ニトリでも、IKEAでもない…「カフェみたいな部屋」に憧れる女子を虜にした“バズる家具ブランド”急成長の理由
矢野経済研究所の調査によると、国内家具市場の規模は近年、メーカー出荷金額ベースで1兆1000億円台を横ばいに推移している。成長が鈍化する局面で大手も苦戦しており、拡大が続いていたニトリは26年3月期の売上高が前年度比で1.8%の減収となった。北欧家具のIKEAも国内法人の売上高は900億円台で低迷し、24年度は赤字となった。
【写真】「これで4万円台!?」「大きさ変わるのすごい」SNSでバズったLOWYAの“バタフライテーブル”を見る
だが、「LOWYA(ロウヤ)」は他社の苦戦を尻目に事業を拡大している。SNSでバズる家具を次々に開発。20~30代の女性に支持され、Instagramの公式アカウントはフォロワー数が170万を超える。ECを主軸としつつ、近年では実店舗の展開を強化中だ。25年度の売上高は前年度比14%増の178億円となった。停滞した市場でなぜ成長できるのか、LOWYAの強みを解説していく。
ニトリ、IKEAと同じ低価格帯
LOWYAは2004年に創業し、当初はYahoo!ショッピングと楽天市場で販売を始めた。2006年に自社ECをオープンし、14年にAmazonでの販売を開始した。運営元のベガコーポレーションの売上高は数十億円規模に留まっていたが、16年度に100億円を突破し25年度には180億円を超えた。今期第1四半期は前年度比15%増の49億円と、現在でも伸び続けている。商品は自社ECや店舗、他社ECモールで販売する。工場を持たないファブレス企業であり、自社でデザインを手がけ、協力工場が生産を担う。
ソファやベッド、机・椅子などの足物、カーテンと幅広く展開する。価格はニトリ、IKEAと同等の低価格帯だ。ニトリと比べて価格帯の幅は狭い。ソファではニトリが1万円台~40万円の商品を取り扱うのに対し、LOWYAでは概ね2万円~15万円強に収まる。

LOWYA公式サイトより
LOWYAが成長する理由として、メディアでは流行を押さえている点やお洒落である点を挙げる論調が見られる。客の8割が20~30代の若年層で女性客が多い。一部キャビネットの扉には雑誌を置ける場所があり、見せ方を重視する家具が目立つ。ヴィンテージ調のテーブルセットなど、カフェにありそうな家具が充実している。確かに実用性だけでなくデザイン性を重視する姿勢が窺える。だが、ニトリにも同様の商品はあり、LOWYAだけが特別に優れている訳ではない。
SNSでバズる「ショート動画」を量産
では何故、LOWYAが若年層に注目されるようになったのか。実用性よりもデザイン性を訴求する「見せ方」が若年層に受けたためだ。ECの商品一覧サイトを比較すると、ニトリは写真部分が小さく、価格や「配送料無料」などの特典をアピールしている。写真に機能説明の文が書かれていることもある。対するLOWYAは写真がメインで、説明文や価格の表記は小さい。写真上に文字が表記されている事は少なく、全体的にアパレルECのような構造だ。単純に「どっちのECサイトがお洒落か?」と問われれば、LOWYAに軍配が上がる。
また、LOWYAは投稿のバズりに成功している。Instagram、TikTok、Xなどを合わせた公式アカウントのフォロワー総数は280万を超え、再生回数100万回超えのショート動画を次々に量産する。動画では単に商品を宣伝するのではなく、生活の動線上で役に立ちそうな家具を紹介している。例えば、ソファ用のテーブルは高さが低いため、ソファに座りながら食事をする事は難しい。動画では、この課題に触れつつ、高さ調節できるソファ用テーブルを紹介している。
ショート動画を活用した運用により、LOWYAの認知度は向上した。Instagramのフォロワー数は21年3月期末の67万から、現在では178万に増えた。経産省によると家具・インテリアのEC化率は3割を超え、他のジャンルと比べて高い傾向にある。物販全体では約10%だ。若年層はSNSの情報を参考にECで購入するため、LOWYAの戦略が彼らの志向にマッチしたと考えられる。
「SNSで話題の商品」を体験できる、巧みな出店戦略
「お洒落で低価格帯の家具」という位置づけでは、2006年に日本で1号店を構えたIKEAがLOWYAよりも先に定着した。しかし冒頭の通り、年間売上高は900億円台で低迷している。大型店の出店は10店舗に留まり、北海道への出店も頓挫した。休日は客で賑わうもののテーマパーク化しており、何も買わない客も多い。また、郊外に出店しているため、都心部の若年層にリーチできていないという課題があった。
IKEAは都心部の消費者との接点を増やすべく、20年6月に初の都心型店舗を原宿でオープンした。その後、渋谷・新宿にも出店していく。しかし今年2月に原宿店と新宿店を閉店した。都心型店舗の面積は2500~4000平米で、2万平米以上の大型店よりもかなり小さい。迷路のような構造や品揃えといった大型店の強みが無く、中途半端な存在となってしまった。高い賃料に見合う収入が無かったと考えられる。大型の都市型店舗を展開可能なのはニトリのように普段買い需要の大きいチェーンに限られる。
一方のLOWYAはECを主軸としつつ、小型店を通じて顧客接点を確保している。23年4月から実店舗を展開し、現在では18店舗を展開する。イオンモールなど郊外型商業施設でのテナント出店が中心で、数百平米と家具店にしてはコンパクトなサイズだ。実店舗はオンラインの相乗効果を狙うOMO戦略の一環であり、SNSで認知した人が訪れてみる場所として機能するほか、店舗を通じて認知した客がECで購入する役割を果たしている。郊外の大型店よりも訪れやすい場所にあり、一方で都心型店舗よりも賃料を抑えられるメリットがある。都心部では昨年12月に渋谷宮益坂店を出店した。だが、27年9月までの期間限定としており、店舗面積は約660平米とIKEAの都心型店舗より小さい。
ニトリ、IKEA、無印良品のライバルになり得るか?
LOWYAの快進撃が続くとして、どこまで成長できるだろうか。最大手のニトリ級になるのは難しいと考えられる。9000億円規模まで成長するには、ニトリと同じように郊外で大型店を展開する必要がある。ニトリのEC化率は10%強に留まり、店舗で商品を選んで購入する客が多いためだ。しかし現時点でLOWYAは大型店を展開しておらず、ノウハウを持ち合わせていないように見える。その上で家具のほか、食器や布もの、家電も強化する必要がある。また、画一性や機能性を求める中年以上の男性にはリーチしづらい。
若年の女性が主要客であるため、低価格かつデザイン性を訴求するチェーンがLOWYAのライバルとなる。具体的にはIKEAや無印良品の家具、Amazon・楽天の無名ブランドが挙げられる。IKEAの規模は900億円台。無印は非公表だが19年度まで家具単独の売上高が400億円台であると公表しており、その後の売上高伸長率を考慮しても、最大1000億円程度と推測される。つまり、LOWYAは100億円単位で伸長できる余地がある。安い家具と言えばニトリ・IKEA・無印という認識が定着している。そこにLOWYAが加わる日が来るかもしれない。
(山口 伸)
