パリの街角で売られているモミの生木

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今年もクリスマスまであと少し。日本だとクリスマスは祝日ではなく、週末と重ならない限り会社勤めの人はなかなか時間を取るのが難しい。またイブは恋人や友達同士で過ごす日というイメージが強いが、フランス含め欧州では、クリスマスは休みになり年齢関係なく家族で過ごすのが一般的だ。具体的にフランス人は、クリスマスをどのように過ごすのか。

12月に入ると、クリスマスツリー用に使われるモミの木が、町のあちこちで目につくようになる。フランスではツリーに生木を使うことも多く、それを近所の花屋やスーパーマーケットで買い、家まで運ぶ。プラスチック製の組み立て式モミの木のように来年もまた使えるわけではないので、シーズンが終わると、それらモミの木はゴミに出されたりして、道端の至る所にモミの木がゴロリと散乱している光景を目にする。

プレゼント選びもクリスマスまでの大切な行事。親が子供にプレゼントを用意するだけでなく、家族みんなでプレゼント交換をするため、それぞれがクリスマスまでに家族全員分のプレゼントを選んでおく。そのためクリスマスが近づくと、街中はプレゼントを探し求める人でいっぱいになる。基本日曜は閉まっているパリのデパートも、12月は日曜も営業する。

24日のディナーはもちろんごちそうが並ぶ。チキンや牛肉を使った料理、サーモン、カキ、キャビアなどの魚介類、フォアグラ、クリスマスケーキのブッシュ・ド・ノエルなどを家族で囲み、おしゃべりしつつゆっくりと食事を楽しむ。クリスマスはよく「1日中食べ続ける」と言われるが、日本の正月を思い浮かべるとイメージしやすい。お節料理をつまみつつ、お酒を飲みながら家族でゆっくり過ごすのが、フランスの場合クリスマスに相当するのだ。

イブから深夜0時にクリスマスへ日付が変わると、敬虔なキリスト教徒の家庭は礼拝に出かける。ただしすべてのフランス人がその時間帯に行くわけではなく、深夜に行かず翌日教会へ足を運ぶ場合や、出かけない家庭もある。以前と比べてフランスではキリスト教離れは進んでいるし、他宗教を信仰する移民由来の家庭も多い。よってフランス人すべてがクリスマス礼拝をするわけではない。

そして0時はプレゼント交換の時間でもある。クリスマスの礼拝を済ませてからという時もあるし、小さな子供がいる家庭は、プレゼントは翌日の朝に開ける場合もある。プレゼントは家族それぞれの分をクリスマス当日になるまでツリーの下に置いておく。お互いのことを考えながら用意した、思いが詰まったプレゼントの包み紙を、クリスマスになったらそれぞれ開封するのだ。

日本だと、小さな子供がいる家庭以外は、クリスマスは家族で過ごすというより恋人や友達と過ごすものと思われがちだが(もちろん、そのような過ごし方も素敵だが)、フランスのような家族のクリスマスも積極的に選択肢に入れてみてはどうだろうか。普段は仕事や学校、友達との約束があったりして親子で長い時間を一緒にいれないけれど、その日だけは家族で夕食を囲んで「いつもありがとう」と、みんなでちょっとしたプレゼント交換をするだけで、温かな時間がそこに生まれるはずだ。
(加藤亨延)