材料? 国防軍で上がる
安倍首相は1回目の首相在任時、防衛庁を省に格上げした。次は自衛隊を国防軍にして、防衛力を高める意向を示している。
東京計器は民主党政権下でも、武器輸出3原則緩和を材料に注目された。興研は防毒マスクが株価材料。超低位株では、アジアグロースキャピタル(旧・森電機)がおもしろそうだ。株価が50円未満なので中・上級者向け。

材料? 金融業GDP10%で上がる
自民党は政権公約案の段階から金融業をGDP(国内総生産)比10%の大型産業に育成する方針を示していた。
銀行セクターでは、りそなホールディングスが公的資金返済を終えて、出世株になりそうだ。株式や国債の取引が一段と活発化すれば、事実上の独占企業である日本証券金融が浮上する公算が大きい。ノンバンクでは、オリックスに注目したい。

材料? 都心部再開発で上がる
不動産再生株の変化球銘柄では、丸紅建材リース。都市部の建築件数増が収益拡大に直結する。首都圏外も地価回復が見込まれ、近畿地区トップの不動産仲介業者である日住サービスにも注目。大証単独上場の小型株のため、値動きは大きい。デフレ期に値下がりしたのがリゾート地。会員制リゾートホテルで国内最大のリゾートトラストの業容拡大が予想される。

材料? 高級介護で上がる
自民党の政権公約案に「ビジネスクラス介護」という言葉が出てきた。公的サービスより少し上の快適さを提供するものだ。
フランスベッドホールディングスは多機能ベッドに注目。福祉用具・機器レンタルの日本ケアサプライは契約単価増が業績の追い風となる。制度の複雑化で介護施設向けシステムの需要が高まり、エヌ・デーソフトウェアも急浮上か。

材料? まだ上がる大型株
カネ余り局面では「ディーリング相場」と呼ばれるように、短期運用が活発化する。巨額マネーの受け皿は、時価総額が大きく流動性の高い大型株というのが常識。
規模ではNTTドコモが最有力。伊藤忠テクノソリューションも発行株数が大きく、大量の売買を飲み込める。過去の例では、重厚長大産業も好まれ、JFEホールディングスにも資金が向かいやすいと予想する。

BADシナリオ 「脱デフレ失敗」「海外景気腰折れ」「対中関係悪化」…そのときの株価・為替は?
危険な1ドル=120円。米国財政問題が火ダネに
安倍政権は円高・株安の流れを円安・株高に転換させた。このまま順調に進むことを願うばかりだが、どんな局面でも投資家はリスクを頭に入れておきたい。

最悪シナリオは円安が止まらない場合。最近の円売りは政府・日銀の想定内というのが公式見解。しかし、円安の正体が「日本売り」なら今後の混乱は避けられない。

円安の許容範囲は1ドル=100円程度まで。仮に120円程度まで円が売られた場合、ガソリン価格は1リットル=200円近くに急騰、6割を輸入に頼る食料品は昨年比で40%近く値上がりする。国民生活に配慮し、消費税アップを先送りすれば、今度は1000兆円規模の公的債務が世界の投機筋の攻撃材料にされかねない。

米国の過剰債務問題も懸念材料のひとつ。米国は昨年末に「財政の崖」問題の先送りに成功したが、これは大統領対議会という政治上の話。財政不安の深刻化した米国債を誰が買い続けるかは別問題だ。

米国債の市中消化が滞れば、米国の金融不安からドル安・円高に戻り、輸出企業主導のニッポン復活は幻となる。あとには大型公共事業で増えた政府債務だけが残る。

中国も気になる。沖縄県・尖閣諸島周辺で中国と軍事衝突となれば、貿易から個人消費まで大打撃は避けられないだろう。中国依存度を高めてきた日本企業が多い半面、各企業の中国リスクへの備えは心もとない。

植草 まさし(うえくさ・まさし)
経済ジャーナリスト

外資系金融機関を経て、現職。マーケットの表も裏も知り尽くす事情通。日々、特ダネを探して兜町・日本橋を歩き回っている。相場の王道銘柄のピックアップはもちろん、アンタッチャブルな銘柄、ハイリスクな銘柄も得意。



この記事は「WEBネットマネー2013年5月号」に掲載されたものです。