(※写真はイメージです/PIXTA)

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長く暮らした持ち家も、年齢を重ねるにつれて住みやすさの感じ方が変わることがあります。庭や建物の手入れ、階段の上り下り、設備の修理など、若いころには気にならなかったことが負担になる場合もあるでしょう。築45年の戸建てで暮らしていた73歳夫婦も、ある出来事をきっかけに住まいを見直しました。

「庭だけじゃないんだよね」築45年の家で増えていった負担

「最初は、庭さえ何とかすれば、この家でずっと暮らせると思っていたんです」

そう話すのは、73歳の和夫さん(仮名)です。同い年の妻・洋子さん(仮名)と2人で暮らしています。

夫婦が以前住んでいたのは、結婚後に購入した2階建ての戸建てです。子ども2人を育て、住宅ローンは60代前半で完済しました。

現在の年金収入は夫婦で月約26万円。預貯金は約3,800万円ありました。

子どもが独立した後も、夫婦は住み替えを考えていませんでした。

4LDKの家は2人には広いものの、住み慣れています。スーパーまでは車で10分ほど。近所には長年の知り合いもいました。

ただ、60代後半から少しずつ負担になってきたのが、家の管理です。なかでも大変だったのが庭でした。

春から夏は雑草が伸び、秋になれば落ち葉がたまります。以前は和夫さんが脚立に乗って庭木を剪定していましたが、70歳を過ぎてからは業者に頼むようになりました。

「庭だけなら、お金を払ってお願いすればいいと思っていたんです。でも、古い家って、それだけじゃないんですよね」

給湯器を交換した翌年には、雨戸の動きが悪くなりました。外壁にも傷みが見られ、業者からは今後の補修について説明を受けました。

室内でも、2階にある寝室まで毎日階段を上ります。

ある雨の日、洋子さんが玄関前の濡れたタイルで足を滑らせました。けがはありませんでしたが、その出来事をきっかけに、夫婦は初めて「この家で80代になったらどうするか」を具体的に話したそうです。

「今は階段も上れるし、庭仕事も少しならできる。でも、5年後も同じとは限らないよね、と妻に言われました」

夫婦が検討したのは、戸建てのリフォームと住み替えです。

最初は1階だけで生活できるように改修する案も考えました。しかし、庭や外壁など建物全体の管理がなくなるわけではありません。

そこで候補に挙がったのが、駅前に建つ中古のタワーマンションでした。

国土交通省『令和5年住生活総合調査』は、住宅や居住環境への評価に加え、今後の住まい方や住み替えの意向などを調査しています。住まいを考える際には、住宅そのものだけでなく、周辺環境を含めて評価することが重要になります。

夫婦が見つけた物件は駅から徒歩数分。スーパーやドラッグストア、クリニックも徒歩圏内でした。

「便利なのは分かりました。でも、70歳を過ぎてからマンションへ移るなんて、それまで考えたこともなかったんです」

2LDKへ住み替えて半年…73歳夫婦が予想していなかった変化

最終的に夫婦は戸建てを売却しました。

売却代金と預貯金の一部を充て、築10年ほどの中古タワーマンションを購入。広さは以前の半分ほどの2LDKです。

引っ越して最初に感じたのは、生活のコンパクトさでした。

寝室も浴室も同じフロアにあり、階段はありません。ゴミも決められた場所まで持っていけばよく、庭の雑草や落ち葉を気にする必要もなくなりました。

洋子さんが意外に感じたのは、雨の日だったといいます。

「前は強い雨が降ると、雨どいは大丈夫かなとか、庭に水がたまっていないかなとか、なんとなく外を見ていたんです。ここに来てから、それをしなくなりました」

和夫さんにも似た変化がありました。

外出先で暗くなっても、「家の雨戸を閉めなければ」と急ぐ必要がありません。旅行へ出る際も、庭や家の周囲を以前ほど気にしなくなったそうです。

「駅に近いとか、買い物が楽だとか、そういう便利さを期待していたんです。でも実際には、家について考える時間が減ったことのほうが大きかったですね」

一方、マンションだから住居費がかからなくなったわけではありません。

毎月の管理費と修繕積立金に加え、固定資産税もあります。将来、修繕積立金が上がる可能性も考える必要があります。

国土交通省『令和5年度マンション総合調査』によると、長期修繕計画上の必要額に対し、現在の修繕積立金が不足しているマンションは36.6%。マンションへの住み替えでは購入価格だけでなく、管理費や修繕積立金、長期修繕計画などを確認することも重要です。

和夫さん夫婦も購入前に、管理費や修繕積立金を含めた毎月の固定費を確認しました。

夫婦は現在、車も手放すか検討しています。駅や店が近いため、以前ほど乗らなくなったからです。

「戸建てが嫌になったわけではないんです。子どもを育てた家ですし、庭も好きでした。でも、今の自分たちに合う家は変わったんだと思います」

国土交通省『令和5年度マンション総合調査』では、マンション居住者の世帯主のうち70歳以上が25.9%を占めています。マンションで暮らす高齢者そのものは珍しい存在ではありません。

長く住んだ家を手放すかどうかは、簡単に決められることではありません。また、戸建てからマンションへ移れば、すべての負担がなくなるわけでもなく、新たに管理費や修繕積立金などが発生します。

だからこそ、住み替えを考える際には、数年後も同じように暮らせるか、住居費を継続して負担できるかまで確認することが大切です。広さや資産価値だけではなく、これからの日常で何を自分たちで管理し続けるのかという視点も、住まいを選び直す基準の一つになるでしょう。