行列のタコス専門店代表・古屋大和さんが語る「だってタコスは愛だから」

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クックパッドのポッドキャスト番組「ぼくらはみんな食べている」。食や料理に熱い思いを持ち活躍するゲストを迎え、さまざまな話を語ります。クックパッド初代編集長の小竹貴子がパーソナリティを務めます。第88回目・89回目のゲストは、「タコス・トレス・エルマノス」代表・古屋大和さんです。



原宿、下北沢、恵比寿、浅草。行列の絶えないタコス専門店「タコス・トレス・エルマノス」を率いる、古屋大和さん。日本より先にメキシコ本国で「メヒコ(メキシコ)のタコスそのものだ」と話題になった店の代表に「タコスとは何か」と尋ねると、返ってきたのは「愛」という一言でした。クックパッドのポッドキャスト番組「ぼくらはみんな食べている」で語ってくれました。


「タコスは愛、愛は分け合うもの」



タコスとはどういう食べ物なのか。その問いに、古屋さんは迷いなく答えます。


「タコスって愛だと思いますよ。ポルケ・タコス・エス・アモール、アモール・パラ・コンパルティール(Porque tacos es amor, amor para compartir)。愛で、愛は分け合うものなんですね。愛は湧き上がるものだから、決して足りなくならない」


「ポルケ・タコス・エス・アモール、アモール・パラ・コンパルティール(Porque tacos es amor, amor para compartir)」はスペイン語で、だってタコスは愛だから、分け合うための愛だから、という意味です。古屋さんはタコスの成り立ちについて、決して豊かではない暮らしの中で、どう乗り切るかを考えた人たちが道端で始めたもの。それがタコスだったのだ、といいます。


「この生活の中から、俺はこの苦境をどう乗り切るんだって中で、道端で店を始めるわけですよ。そういうことがあってタコスが生まれる。タコスがブームになったから、安全圏からタコスに目をつけるのは、違うと思う」


地盤と根っこがあって出てきたものなら、その先はどんなタコスでもいい。ただ、そこがないまま華やかな見た目だけを追いかけたものには「ソウルを感じない」と断言します。


日本の中でブラックシープだった



地盤と根っこがないものにはソウルを感じない。そこまで言い切る背景は、山梨県富士河口湖町で過ごした少年時代にまで遡ります。父は建築家、母はそれを支える人。アーティストのような家庭で、ユニークであることが歓迎される家出した。ところが学校では、それがことごとく裏目に出たといいます。


「白い羊の群れの中に黒い羊がいたら、めちゃめちゃ怒られる。日本の中でブラックシープで居続けたって感じですかね」


少年時代の自分を、古屋さんはブラックシープ(黒い羊)と表現します。一番やりたかったのはスケートボードと絵。「興奮しないと生きてられない」という子どもでした。学校に呼び出されたお母さんは、勉強しないと言われても「勉強はあんまり好きじゃないみたいです。ただ、絵は好きみたいですよ」と返すような人。父も「いいんじゃない。やるからには絶対やった方がいいよ」と言うだけで、勉強しろとは一度も言わなかったそうです。


「結構すごい攻撃をされましたけどね。ちゃんとしろよ、みたいな。でも、ちゃんとって何なのかわかんない。俺、ちゃんとスケボーやってるしな」


日本では柵を飛び越えた羊が後ろ指をさされる。でも世界では、どうやって飛んだのか、飛んだ後どうだったのかとみんなが追いかけてくる。「僕の標準は日本のちっちゃいそっちじゃなかったので、気になんなかった」と振り返ります。


極貧の家に居候して知った、サルサの重み

ミュージシャン、広告映像制作などのキャリアを経て、古屋さんがメヒコに移住したのは2015年、41歳のときでした。現地に知り合いはほとんどおらず、スペイン語の準備もしていません。「英語でいいっしょとか思ってたの。嫌なやつですよ、今思えば」。最初に住んだのはメキシコシティ北部のエカテペック。店の看板にもある「ECATEPUNK」は、この悪名高い町の名前をもじったものです。


「ここからそこ行く間に誰かに刺されちゃうみたいな町なんで」


居候させてもらったのは、母親を早くに亡くしたお父さんと娘の二人暮らしの家。水道設備がないので屋上にタンクを買いに行き、隣の家からパイプを内緒でつなぐところから生活が始まります。当時は1ペソが5円ほど。自転車を直しに行っては、初めて乗れたみたいに誇らしげな写真を撮っていたそうです。そこで毎日食べていたのが、ソパ・デ・ポジョという鶏のスープでした。メキシコの家庭料理の定番です。


「毎週金曜日に買い物に行って、1週間分作って、それをためながら食べる。1番メインだったのがソパ・デ・ポジョ。スーパーでクズ野菜を全部ガーッと細かく切ったでっかいパックを売ってるんですよ。これが全ての野菜の中で1番安い。それを買ってきて、コンソメのキューブを突っ込んで煮て、そこに鶏肉をバーンっていっぱい入れてぐつぐつ煮る」


その横に置くのは、直径15センチのトルティージャ。塩を振って丸め、スープと一緒に食べる。それが日常でした。ただし、どんなに質素な食卓でも手を抜かないものが一つあります。サルサです。古屋さんが起業に踏み切れた自信の源も、この家のお父さん直伝のシンプルなサルサのレシピがあったからでした。


「これは叩き込まれました。なんでもっと焼かねえんだとか、なんで中身取らなかったとか、なんでそんな水で洗ったんだ、危ねえだろうとか。メキシコでできないことを、日本で絶対やらないんですよね」


だからこそ、と古屋さんは続けます。「タコスは習うべきじゃないし、教えるわけがない。ファミリーがそれで生きてるんだから」。


現地でのタコスは、日本人にとってのラーメンのような存在。町にいくらでもある店から自分のお気に入りを見つけ、友達と「あそこのサルサ、やばいぜ」と言い合うのだそうです。


「タコスに全ベットだ」と思った



日本に戻るきっかけは、お母さんの体調不良でした。二人の兄には家庭があり、時間も労力も割けない。「なんで早く言わねえんだ」と、1ヶ月で準備して帰国します。今となっては「兄貴たちがチャンスをくれたんだな」と思えるそうです。


とはいえ、帰国した時点でタコス屋になる気はまったくありませんでした。「だって日常食ですもん。その辺でおにぎり食ってて、イタリアに行ってやろうなんて思います?」と笑います。父が設計した実家でAirbnbを始めたところ、コロナ禍で観光客が消えた。残ったのは、自分が食べたくて作っていたタコスだけでした。


「なぜそうしたかっていうと、僕はママを守りたかったから、パパを守りたかったから。僕のキャラクターと僕の人生を誇って、そのままでこの苦境で生きるんだったら、タコスに全ベットだと思ったからタコスを始めたんです」


そして、2021年、フードトラックで創業します。


メヒコに還元できるのが、本物のタコス屋



メヒコでは1日に5回食事をとり、タコス屋が開くのは夕方5時以降。その時間感覚は原宿の店にもそのまま持ち込まれています。11時の開店直後に来るのは日本人、14時にはアメリカで育ったメキシコ人、仕込みを挟んだ17時に来るのが本国のメキシコ人です。


スタッフは全員メキシコ人で、店ではスペイン語が飛び交います。現地であれば、得られるチャンスがもっと少なく、命を落とす人さえいる。日本でなら、自分のキャラクターのままで生きていける。だからこそ、働く場所と、誇りを持てる居場所を作ること。そこまで含めて、古屋さんは自分たちの仕事だと考えています。


「タコスはそういう庶民のものだけど、プライドを持って、ちゃんとそれで拡大できるように、メヒコに還元できるようにやってるのが本物のタコスだと思う」


ポッドキャストとは?

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【ゲスト】

第88回・第89回(7月31日・8月7日配信) 古屋大和さん




1974年、山梨県富士河口湖町生まれ。富士山信仰の浅間神社・葭之池温泉の家系で育ち、ミュージシャン、広告映像制作などを経て、2015年にメヒコへ移住。2021年にタコス専門店トレス・エルマノスを起業。フードトラックで横須賀、福生、横田などに出店し人気を博す。2022年に山中湖店、2024年に原宿店をオープン。日本より先にメヒコ本国で「メヒコのタコスそのものだ」と話題となり、日本にある唯一無二の道端タコスとして支持されている。他に恵比寿店、浅草店、下北沢店。愛称はジャミタ(Yamita)。著書『愛を貫く タコス・トレス・エルマノスの革命』(Type Slowly)


HP:https://3hermanos.co.jp

Instagram:@tacos3hermanosdf

X:@3hermanos_df


【パーソナリティ】 

クックパッド株式会社 小竹 貴子



料理愛好家・ 料理の楽しみ共創室 部長/創業期から参画し、初代編集長としてメディアづくりに携わる。現在は、料理家や生産者といった食のつくり手の声を届ける活動を行っている。「日経ウーマンオブザイヤー2010」受賞。プロの技術や食材の背景にある物語を、暮らしに馴染む言葉で伝えることをライフワークに、生活者の目線で食の楽しさを探求している。


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