どんよりとした雲間から、ひと筋の光が差し込んできた──スペイン戦を目前に控えたU-23日本代表を巡る報道には、ささやかな高揚感が入り混じっている。メダルを期待する声は依然としてか細いものの、メキシコ戦の勝利がひと筋の光として捕らえられている、と僕は感じる。

 意味のある勝利だったのは間違いない。スペイン戦は守勢に立つ時間が長くなるが、ニュージーランド戦もベラルーシ戦も、ゲームの主導権を握ったのは日本だった。開幕戦のシミュレーションとしては、物足りなかったのである。スペインに似たサッカーをするメキシコを最終調整の相手に選んだのは、強化のプロセスとして理に適っている。
 
 スペイン戦を3日後に控えたいまとなっては、足りないものを数えてもしかたがない。すでに手にしているものを、いかに整えていくことに意識を傾けるべきだ。細部を詰めていくということである。
 
 メキシコ戦で気になるシーンがあった。
 前半終了間際の42分、敵陣センターサークル付近で直接フリーキックを得た。FKのポイントにいた東は素早く吉田へボールを預けるが、吉田のパスはインタセプトされてしまう。左サイドからカウンターを浴び、ペナルティエリア左奥でメキシコにFKを与えてしまった。
 
 ミスをしたのは吉田である。だが、そもそも東の判断が戦況に則していない。1対1に追いつかれたばかりで、試合の流れはメキシコに傾いていた。優先されるのは2点目を奪うことではなく、2点目を与えずに前半を締めくくることである。リスタートは慌てずに、時間をかけていい。
 
 その直後にも、見過ごせないシーンがあった。ボランチ山口のバックパスが弱く、相手にさらわれてしまったのである。
 
 先のニュージーランド戦から、山口は同じ種類のミスを繰り返している。失点にはつながらなかったものの、自陣でのミスが命取りになるのはニュージーランド戦で教えられたばかりだ。チームメイトのミスを自分のものとして共有していかなければ、プレッシャーの増す五輪ではまさに致命傷となってしまう。
 
 北京五輪のアメリカ戦を思い出す。後半開始早々の47分に喫した失点は、長友の左サイドからクロスを入れられ、中途半端なクリアを蹴り込まれたものだった。
クロスを許した長友も、クリアした水本も、決定的なミスをしたわけではない。チームを率いた反町監督も、「防ぐことのできる失点だった」と振り返っている。ただ、Jリーグやテストマッチなら記憶に止まらないようなプレーが、取り返しのつかないミスとなるのが国際試合である。
 
 スペイン戦は守備の時間が長くなる。すなわち、自陣での攻防が多い。小さなミスも許されない。細部に勝負が宿る攻防である。