土浦日大vs取手一
台風一過の関東地方。茨城大会は予定通り開催された。土浦は最高34度を記録し、まさに猛暑の中での一戦となった。
土浦市営球場の第1試合は地元の土浦日大が登場。この日は一般生徒も応援に駆け付け、内野スタンドが入りきらず、ライトスタンドまで埋め尽くす動員である。
開幕戦で日立一を破り、勢いに乗る土浦日大はこの試合は先行を許したものの、逆転に成功し、3回戦進出を決めた。
先制したのは取手一。ベンチ入り20人のうち1、2年生が16人という若いチームだ。二死二塁から伊藤 輝（3年）が左中間を破る三塁打を放って先制に成功した。伊藤は168センチ75キロと恵まれた体格をした左の強打者。右足をしっかりと上げてから強く踏み込んで強引にボールを叩く。球足が実に速く、速球に対して振り遅れしない打撃が魅力だ。
だが土浦日大も、すぐに反撃。1回裏に一死一、三塁から3番中里 大輝（3年）の右前適時打で追いつくと、3回裏には敵失と内野ゴロで一死三塁でチャンスを作り、再び中里の内野ゴロで勝ち越しに成功する。
初回に1点を失った土浦日大の先発・大森 亮輔（2年）だが、尻上がりに調子を上げていく。大森は右腕から常時130キロ前半の直球、キレのあるスライダーをテンポ良く投げ分け、指にかかった時のストレートはスピンがかかって球速表示以上の勢いを感じさせる投手だ。
土浦日大は5回裏にも二死二、三塁から4番田中 潤（3年）の2点適時打でその差を広げる。背番号10を付ける田中は狙い球を絞ってフルスイングし鋭い打球を放つことが出来る好打者だ。また守っても捕手として「二塁送球タイム」2.00秒台をたたき出す強肩が光る。
さらに7回裏には一死満塁のチャンスを作り、今度は5番筧 竜太朗（3年）が左前適時打で、1点を追加し、6番宮林 諒輔（3年）の犠飛で1点を追加し、6対1とする。
しかし取手一も反撃。8回表には一死満塁から5番島崎 大介（2年）の犠飛で1点を返し、さらに9回表には7番浅川 拓巳（3年）の代打の齊藤 誠太郎（1年）が安打で出塁。そして途中出場の永井 洸希（2年）が左中間を破る二塁打を放つ。この打球で斎藤が全速力で駆け抜け本塁へ生還。斎藤の走塁は実に速く、まさに陸上選手のような駆け抜け方。160センチ55キロと小柄ながらバネの強さが素晴らしかった。
そして無死一、三塁となってこの試合で2安打を放っている塚本 大貴（3年）に打席が回った。塚本は直球を振り抜き、鋭い打球を飛ばすが、三塁手・宮部 明憲（2年）のグラブへ収まり、アウト。まず三塁の宮部はベースを踏んで、2アウト。そして抜けたと判断をしていた一塁走者も戻ることが出来ず、3アウトに。チャンスから一転、なんと三重殺で試合終了。土浦日大が3回戦進出を決めた。
一瞬にして試合終了となり、なかなか呑み込めない結果となったが、冷静に状況判断をして三重殺を決めた土浦日大ナインの判断は見事だった。
一方、反撃及ばずに涙をのんだ取手一だが、若いチームだけに秋以降が楽しみだ。エースの金子 幹太（2年）は右サイドから常時130キロ前半の直球、スライダーをコンビネーションに強気で押していく投手。2安打を放った塚本は攻守ともにまとまりのあるショートストップで、構えに癖がなく、しっかりと結果を残せる遊撃手。またレフトの島崎も182センチ70キロの長身外野手で腕っぷしの強さを活かした打撃は魅力的だった。夏の経験を活かし、秋は上位進出を狙えるチームとして帰ってくることを期待したい。
（文＝河嶋 宗一）
