ACミランへの移籍が決定した本田。バロテッリとの相性も悪くない、とセルジオ氏は見ている

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「自分もビッグクラブにふさわしい選手」

香川真司のマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)移籍が決定的になった約1年半前、嫉妬心からか、そんな発言をしていた本田圭佑のACミラン(イタリア)移籍が、ついに実現した。日本サッカー界にとっては明るい話題だね。本人もワクワクしているだろう。

本田がVVVフェンロ(オランダ)からCSKAモスクワ(ロシア)に移籍したのは2010年1月のこと。その翌月に迎えた欧州チャンピオンズリーグでは、得意のFKを決めるなどして、クラブ史上初のベスト8進出の原動力となった。

当時の彼には本当に勢いがあって、本田自身もCSKAを踏み台にして、さっさと次のステップアップをしようと考えていたはず。僕もそんな期待を持っていた。

ところが、結果的には、欧州のトップリーグとはいえないロシアで契約満了となるまで過ごすことになった。チームの不振、本人の不振もあったけど、何よりほぼ1シーズンを棒に振った11年8月のケガの影響が大きかったね。

その間には、日本代表のチームメイトである長友佑都がインテル(イタリア)に、香川がマンUにと、それぞれビッグクラブへの移籍を先に果たした。高いプライドは傷ついただろう。

ようやく実現した今回のミラン移籍にしても、いわゆる“ゼロ円移籍”。決して、日本のメディアが報じているようなスーパースター級の評価を受けているわけじゃない。本田が望むようなビッグクラブは、移籍金がゼロになるまで手を挙げなかった。それが彼の直面する現実だ。

とはいえ、どんな形であれ、チャンスをモノにしたことに変わりはない。本人も気合いが入っているだろう。名門ミランでどんなプレーを見せてくれるのか。今から楽しみだよ。

ミランのトップ下のポジションにはカカ(元ブラジル代表)やロビーニョ(ブラジル代表)らのスターがいるけど、彼らは結果を残せていないし、チームは今季のセリエAで大苦戦している。27歳でもう若手ではない本田は、即戦力として移籍直後から十分な出場機会をもらえるだろう。

かつてヒデ(中田英寿)がASローマ(イタリア)に移籍した際、トップ下には当時のイタリア代表の10番を背負っていたトッティが君臨していた。ヒデは最後までポジションを奪えずに苦労したけど、その点、ライバルが強力ではない本田はラッキーだね。

また、個性の強いFWのバロテッリ(イタリア代表)とのプレーの相性も悪くない気がする。食事に誘うなどピッチ外でも積極的にコミュニケーションをとって、セットプレー時にキッカー役を任せてもらえるような関係を築ければいい。

もちろん、メディアやサポーターから受けるプレッシャーはロシアや日本の比じゃない。ミランのライバルであるインテルの長友とも、いちいち比較されるだろう。

ましてや本田は花形のトップ下だ。ビッグマウスは彼の魅力のひとつで、それで自分にプレッシャーをかけているわけでもあるけど、見合った活躍ができなければ、イタリアでは厳しい批判にさらされる。

ただ、それでも彼ならやってくれるかもしれないという期待感はある。ぜひミランで爆発して、来年6月にブラジルW杯を控える日本代表に、その勢いを持ち込んでほしいね。

(構成/渡辺達也、写真/益田佑一)