仏オランジュの店舗内にはスマホを買い求める高齢者も多い。

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日本で「らくらくホン」という愛称で知られる富士通のシニア向けスマートフォンがフランスで広まっている。6月にフランス携帯電話会社大手オランジュと組み「スタイリスティック S01」として発売。10月には取扱い店舗を国内90ヵ所から250ヵ所に増やした。

このS01は日本の「らくらくスマートフォン F-12D」を元にフランス向けに開発したもので、音質・音量・速度といった受話音の聞き取りやすさ、タッチパネルの押しやすさ、防水・防塵機能、安全性を考慮したユーザー専用SNSなどを備える。フランスでは日本と同様に高齢化が進んでおり、シニア向けスマホの需要は年々高まっている。フランスのシニア向けスマホ事情はどのようなものなのか。

仏調査機関シニア・ストラテジックによれば、50歳から75歳のフランス人の67%が携帯電話を持ち、その内79%が次に買い替える際はスマホを選びたいと答えたそうだ。同年代のユーザーは通話とカメラ、インターネットアクセスを携帯端末に求めているものの、各メーカーから販売される機種はそれ以上に多機能のものが多く、扱いやすい入門者向け機種は限られてしまっている。また仏調査会社IPSOSの調べによれば、フランスのスマホユーザーは65歳以上で16%を占め、スウェーデンの22%と比較すると低いものの、ドイツ9%や英国12%と比べれば高い。

このような状況で、富士通は日本で培ったシニア向けスマホを欧州へ持ち込んだわけだが、じつは同市場は富士通の独壇場ではない。同分野で欧州市場を引っ張るのが、スウェーデンのルンドに本社を持つ携帯製造・販売会社ドロだ。同社は昨年に、大きめのキーや呼び出し音、シンプルな操作性、カメラ、インターネットアクセス、緊急の場合のSOSボタンが備わったシニア向けスマホ「フォンイージー 740」を売り出したのを皮切りに、今年9年には最新モデル「810 リベルト」を発売している。富士通がフランスのみにとどまっているのに対し、ドロはスウェーデンやフランス以外の多くの国でも同機種を売り出している。

では欧州のシニア向けスマホに商機はあるのか。一般的なスマホ市場に比べれば、シニア向け市場は欧州でまだ大きく発展していない。しかし日本同様、欧州は高齢化が進んでおり伸びる余地はあるだろう。一方海外で売れている日本の携帯端末メーカーは少なく、多くの日本メーカーの海外展開は成功しているとはいえない。来年以降フランス以外の国にもシニア向けスマホを展開してきたいとしている富士通が、今後ドロとともにどこまで市場を広げ存在感を高めていけるのか。欧州のシニア向けスマホ市場に注目したい。
(加藤亨延)