「個に頼って間違ったサッカー観を持たないようにすること。そうすれば成績は自然についてきます」とかつてボスニア・ヘルツェゴビナ代表コーチとして、イビシェビッチ(ドイツ・ホッフェンハイム所属)、ジェゴ(イングランド・マンチェスターシティー所属)の指導もしたバルバリッチ監督は今後の齋藤へアドバイスを贈るが、「まずチームのことを考えて、その中で自分としての役割を考えている」と現在地を心得た彼のコメントを聞けば、そんな心配は杞憂。「今サッカーをする中でどれだけ大きくなれるか」を常に考えている齋藤学の今後には、これからも要注目である。

■「マイナー」から「メジャー」へ。まずは7月の5試合が大事!

12試合終えて完封は2試合のみ、15失点のディフェンスには不安を残すものの、こうして「組織」の部分でも「個」の部分でも成長度を示している愛媛であるが、肝心の愛媛県内の盛り上がりはTV、新聞報道がなされているにもかかわらず全く感じられない。

それもそのはず。6月から7月の県民にとって最も関心のあるスポーツは伝統的に「高校野球」。例え愛媛FCがJ2首位に立とうが、四国アイランドリーグplus(プロ野球独立リーグ)で愛媛マンダリンパイレーツが優勝争いを演じようが、もっと言えば長友佑都(イタリア・インテルミラノ所属)がゴールを量産しようが、県民には母校や応援している高校の野球部がどんな戦力を整え、いかに甲子園に進むかの方が大事なのだ。

事実、地元では「なでしこジャパン」壮行試合で雨への無力ぶりを全国に晒したニンジニアスタジアムのピッチ状況も全くといっていいほど話題に上がっていない。ここまでホーム5試合を終え、4,013人と平均観客動員数では苦戦を強いられている愛媛であるが、このようなよくも悪くも「高校野球至上主義」的な県民性も、静かな好調に拍車をかけている。

となれば、愛媛が県民の関心を得るためには、少なくとも8月までこの好調を継続させるしか道はない。「愛フィールド梅津寺」での練習後には裏の伊予灘でクールダウンするなど、すっかり愛媛の水に慣れた齋藤もこれからの展望をこう語る。

「まだ今の時点で順位を気にする必要はないと思います。だた、このチームが本気でJ1を狙えるように周囲を動かすためには、最後までこの順位をキープして、僕らが意見を言える立場でないといけない。そのために勝ちを拾っていきたいです」。

7月の対戦相手は岡山、札幌、京都、東京V、水戸。愛媛が、そして愛媛県のスポーツ認識がマイナーからメジャーへと変わるきっかけをつかむためにも、この7月は大事な5試合になる。そう、秋葉原の小劇場から全国へ羽ばたいたAKB48のように。

■著者プロフィール
寺下 友徳
1971年、福井県生まれの東京都東村山市育ち。学生・社会人時代共に暗中模索の人生を経験した末、2004年にフリーライターに。さらに2007年からは愛媛県松山市へと居を移し、「週刊サッカーダイジェスト」、「中学サッカー小僧」、「スポーツナビ」、「高校野球情報.com」、「ホームラン」、「野球小僧」など様々な媒体に四国のスポーツ情報を発信している。

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