ジャパンオープンのシングルス1回戦で敗れ、花束を手に引き揚げる錦織圭(C)共同通信社

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【スポーツ時々放談】

【時々放談】テニス全米オープンは優勝賞金8億5000万円超、総額は6年で倍増! これほど“天井知らず”になった背景

 テニスのジャパンオープンが開幕した。

 錦織圭引退で偲ぶ記事が並び、まるでお通夜だが、本人は至って明るい。松岡修造は自らの引退報道に「卒業」とうそぶき、伊達公子は復帰した。その昔、6度引退した大御所もいた。相撲ではないから、終わりではない。

 予選2日目(9月29日)は雨の平日、交通不便な有明コロシアムが7115人のファンで賑わった。予選2試合の後に錦織の公開練習があり、通信社は「観客が見守る中、好プレーでは拍手を誘い」と流した。テニスファンをなめてはいけない。

 予選ながら第1試合には元世界ランク3位で人気のチチパス、第2試合にマスターズで優勝した世界9位の22歳、フィスが入った。エントリーの手違いで実現した夢の予選カードに錦織のおまけ付きで2000円──ファンは見逃さず、空っぽのロイヤルボックスと記者席だけが目立った。

 チチパスの片手打ちバックハンドの美しい広角ショットにため息が流れた。いまや男女とも両手打ちが主流で先の全米オープンでもチチパスは注目された。4大大会の150年の歴史で4強には必ず片手打ちがいた。今年勝ち上がったのはチチパスだけ、“時代の名残”は4回戦でシェルトンに敗れた。

 両手打ちはかつて、非力な女子選手のスタイルだった。芝からハードコートへ、用具の開発に伴うパワー時代到来で、両手打ちの台頭は必然だっただろう。変わったのはプレーだけではない。

 センサーの出現でネットタッチを判定する副審は消え、最大9人のラインジャッジもいなくなり、ショットクロックがサーブをせかし、皆でチャレンジ映像を見上げ……キング夫人の時代は、コートチェンジに腰かけるベンチもなかったという。選手は時代とも闘うのだ。

 錦織は引退会見で「ケガとの闘いでした」と振り返った。

 いまや身長195センチの時代だが、錦織は178センチ。技術とセンスでパワーに立ち向かうには展開勝負になり、試合は長引く。錦織は4大大会とデ杯の5セットマッチで29勝(8敗)した。

 ジョコビッチの40勝(11敗)に次ぐ勝ち星はファンを魅了した一方で、肉を切らせて骨を断つ戦術がケガを招いた。

 デ杯が3セットに短縮されたのは錦織の体がボロボロだった2019年からだ。いま、4大大会のセット短縮も俎上に載っている。時代がもう少しズレていれば……。

 それにしても、5セットマッチでの高い勝率に気付いたのはキャリア終盤の6年ほど前だったという。いかにもおおらかな錦織らしい。

(武田薫/スポーツライター)