれば、所属のカテゴリーは問わず、テストに招集される可能性はこれまでよりも高い。そんな印象を受けるのが今の代表でもある。ドイツ2部カールスルーエで粛々と日々を送っている山田大記にも、スポットが当たる日が来るかもしれない。

 2014〜15シーズン、ジュビロ磐田からカールスルーエに加入した山田。第13節が終了した現時点で12試合に先発出場、9試合でフル出場を果たしている。第11節ザンクトパウリ戦と第13節グロイターフュルト戦では2ゴールを挙げ、今季トータル5ゴールとした。キッカー誌の電子版は11月19日深夜付で、山田の記事を大きく掲載している。2部において今、山田は注目選手のひとりなのである。

 同記事では、夏にアジアから「目の前にチャンスがあったら、つかまなくちゃ」という意気込みで移籍してきたことから始まり、現在は主力として戦っていること、ホームではわずかに1ゴールしか決めていないので「次は決めたい」と話していることなどが記されている。日曜日(11月23日)のアウエ戦を盛り上げようとする試合前モノのベタな記事ではあるが、そこでニューフェイスとしてではなく、カールスルーエの主力の言葉として取りあげられていることが、その存在感を示しているのではないか。

 現在カールスルーエは勝ち点20で6位につけている。首位のインゴルシュタッドは勝ち点27、昇格圏の3位ダルムシュタッドは同23。カールスルーエの目標である1部昇格は、十分、手の届くところにある。

 山田はこのチームで、主に4−2−3−1の左MFでプレイしている。山田にボールが渡ると、ドリブルでの突破やラストパスなど、ゴールにつながるシーンが作られるのは確か。単独で強引にゴールを狙うというよりも、味方を使いつつ巧みにゴールを奪うという印象が強い。そのスピードとテクニックは、ここでも目を引くものがある。日本人の2列目に多い小柄でスピーディな選手は、特に2部では際立って見えるのだ。

 山田の獲得は、スポーツディレクターのイェンス・トッド氏が強く希望したと言われる。山田の能力を高く買い、かつて在籍していたボーフム時代から獲得を希望していたトッド氏だったが、彼にとっての新天地でもあるカールスルーエでそれが実現したというわけだ。これが山田にとってはまたとないチャンスとなった。
「もしチャレンジしてみて失敗なら失敗でいい。でも失敗さえしないで、日本にそのままいて、引退するときに『一度海外でやってみたかったな』と思うのはイヤだった」

 山田はシーズン当初にこう語っている。そのチャンスをがっちりとつかみ、成長の途中にある。このままチームが昇格すれば、ステップアップのための移籍をせずとも、大きな舞台で戦えることになる。

 このチームに山田が必要とされ、結果も出しているのは、チームのサッカーが肌にあったということが大きい。カウチンスキ監督は、2部にありがちな大味なサッカーを展開するのではなく、細かいミーティングと実戦を繰り返している。山田にもチームメイトが丁寧な説明をしてくれるのだと言う。対戦相手によっては戦術的な決めごとも少なくなく、選手はそれぞれの役割を担う。フィジカルとスピードに任せた個人任せのサッカーではないことが、山田が埋もれてしまわなかった大きな理由だろう。

 山田にとって、もちろん日本代表のために日常があるわけではない。だが、この調子で活躍が続けば、代表で見てみたいと思うのは自然なこと。この4年間のどこかで、山田にそんなチャンスが巡ってくるはずだ。

了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko