ロシアの自動車産業はどう変化したか(前編) 揺るがぬラーダ人気 西側諸国の撤退と中国の台頭
高級車より目を引くラーダ・ニーヴァ
「正直なところ、12気筒のフェラーリよりも、このクルマの方が人々の注目を集めるんですよ」
【画像】多くのファンに愛される、質素で頼もしい四輪駆動車【ラーダ・ニーヴァを詳しく見る】 全50枚
英国サリー州の自動車販売店ブラムリー・モーター・カーズのシニア営業担当者、ジャック・モーガン=ジョーンズ氏がこう語っているのは、ショールームに並ぶ高級車のことではない。2万ポンド(約420万円)前後の価格帯で販売されている、まるで別の時代のクルマのように見える小さくて箱型の四輪駆動車、2021年式のラーダ『ニーヴァ・ルクス』だ。現在、英国の公道を走るニーヴァはごくわずかしか残っていない。

2022年以降、ロシアの自動車産業はどう変化したのか。専門家の分析をまとめる。
「驚くべきことです」とモーガン=ジョーンズ氏は続ける。「路上でこのクルマを見かけると、みんな笑顔になるんです」
ニーヴァの魅力の大きな部分は、往年の時代を彷彿とさせる点にある。
「このクルマは極めて信頼性が高い。すべてが基本に忠実な機械工学です。故障する要素はほとんどありません。もし、いつでも頼りになるターンキーカー(翻訳者注釈:鍵を回すだけで走れるクルマ)が存在するとしたら、おそらくこのクルマでしょう」
しかし、これは、ラーダが目指していた状況とは大きく異なる。2021年、ラーダブランドを展開するロシアの自動車メーカー、アフトワズ(またはアフトヴァース)と当時の親会社であるルノー・グループは、ニーヴァの新世代モデルの計画を発表した。
ニーヴァ大幅改良の裏に見る「苦境」
2つのモデルが計画されていた。1つ目はショートホイールベースのニーヴァで、2025年にロシアで発売される予定だった。2つ目はより大型の『グランド・ニーヴァ』で、2026年の登場が見込まれていた。いずれもルノーのCMF-Bプラットフォームを採用し、西欧諸国での販売も計画されていた。ところが2022年2月、ロシアが予期せずウクライナに侵攻した。
3か月後、ルノーはロシアから撤退し、新型ニーヴァの計画は中止となった。

ラーダ・ニーヴァ
アフトワズは今年、実に半世紀近い歴史を持つニーヴァの改良型1.8Lエンジン搭載モデルを発表した。米モビリティ・グローバル社のアナリスト、スヴャトスラフ・クチコ氏によると、販売は9月中に開始される見込みだという。
西側諸国から厳しい制裁を受けているロシアが、いかにしてニーヴァの開発を継続できたのか。また、この開発はロシアの自動車業界について何を物語っているのだろうか。
英グローバルデータ社がAUTOCARに提供したデータによると、戦争が始まる前の2021年、ロシアでは153万台の新車が販売された。ラーダの市場シェアは約22%だったのに対し、欧州、米国、日本、韓国のブランドは合わせて69.6%を占めた。対照的に、中国の市場シェアはわずか7.5%にとどまっていた。
欧米メーカーと入れ替わりで急伸する中国
ウクライナへの侵攻開始により、その状況は劇的に変化した。グローバルデータ社の自動車プロジェクトマネージャー、ヴィヴェック・クマール氏は、欧米メーカーがロシア市場から撤退し、サプライチェーンの混乱が深刻化して生産が妨げられたと指摘する。2022年、自動車販売台数はわずか62万9922台にまで急落した。
英国のシンクタンクである王立防衛安全保障研究所(RUSI)の研究員で、ロシア専門家のチャールズ・ヘッカー氏は、外国メーカーの撤退により、ロシアの自動車産業は「極めて脆弱な状態」に陥ったと述べている。

ラーダ・グランタ
「サプライチェーンが崩壊したため、生産量は大幅に減少しました。ロシア国内に投資を行っていた外国の自動車メーカーはすべて撤退したのです」とヘッカー氏は言う。
それ以来、ロシアの自動車市場における中国のシェアが急上昇している。2019年にはわずか2.5%に過ぎなかったが、2025年までに54.3%にまで上昇。その主な受益者は、チェリー(奇瑞汽車)、長城汽車(GWM)、ジーリー(吉利汽車)、そしてベルジー(Belgee、ジーリー系)、テネット(Tenet、チェリー系)、エヴォリュート(Evolute、東風汽車系)、モスクヴィッチ(Moskvitch、JAC系)といった現地の合弁企業だ。
(翻訳者注釈:この記事は「後編」へ続きます)
