デンマーク優位で進んでいた試合の流れを一変させた貴重なゴールであることは確かだが、サッカーの魅力が詰まっていたシーンというなら、3点目を挙げたくなる。
 
 大久保にクサビのような形でボールが収まると、左サイドにいた本田は瞬間、大久保の背後に狙いをつけて走り込み、そして大久保から送られてきた縦パスを、右足のインサイドでトラップした。
 
 見るものをハッとさせたのは、本田が次の瞬間に繰り出したワザ。高度なターンだった。右足に収まったボールを、軸足である左足の後ろを通す、大きな切り返しフェイントを決めたのだ。対峙するDFの逆を一瞬にして取り、タテ抜けに成功したそのプレイはまさに「舞」。
 
 瞬間、身体を180度クルッと回転させ、フィギュアスケートのジャンプを想起させる華麗なターンで、相手を置き去りにした。「サッカーの魅力、スポーツの魅力はここにあり」と、世間に言わしめるようなシーンだった。
 
 本田のアクションはこれだけでは終わらなかった。誰もが左足シュート! と思った次の瞬間、今度は左足で、真ん中に走り込んだ岡崎へ優しいラストパスを送球したのだ。
 
 右足、左足。踏み込む足を違えて跳ぶような連続ジャンプ。フィギュアスケート的に言えばそうなるが、その身体の面を、ひらひらさせながら相手DFを翻弄した「舞」は、「技術点」、「出来映え点」ともに満点と言いたくなる完璧なアクションだった。さらにそれが、何の前触れもなく発揮されたという意外性も加えれば「演技構成点」にも満点を出したくなる。
 
 柔道で言うところの「右半身(はんみ)」の態勢を取ったと思えば、「左半身」の態勢にクルッと身体の面を変える。360度、身体は急激に回転する。それが突然、何の前触れもなく発揮されたのがデンマーク戦の3点目。南アW杯全体の中でもトップ3に入るアクションだった。
 
 ただし、本田には伊藤みどりのような滑りの速さはない。滑る力は香川の方がある。だが香川には「舞」、回転力が足りない。本田+香川。それが伊藤みどりだったのではないか。ソチ五輪のフィギュアスケートを見ながら思ったことだ。