日本代表が今年の初戦、親善試合のラトビア戦に3‐0で勝った。スタジアムは満員、テレビ中継の視聴率もよく(平均17.6%、関東地区、ビデオリサーチ調べ)、“イベント”としては成功だ。

でも、“強化”という観点からすると、収穫は少なかったね。

その最大の理由はマッチメイク。試合前から懸念していたとおり、ラトビアは技術的にも戦術的にも見るべきものがなかった。完全に格下。わざわざ高いお金を払って、なぜあんなレベルの低い相手を招待したのかというのが率直な感想だ。

ちなみに同じ日に、韓国はロンドンでクロアチアと親善試合を行なっている。結果は、ベストメンバーのクロアチアに0‐4で完敗。でも、日本と比べて、どっちが実のある経験を積んだかは言うまでもないよね。

強化を第一に考えれば、昨年秋の欧州遠征(vsフランス、vsブラジル)のように、どんどんアウェーに出ていくべき。それをしないのは、結局、スポンサー向けのノルマ試合というビジネス優先の事情があったのだろう。

いいマッチメイクをするにはお金も必要だし、スポンサーは大事だという意見もわかる。でも、それなら僕は試合数を減らしてでも強い相手とのマッチメイクを優先すべきだと思うんだ。

そして、肝心の日本代表のプレーも物足りなかった。スコアを見れば完勝だけど、あの相手ならもっと得点を取らなきゃいけないよね。特に前半はブーイングが起きないのが不思議なほどひどい内容だった。

以前から指摘しているとおり、ザッケローニ監督になってからの日本代表はメンバーが固定化し、スタメン組とサブ組の差が大きく、選手層が薄くなった。なかでも今回は“遠藤頼み”という最大の不安が露呈したね。

ラトビア戦のボランチのスタメンは長谷部と細貝。ともに守備が持ち味のつぶし屋タイプだ。ふたりとも運動量豊富でファイトあふれるプレーを見せてくれるけど、ゲームの組み立ては得意じゃない。ボールを奪ったら近くの選手にあずけるだけ。だから、攻撃はどうしても単調になる。前線の本田や香川は孤立し、両サイドバックもあまり攻め上がれなかった。

それが後半、遠藤が入ると日本の攻撃は明らかにスムーズになった。遠藤が中盤の底でテンポを変え、左右にパスを散らし、時には大きなサイドチェンジをする。たとえるなら、アメリカンフットボールのクオーターバック的なプレーだ。本田よりも、香川よりも、今の日本で、最も“替えの利かない”選手なのは間違いないよ。

ただ、遠藤はもう33歳。しかも、今季はJ2でプレーする。来年のW杯本大会まで今の調子を維持できる保証は何もない。にもかかわらず、ザッケローニ監督は今回、遠藤以外には司令塔タイプのボランチをひとりも呼ばなかった。本来なら格下相手の親善試合だからこそ、緊急事態に備え、新しい選手を試すチャンスなのに。これまでに招集したことのある中村憲はもちろん、ほかにも鹿島の柴崎、柏の大谷など、遠藤には及ばないにしても、面白い選手はいると思うんだけどね。

結局、ザッケローニ監督はもう新戦力の発掘なんて頭になく、今のメンバーのままW杯本大会に行くつもりなのだろう。でも、もし本番直前にアクシデントが起きたらどうするつもりなのか。僕にはそれが見えないよ。

(構成/渡辺達也)