先に救助するのは妻か愛犬か、航海中の船が座礁で“究極の選択”。

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もしも自分が大切に想う2人から同時に助けを求められたら、果たしてどちらを先に救うべきか――。古より盛んにテーマとなるこの“究極の選択”、誰もが一度はたずねたり、考えたりしたことがあるかもしれない。じっくり想像する余裕があれば、いずれは何となく結論を導き出せるかもしれないが、咄嗟の判断となると難しいテーマだろう。先日ある南アフリカの男性は、そんな“究極の選択”を迫られるアクシデントに遭遇した。

南アニュースサイトのニュース24やインディペンデント・オンラインニュースによると、“究極の選択”をしなくてはいけない事態に直面したのは、所有するクルーザーで南ア沖を航海していたグラハム・アンリーさん。3か月間の休暇を取った彼は、妻シェリルさんとペットで9歳のジャック・ラッセル・テリア犬ロージーを連れて、所有するクルーザーでの旅行を計画。そして南ア南東部の町イースト・ロンドンを出発し、一路マダカスカルまでの航海に出た。

ところが出発間もない8月3日夜から、彼らが乗ったクルーザーは高さ7メートルの波を受けるなど、荒天下の厳しい状況に直面。夫婦は一晩中、エンジンをかけて必死にクルーザーを制御し続けたそうだが、激しい風雨で船は流され続け、8月4日早朝にはイースト・ロンドンから450キロ北東にある、セベという街付近の海岸で座礁してしまった。そこで夫グラハムさんは、救難信号装置と位置情報を知らせる無線装置を起動させ、救助の要請を行ったという。

しかし、救助を待っている間に転覆しないとも限らないため、クルーザーを出て陸へ上がる必要に迫られたという彼ら。そのとき、グラハムさんは家族の主として、同時に22年間ボランティアを務めた海難救助のプロとして、荒れ狂う海を引っ張って妻と愛犬を陸へ戻そうと動いた。そんなプロの彼が先に助け出したのは、愛犬ロージー。もっとも、彼が愛犬のほうをより大事に想っていたというわけではなく、シェリルさんがライフジャケットを着ていた上に、留め具を使って海への転落を防ぐ対策も取っていたため、先に愛犬を外に出そうと判断したそうだ。

そして、愛犬を無事に岸へ届けたグラハムさんは、再び荒れる海を泳いで引き返し、妻もしっかり陸へ救出。ヘリコプターで現場へ到着した救助隊は、クルーザーがひどい損傷を受けていたにも関わらず、全員無傷で済んだ彼らの姿に安堵し、イースト・ロンドンの本部へと彼らを運んだという。

危機的状況に陥っても冷静な判断を行い、愛妻と愛犬の両方を救うのに成功したグラハムさんだが、助ける側であるはずが助けられる事態を引き起こした自分は「未熟」と話しているそうで、今回の経験で改めて海の怖さを学んだようだ。