【独占インタビュー】石破茂前首相、愛子天皇論に直言「女性天皇だけでなく、女系天皇も選択肢として排除されるべきではない」皇室典範改正への疑問と懸念
これまで女性・女系天皇についても前向きな姿勢を示してきた石破茂・前首相(69才)が、皇室典範"改悪"とも呼ばれた制度変更にもの申す。7月に国民的な議論を欠いたまま改正された皇室典範について「再改正すべき」と主張する石破氏に、自身の皇室への思いを聞いた。【前後編の後編】
【写真】穏やかな表情で、独占インタビューに答える石破茂前首相。他、ご公務中に驚きの表情を浮かべられる愛子さまや「小児がんセンター」で患者らと会話をされる天皇皇后両陛下なども
世界から尊敬を集める日本の皇室。その皇室をこの先も安定的に受け継いでいくため、皇族数の確保を目的に議論されたのが、10月24日に施行される皇室典範の改正だ。主な改正のポイントは《【1】女性皇族が結婚後も皇室に残れるようにする》《【2】旧宮家の男系男子を養子として皇室に迎えられるようにする》の2点。
──皇室典範は再改正すべきだとご発言されました。
「旧皇室典範は大日本帝国憲法と一体となったもので、一般の法律とは性質の異なるものでした。しかし、現行の皇室典範は法律です。法律なのですから、当然今回も、その後も、改正できるものだと申し上げたのです。
憲法において、天皇は《国民統合の象徴》であり、その地位は《主権の存する国民の総意に基づく》とされています。本当に国民の理解の上で、国民の総意に基づいて皇室典範の改正がなされる、というのはどういうことなのかということも、国民の代表たるわれわれに問われているのだと思います。
今回も、もちろん衆参議長らが集まっていろんな議論をしたでしょう。しかし、国会での実際の与野党の議論はかなり短時間だったと言わざるを得ません。自民党の中での議論も、尽くされたと言えるほどではなかった。
今回の皇室典範の改正内容について、世論調査で否定的な意見もあります。国民の代表者であるわれわれ国会議員が『国民の総意に基づく』と言えるくらいの議論が、国政の場において求められていたのではないかと反省しています」
──今回の改正をめぐっては、国民人気の高い愛子さまの天皇即位への道が絶たれたと感じる国民も多かったのではないでしょうか。
「皇室は『万世一系で連綿と続いてきた』『男系の伝統は守らねばならない』と主張する方々は、皇室は2600年以上の歴史があるとおっしゃっているようですが、そうすると天皇は縄文時代からおられたのでしょうか。
選挙区の夏祭りなどでみんなと話すと、『愛子さまに天皇になってほしい』という人は、私の地元にもいっぱいおられます。私自身は、女性天皇だけでなく、女系天皇も選択肢として排除されるべきではないと思っています。しかし、愛子さまが素敵だという素朴な感情だけではなくて、天皇という存在が憲法上位置づけられている『国民統合の象徴』とは、いまの日本においてどうあるべきなのか、もっと国民全体で見つめ直すことが重要だと思います」
両陛下の存在が国民の生きる希望
──旧宮家から養子を迎え入れることについて、疑問の声もあります。
「ノンフィクション作家の奥野修司さんが書かれた『天皇の憂鬱』(新潮社)という本があります。上皇ご夫妻が平成の時代に何を考えておられたのかということがよくわかる本です。
上皇ご夫妻の沖縄や憲法に対する強い思いですとか、平和に対する願い、戦争への反省と不戦の思いがここまで強いものなのかと痛感しました。上皇さまは即位なさったときから日本国憲法下での『象徴天皇』であられた代として、そのご存在、在り方といったことをずっと考えてこられたことでしょう。
その上皇さまのもとでお育ちになられた現陛下も、昭和、平成と続く御代の中、上皇さまや上皇后美智子さまから徹頭徹尾、身をもって『あるべき天皇像』というものを学んでこられ、また令和の世にあってそれがどうあるべきかを日々体現されておられるのだと思います。
だからこそ、その血を何十代か遡ると天皇家まで行き着くのだとしても、昨日まで一般市民として歩んでこられた方が突然皇族となって、外交も公務も祭祀も合わせて大変な日々の激務をこなすことができるのか、また国民がそれを受け入れられるのか、ということはあるのだろうと思います」
──養子本人に皇位継承権はないが、その養子の子が男子であれば皇位継承資格を持つことにもなります。
「繰り返しになりますが、皇族方、特に天皇という存在が、国民の総意に基づく、ということの意味を、いまの皇室の皆さまはとても深くお考えになっておられると思います。
敗戦後も日本国は国家として継続したのであり、上皇さまも陛下もその反省を決して忘れていません。いまの世代の私たちにも、歴史を直視する責任と、過去の戦争で傷つけてしまった多くの国の人たちの信頼感を取り戻していく責任があるでしょう。陛下がどれだけ日本国憲法に対して、あるいは歴史に対して誠実であられるかということを、われわれはもっと理解しなくてはいけない」
──6月には陛下が会見で「国民の理解が得られるように」と発言されたことも話題となりました。
「陛下のご発言は、本当に最大のお気持ちなのだと思います。上皇さまが生前退位を望まれたときも『国民の理解』ということを強調しておられました。このように、上皇さまも陛下も、天皇は国民の総意に基づくものだということを常に心に刻んでいらっしゃるのです。
陛下のお力というのは、国民に生きる希望を与えることができます。だからこそ、被災地で両陛下が膝をついて同じ目線で語りかけることで、涙を流して癒される人がいる。絶望の淵で打ちひしがれた人がそのお言葉で前を向くことができる。国民の生きる希望であり、そして外国の人たちの日本に対する信頼をつくっているのが天皇や皇室の存在だと私は思っています。
陛下は上皇さまの思いを受け継がれ、全身全霊で『国民とともにありたい』と思われています。同じように雅子さまも美智子さまの思いを受け継いでいらっしゃるでしょう。
私はいろんな場面でお供をし、直接、お話をする機会にも恵まれました。両陛下についてのお話は畏れ多いということで、これまであまり語られてきませんでした。ただ、この仕事を40年やってきて、最近、それは一種の"逃げ"なのではないかと思ったりするわけです。両陛下のなさりようを近くで拝見することのできた者は、そのお姿を国民に語りかけ、国民の総意をつくっていくということにもっと真剣に向き合わないといけないのではないか、といまは考えています」
【聞き手】
小川匡則(おがわ・まさのり)/1984年、東京都生まれ。北海道大学農学部卒、同大学院修士課程修了後、フリージャーナリストとして活動。政治、経済、社会問題について、講談社『週刊現代』のほか、Yahoo!ニュース特集などでも執筆。
※女性セブン2026年10月15日号
