写真/平岡純(代理で出席した尾崎直道)

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フロリダ州セント・オーガスティンの世界ゴルフ殿堂で5月9日、殿堂入り式典が行なわれ、ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領(生涯部門)、アーニー・エルス(PGAツアー部門)、尾崎将司(国際部門)など4部門から選ばれた6名が殿堂入りした。

世界ゴルフ殿堂の建物内には、過去に殿堂入りした偉人たちの数々の展示品が飾られている。今年、新たに殿堂入りを果たした6名の記念品も、この日、公開され、ネームプレートが付された殿堂入り専用ロッカーも作られた。

ジャンボ尾崎のロッカーの中には、日本ツアーで現在使用しているボール、グローブ、バイザー、そして100勝目を達成した1996年ダンロップ・フェニックス・トーナメントの際に着用していたセーター、紫のシャツ、スラックスなどが収められた。また、記念品コーナーには、数々のトロフィーや紫色のゴルフバッグなどのほか、収集品の刀が人々の目を引いていた。

しかし、当の本人であるジャンボは式典を欠席。米PGAツアーが震災の影響を気遣い、「非常時ゆえ無理に出席しなくていい」という言葉をかけたというのが公式の欠席理由だ。午後6時から行なわれたセレモニーでは、司会者がジャンボからの手紙を読み上げ、その文面には「出席できないことを深くお詫びしたい。最近は腰痛もひどく……」という欠席理由も綴られていた。セレモニーの壇上には末弟の尾崎直道が代理で立ち、はきはきした英語のスピーチを笑顔で披露。長兄の代役を立派に務めた。

欠席したのはジャンボだけではなかった。殿堂入りした6名の中でセレモニーに本人が出席したのはアーニー・エルスとダグ・フォードの2人だけだった。2人は亡くなってからの殿堂入りゆえ、在りし日を映像で忍ぶ形になった。ブッシュ元大統領はスケジュールが合わないため、アナウンサーとの掛け合いで制作したビデオレターをスピーチ代わりに上映。そして、ジャンボは手紙と弟。ジャンボの紹介映像には、殿堂入りが決まった際に日本で開かれた会見の映像が使われていた。

だが、手紙や代理出席では、ジャンボの人となりや素顔を伝えるには及ばない。取材に訪れた米メディアの中には落胆している記者もいた。「ジャンボは日本人選手の中ではいつも一人だけ“何かが違う”という感じの個性に溢れ、見るのが楽しくて、大好きな選手だった」という米メディアがいれば、別の米メディアは「ジャンボは他の日本人選手たちと群れたり一緒に行動したりするのが嫌いなんだろ?いつも群れからハグレている一匹オオカミのように見えたけど」と不思議顔。「そもそも日本にはジャンボ軍団というものがあって、そこには日本の第一線プロたちが属していた。みんなで合宿したり練習したりして……」と説明すると、「信じられない!」と、たいそうな驚きようだった。

そんなジャンボの素顔を、この殿堂入りに際し、ほんの少しでも一面でもいいから世界に披露してほしかった。ジャンボの素顔は米国ではほとんど知られていないのだから――。ジャンボの記念品コーナーには「私の唯一の後悔は、海外の大会に積極的に出なかったこと」と、ジャンボ自身の言葉が記されていた。だからこそ、式典には姿を見せてほしかったと、つくづく思う。(舩越園子/在米ゴルフジャーナリスト)