駆け込み需要を見込んで売り場に第3のビールを並べる従業員(9月29日、東京都大田区のイトーヨーカドー大森店で)

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 1日の酒税改正で、ビール類の税率が一本化される。

 ビールは350ミリ・リットルあたり9・1円の減税、発泡酒と第3のビールは7・26円の増税で、大手スーパーなどは同日から店頭の販売価格に反映させる。価格差の縮小で「需要回帰」が見込まれるビールのシェア(市場占有率)拡大を目指し、ビール大手の販売競争が熱を帯びる。(奈良橋大輔、水野友晴)

売り場も改変

 大手スーパーやコンビニエンスストアでは10月以降、酒類売り場をビール主体に切り替える動きが増える見通しだ。「最近は、休日を中心に増税前の駆け込み需要で第3のビールの売れ行きが好調だった。一方で、減税となるビールは買い控えの傾向にあったが、これからの伸びに期待している」(大手広報)と話す。

 イオンは10月のビールの売り上げを前年同月比1・5倍に伸ばす目標を掲げる。プライベートブランド「トップバリュ」のビールも減税分を上回る値下げに踏み切り販売増を図る。

 一方、人件費などのコスト高が直撃している居酒屋など飲食店では、「ビールの減税分は店頭価格にほとんど反映されないのでは」(ビール大手)との見方がある。

味わい刷新 

 ビール大手はこれまで、中高価格帯のビールを主軸としつつ、ビールに似た味わいの割安な第3のビールや発泡酒を展開し、節約志向の強い消費者を囲い込んできた。

 酒税改正により、割高感が薄れるビールのテコ入れを図る各社が注力するのが、「ビール化」だ。ビールに似た味わいを追求してきた第3のビールの麦芽比率を50%以上に高め、麦のうまみを求めるビール好きの需要をとらえたい考えだ。

 ビール類販売のうち第3のビールと発泡酒が約6割を占めるサントリーにとっては、価格差が縮まる今回の改正は「逆風」となりかねない。このため、第3のビール市場で3割超のシェアを握る「金麦」のビール化を大手でいち早く打ち出した。コストはかさむとみられるが、店頭価格はほぼ変わらない見通しだ。

 「低価格帯ビール」として販売し、金麦のブランド力で、アサヒビールやキリンビールが先行するビール市場の切り崩しを狙う。サントリーの販売戦略担当者は「ビール化した金麦で、市場の活性化を図っていきたい」と意欲を示す。

 一方、アサヒやキリンも、第3のビール「クリアアサヒ」や「本麒麟」をそれぞれビール化して低価格帯に投入し迎え撃つ。主力の「スーパードライ」、「一番搾り」も味わいを刷新してテコ入れする構えだ。

割安感薄れ 

 サッポロビールは2030年のビール市場について、24年比5~8%伸長すると見込む。ただ、発泡酒や第3のビールの市場縮小の規模の方が大きいため、ビール類全体としては減少傾向が続くとみている。

 第3のビールなどは、製法の自由度が高く、機能性を打ち出した商品展開が可能な利点もある。ビール大手は「低糖質などを求める一定の固定ファンがいる」(関係者)として既存のブランドを維持する考えだが、割安感が薄れるため販売の伸長は望みにくい。

 専門家からは「価格帯に応じた商品のブランド価値を高めていく必要がある」といった指摘も出ており、若者のビール離れや低価格を志向する消費者の受け皿として、チューハイやハイボールなどの需要の掘り起こしにも力を注ぐ方針だ。

 サッポロは3月、糖質を抑えて飲み応えを押し出した缶チューハイを投入した。サントリーも10月、強炭酸などでビールのようなのどごしやキレを再現した缶チューハイを販売する。

発泡酒・第3のビール いたちごっこ終幕…低税率商品開発の歴史

 ビール類の酒税を巡っては、税収維持のために税率を見直す税務当局と、ビールに近い味わいで税率が低い新たなアルコール飲料の開発に力を注ぐメーカーとの「いたちごっこ」が、30年以上にわたって続いてきた。

 麦芽比率を抑えてビールに該当しない低税率の発泡酒が登場したのは1994年だった。大手で最初に投入したのはサントリーの「ホップス生」で、各社が追随した。

 これに対し、政府はビールとの税額差約40円を縮めるため、2003年に発泡酒を約10円増税。同じ年に、割安感の薄れた発泡酒に代わり、麦芽を使わずさらに税率が低い新ジャンルとして「第3のビール」が登場した。

 その後、キリンの「のどごし」、アサヒの「クリアアサヒ」などのヒット商品が次々と誕生し、第3のビールは20年に販売数量で46%を占めビール(41%)を上回るまでに成長したが、税額差の縮小を受け、22年には再びビールが逆転した。あるビール関係者は「今回税額が統一されたことで、これからは純粋にビールとしてのおいしさを追求できる」と話す。